高田衛 編・校注 『江戸怪談集 (下)』 (岩波文庫)

高田衛 編・校注 
『江戸怪談集 (下)』 

岩波文庫 黄/30-257-3 

岩波書店
1989年6月16日 第1刷発行
1989年7月25日 第2刷発行
374p
文庫判 並装 カバー
定価620円(本体602円)
カバー: 中野達彦



本文中図版多数。


江戸怪談集 下 01


カバーそで文:

「怪談集が江戸人の嗜好に投じて普及するについては〈諸国咄〉〈百物語〉〈御伽=夜話〉等ハナシの編成法に斬新な趣向がこらされたことを忘れてはならない。ここにはそういう手法を代表するものとして『諸国百物語』『新御伽婢子』など四種の怪談集をとりあげた。」


目次:

諸国百物語(しょこくひゃくものがたり)
 後妻(うわなり)うちの事 付タリ 法花経の功力
 京東洞院、かたわ車の事
 雪隠のばけ物の事
 本能寺七兵衛が妻の幽霊の事
 会津須波の宮、首番と云ふばけ物の事
 尼が崎伝左衛門、湯治してばけ物にあひし事
 六端の源七、間男せし女をたすけたる事
 豊後の国何がしの女房、死骸を漆にて塗りたる事
 熊野にて百姓、我が女房を変化にとられし事
 遠江の国堀越と云ふ人、婦に執心せし事
 奥州小松の、城ばけ物の事
 京五条の者、仏の箔をこそげて報いし事
 西江伊予の女房の執心の事
 吉利支丹宗門の者の幽霊の事
 小笠原殿家に、大坊主ばけ物の事
 森の美作殿、屋敷の池にばけ物すみし事
 近江の国、笠鞠と云ふ所、雪隠のばけ物の事
 大石又之丞、地神の恵にあひし事
 江州、白井介三郎が娘の執心、大蛇になりし事
 安部宗兵衛が妻の怨霊の事
 ばけ物に骨をぬかれし人の事
 まよひの物、二月堂の牛王に怖れし事
 奥嶋検校、山の神のかけにて官にのぼりし事
 加賀の国、紺鬼の事
 播磨国、池田三左衛門殿わづらひの事
 慶長年中、伊賀の国ばけ物の事
 下総の国にて、継子を憎みて我が身に報ふ事
 渡部新五郎が娘、若宮の児に思ひそめし事
 艶書の執心、鬼と成りし事
 賭づくをして、我が子の首を切られし事
 端井弥三郎、幽霊を舟渡しせし事
 叡山の源信、地獄を見て帰られし事
 酒の威徳にて、化け物を平らげたる事
 牡丹堂、女の執心の事
 丹波申楽、へんげの物につかまれし事
 筑前の国、三太夫と云ふ人、幽霊とちぎりし事
 土佐の国にて、女の執心蛇になりし事
 遠江の国にて、蛇、人の妻ををかす事
 浅間の社の化け物の事
 気ちがひの女をみて、幽霊かと思ひし事
 長谷川長左衛門が娘、蟹を寵愛せし事
 嶋津藤四郎が女房の幽霊の事
 下総の国、平六左衛門が親の腫物の事
 猫また、伊藤源六が女房に化けたる事
 狸のしうげんの事 付タリ 卒塔婆の杖の奇特
 熊本主理が下女、きくが亡魂の事
 津の国布引の滝の事 付タリ 詠歌
 竜宮の乙姫、五十嵐平右衛門が子に執心せし事
 二桝をつかひて火車にとられし事
 播州(ばんしゅう)姫路の城ばけ物の事
 紀州和歌山、松本屋久兵衛が女房の事
 三本杉を足にて蹴たる報いの事
 狸廿五の菩薩の来迎をせし事
 吉田宗貞の家に怪異ある事 付タリ 歌の奇特
 豊前の国、宇佐八幡へ夜な夜な通ふ女の事
 芝田主馬が女房、嫉妬の事
 万吉太夫、化け物の師匠になる事
 丹波の国さいき村に、生きながら鬼になりし人の事
 栗田左衛門介が女房、死して相撲を取りに来たる事
 伊勢津にて金の執心ひかり物となりし事
 松坂屋甚太夫が女房、うはなりうちの事
 靏の林、うぐめの化け物の事
 大森彦五郎が女房、死してのち双六をうちに来たる事
 女の生霊の事 付タリ よりつけの法力

