高田衛 編・校注 『江戸怪談集 (中)』 (岩波文庫)

高田衛 編・校注 
『江戸怪談集 (中)』 

岩波文庫 黄/30-257-2 

岩波書店
1989年4月17日 第1刷発行
408p
文庫判 並装 カバー
定価620円(本体602円)
カバー: 中野達彦



本書「解説」より:

「近世怪談集の「怪談」を、内容的に分類するならば、(一)唱導仏教系怪談、(二)中国小説系怪談、(三)民俗系怪談という、三つの分野を考えることができるとする説がある。」
「本巻はたまたま、この三分野を代表する怪談集、すなわち民俗系怪談の集成としての『曾呂利物語』、唱導仏教系怪談集としての『片仮名本・因果物語』、そして中国小説系怪談集としての『伽婢子(おとぎぼうこ)』の三本から、話を精選して一冊とした。」



『曾呂利物語(そろりものがたり)』は編著者不詳、寛文三年(1663)開板。
『片仮名本・因果物語』は義雲雲歩編、寛文元年開板。
『伽婢子』は浅井了意編著、寛文六年開板。

本文中図版多数。


江戸怪談集 中 01


カバーそで文:

「「おどろおどろしきことを語れ」と秀吉に命じられた曾呂利新左衛門が語ったという『曾呂利物語』、「諸人発心の便とせん」との志で編まれた『因果物語』、明代の怪異小説を日本の歴史・風土にみごとに移しかえた『伽婢子(おとぎぼうこ)』。これら三種の怪談集から八八話を選んだ。」


目次:

曾呂利物語
 板垣の三郎高名の事
 女の妄念迷ひ歩く事
 一条戻り橋のばけ物の由来の事
 ばけ物、女になりて人を迷はす事
 人をうしなひて身に報ふ事
 舟越、大蛇を平らぐる事
 狐をおどしてやがて仇をなす事
 老女を猟師が射たる事
 怨念深き者の魂迷ひ歩く事
 足高蜘の変化の事
 将棊倒しの事
 天狗の鼻つまみの事
 越前の国白鬼女の由来の事
 離魂と云ふ病ひの事
 蓮台野にて化け物に逢う事
 色好みなる男、見ぬ恋に手をとる事
 猫またの事
 をんじやくの事
 御池町の化け物の事
 狐再度(ふたたび)化くる事
 万の物、年を経ては必ず化くる事
 常々の悪業を死して現はす事
 悪縁にあふも善心の勤めとなる事
 女の妄念怖ろしき事
 座頭、変化の物と頭はり合ひの事
 耳切れうん市が事
 怖ろしくあひなき事
 竜田姫の事
 夢争ひの事

片仮名本・因果物語
 人を詛ふ僧、忽ち報ひを受くる事 付 火あぶりの報ひの事
 妬み深き女、死して男を取り殺す事 付 女死して蛇となり男を巻く事
 嫉み深き女、死して後の女房を取り殺す事 付 下女を取り殺す事
 下女死して、本妻を取り殺す事 付 主人の子を取り殺す事
 夫死して、妻を取り殺す事 付 頸をしむる事
 罪無くして殺さるる者、怨霊と成る事
 女生霊、夫に怨(あた)を作(な)す事
 塚焼くる事 付 塚より火出づる事
 生きながら地獄に落つる事 付 精魂、地獄に入る事
 先祖を弔はざるに因つて子に生まれ来て責むる事 付 孫を喰ろう事
 難産にて死したる女、幽霊と成る事 付 鬼子(おにご)を産む事
 仏像を破り報ひを受くる事 付 堂宇塔廟を破り報ひを受くる事
 親不孝の者、罰を蒙る事
 二桝を用(もちゆ)る者、雷に攫まるる事 付 地獄に落つる事
 馬の物言ふ事 付 犬の物言ふ事
 蝮に呑まれて蘇生する者の事
 幽霊来たりて算用する事 付 布施配る事
 幽霊来たりて子を産む事 付 亡母子を憐れむ事
 幽霊と問答する僧の事 付 幽霊と組む僧の事
 卒塔婆、化(け)して人に食物を与ふる事
 生きながら牛と成る僧の事 付 馬の真似する僧の事
 生きながら女人と成る僧の事 付 死後女人と成る坊主の事
 僧の魂、蛇と成り物を守る事 付 亡僧来たりて金を守る事
 座頭の金を盗む僧、盲と成る事 付 死人を争ふ僧、気違ふ事
 悪見に落ちたる僧、自他を損ずる事
 破戒の坊主、死して鯨と成る事 付 姥猫と成る事
 人の魂、死人を喰らふ事 付 精魂、寺へ来たる事
 愛執深き僧、蛇と成る事 
 慳貪者、生きながら餓鬼の報ひを受くる事 付 種々の苦を受くる事

伽婢子
 真紅撃帯
 狐の妖怪
 妻の夢を夫面(まのあたり)に見る
 鬼谷に落ちて鬼となる
 牡丹灯籠
 梅花屏風(ばいかのびょうぶ)
 入棺之尸甦怪(にっかんのしかばねよみがえるあやしみ)
 幽霊逢夫語(ゆうれいおっとにあうてかたる)
 原隼人佐鬼胎
 遊女宮木野
 蛛の鏡
 白骨の妖怪
 雪白明神
 邪神を責め殺す
 歌を媒(なかだち)として契る
 狐、偽りて人に契る
 下界の仙境
 人面副瘡
 人鬼(ひとおに)
 妬婦(とふ)、水神となる
 鎌鼬 付 提馬風
 土佐の国狗神 付 金蚕
 七歩蛇の妖
 魂蛻吟(たましいもぬけてさまよう)
 魚膾(ぎょかい)の怪
 早梅花妖精(そうばいかのようせい)
 幽鬼、嬰児に乳す
 蛇、癭の中より出づ
 伝尸禳去(でんしじょうこ)
 怪を語れば怪至る

解説



江戸怪談集 中 02



◆本書より◆


「離魂と云ふ病ひの事」:

「何時(いつ)の頃にかありけん、出羽(でわ)の国守護何某(なにがし)とかや、ある夜の事なるに、妻女雪隠(せっちん)に行きけるに、稍(やや)ありて帰り、戸をたてて寝(い)ねけり。又暫(しばら)く女の声して、戸を開(あ)けて内に入りぬ。
 彼(か)の何某、不思議に思ひ、夜明くるまで守り明かして、彼の女を二所に分けて、色々詮索(せんさく)しけれども、孰(いず)れに疑はしき事なかりしかば、如何(いかが)せんと案じ煩ふところに、ある者、「一人の女体(にょたい)疑はしき事侍り」と、申しければ、猶(なお)詮索致してより後、即ち頸(くび)をぞ刎(は)ねてける、疑ふ所もなき人間にてぞ坐(おわ)しける。「今一人こそ変化(へんげ)の物なるべし」とて、それをも頓(やが)て切りたりけり。これも又同じ人間にてぞ候ひける。さて死骸を数日置きて見たれども、変はる事なし。如何(いか)なる事とも弁(わきま)へ兼ねたるが、或人(あるひと)の曰(いわ)く、「離魂(りこん)と云ふ病(わずら)ひなり」と。」



「塚焼くる事 付 塚より火出づる事」より:

「大坂の北、野江村(のえむら)と云hに、仁兵衛(にひょうえ)と云ふ者、寛永十一年七月廿三日に、五十歳にて死す。一向宗(いっこうしゅう)也。
 伊(かれ)が塚より、蹴鞠(けまり)の如くなる火の丸(まる)かし出で、二、三度上がり、其(そ)の後細路(ほそみち)有るを、二、三尺程高く、つるつると上がり、我が宿の方(かた)へ来たる。
 路次(ろじ)の田畠(たはた)を、残さず廻(まわ)りて、田畠の上にては、大きになつて、細々(こまごま)と散りて落ちけり。
 其の落つる有り様は、血の如し。亦(また)本(もと)の火になつては、田畠を廻(めぐ)り窮(きわ)めて、我が家の棟(むね)を、ころころと、ころびて、亦(ま)た塚へ返る。
 卅日ばかり、毎夜、四つ時に来たる也。野江中の者、皆々見たり。庄屋作兵衛(さくびょうえ)子共(こども)、兄弟共(とも)に見るなり。兄は十七、八なるが、是(これ)を見、四、五日煩ふ也。」



「蝮に呑まれて蘇生する者の事」より:

「江州(ごうしゅう)にて、さる者、木を切りに行く。九つになる子、鎌を持ちて行く。此の子を、蝮(うわばみ)呑(の)みて、腹ふとく成りて行くを見て、父追ひ付け、鈯斧(まさかり)を蝮の胴体へ打ち込みければ、其(そ)の儘(まま)吐き出だしけり。其の砌(みぎり)は頭(かしら)の毛抜けたりと云へども、頓(やが)て本(もと)の如く生(お)ひたりと也。其の子廿七の時、受三(じゅさん)見て語る也。

 濃州(じょうしゅう)岩村(いわむら)にて、さる者、蝮に呑まれたり。小脇指(こわきざ)しにて、腹を切り破り出だしたり。此の男を、鈴木権兵衛(すずきごんびょうえ)見たりと語る也。」



「卒塔婆、化(け)して人に食物を与ふる事」より:

「上州(じょうしゅう)鹿久保村(かくぼむら)に、内匠(たくみ)と云ふ人、碓氷合戦(うすいかっせん)に、数箇処(すかしょ)手を負ひて臥(ふ)したるを、討ち死にしたりと思ふて、捨て置き、宿へ帰り、忌日(きにち)々々の弔ひを作(な)す。
 一周忌に当たつて供養をなす処(ところ)に、何国(いずく)とも知らず、若き僧来たり。「内匠と云ふ人、山中の木のうつろに活(い)きて有り。迎ひを遣(や)り給へと、慥(たし)かに伝言なり」と、固く云ひ届けて去りぬ。子息、聞いて不思議に思ひ、彼(か)の僧に対面して、委(くわ)しく問はんと走り出(い)で、尋ねけれども行き方なし。
 さる程に、山中に行きて此彼(ここかしこ)を尋ねければ、木のうつろに身は片輪と成りて、命永(なが)らへて有り。(中略)寒き時分なれば、寒(こご)えて本性なし。急ぎ火に当て暖めければ、漸(ようや)く本性に成つて語りければ、「今迄坊主七人にて、一日替はりに、食物、湯水を与へけるが、其の中(うち)、一僧鼻欠け有りし」と語る。
 子息、希代(きたい)に思ひ、虚荼毘(からだび)の跡を見れば、七本卒塔婆(そとば)の中に、一本、闕(か)け目有り。」



「蛇、癭の中より出づ」より:

「河内の国錦郡(にしごり)の農民が妻、頂(うなじ)に癭(こぶ)出でたり。初めは蓮肉(れんにく)の大きさなるが、漸く庭鳥(にわとり)の卵(かいご)の如く、後には終(つい)に三、四升ばかりの壺の大きさなり。斯くて三升の後に二升を入るる瓶の如し。
 甚だ重くして立ちて行く事叶はず。もし立つ時には、かの癭を人に抱へさせて行く。更に痛む事なし。度々(よりより)は癭の中に、管絃音楽の声聞こえて、是に心を慰むに似たり。其の後、癭の外に、針の先ばかりなる、細く小さき孔(あな)、数千あきて、空曇り雨降らんとする時は、穴の中より白き煙りの立つ事、糸筋の如くして、空に昇る。」





こちらもご参照ください:

高田衛 編・校注 『江戸怪談集 (下)』 (岩波文庫)
『伽婢子』 松田修・渡辺守邦・花田富二夫 校注 (新 日本古典文学大系)



























































































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