平仮名本(ひらがなぼん)・因果物語(いんがものがたり)
 恋ゆゑ殺されて、其の女につきける事
 盗をせし下女、鬼につかみころされし事
 ねたみ深き女、つかみころされし事
 生ながら、火車にとられし女の事
 私をいたしける手代の事
 きつねに契りし、僧の事
 家の狗、主(しゅう)の女房を、ねたみける事
 非分にころされて、怨をなしける事
 狐、産婦の幽霊に妖(ば)けたる事
 石仏の妖(ば)けたる事

新御伽婢子(しんおとぎぼうこ)
 化女(けじょ)の髻(もとどり)
 蟇(ひき)の霊(りょう)
 髑髏(どくろ)言(ものいう)
 火車の桜
 遊女猫分食(ゆうじょねこわけ)
 生きての恨
 古蛛怪異(こちゅうけい)
 古屋剛(ふるやのごう)
 女の生首(いきくび)
 人喰老婆(ひとくいうば)
 樹神(じゅじん)の罰
 則身毒蛇(そくしんのどくじゃ)
 夢に妻を害す
 死後の嫉妬
 雨の小坊主
 両妻夫割(おっとをさく)
 夜陰の入道
 血の滴(したた)り、成小蛇(しょうじゃとなる)
 仙境界(せんきょうかい)
 禿狐
 三頸(さんきょう)移鏡(かがみにうつる)
 幽霊討敵(かたきをうつ)
 沈香合(じんのこうばこ)
 聖霊会(しょうりょうえ)
 蛇身往生(じゃしんおうじょう)

百物語評判(ひゃくものがたりひょうばん)
 西岡(にしのおか)の釣瓶(つるべ)おろし 并 陰火陽火の事
 こだま 并 彭侯と云ふ獣 附 狄仁傑の事
 見こし入道 并 和泉屋介太郎の事
 狐の沙汰 附 百丈禅師の事
 狸の事 附 明の鄒智 并 斎藤助康手柄の事
 有馬山、地獄谷、座頭谷の事
 うぶめの事 附 幽霊の事
 垢ねぶりの事
 道陸神の発明の事
 天狗の沙汰 附 浅間嶽求聞持の事
 叡山中堂油盗人と云ふばけ物 附 青鷺の事
 河太郎 附 丁初が物語の事
 雪女の事 并 雪の説
 舟幽霊 附 丹波の姥が火、津国仁光坊の事

解説



江戸怪談集 下 02



◆本書より◆


「雪隠のばけ物の事」:

「ある人、雪隠(せっちん)へ行きければ、美しき喝食(かつじき)来たりて、かの男を見て、けしからず笑ふ。男、驚き、急ぎ立ち帰り、かくの如くと人に語る。そのとき雪隠の内より、若き人の声して、からからと笑ふと思へば、くだんの男、立ち所に死にけり。いろいろ薬を用ゆれども、よみがへらず。みな人、不審をなしける。」


「森の美作殿、屋敷の池にばけ物すみし事」:

「森美作(もりのみまさか)殿、屋敷の裏に小さき堀あり。その堀の内より小さき児出づる事もあり。
 又女のかづきを着たるが、あなたこなたと歩く事も有り。ある時、美作殿、近習(きんしゅう)の衆を集め、夜ばなしをなされけるに、座敷のまはりを、女、髪を下げ、二人連れにて、あなたこなたを歩きける影、座敷の壁に映りて見えければ、美作殿、不思議に思召し、座敷の内を立て廻し、すみずみまで侍どもに探させ、御覧なされ候へども、何物もなし。
 ただ影ばかり、あなたこなたとするが、みな人の目に見えけるとなり。
 それより一年ほどすぎて、殿も御死去なされけると也。」



「浅間の社の化け物の事」より:

「信濃の国に、何がしの侍(さむらい)有りけるが、心、剛(ごう)に力強き人なり。
 ある時、家来(けらい)を集めて申されけるは、「浅間(あさま)の社(やしろ)には化け物ありと聞き及びたり。われ、此所に居ながら、これを見とどけんも口惜(くちお)しく、今宵思ひたち、浅間へ行きて化け物の様子、見んと思ふ也。もあし我が跡に一人にても付き来たらん者は、腹を切らすべし」と制し、二尺七寸の正宗の刀に、一尺九寸の吉光(よしみつ)の脇指を差しそへ、九寸五分の鎧通(よろいどお)しを懐にさし、五、六人ほどして持つ、鉄(くろがね)の棒を杖につき、頃は八月中旬、月くまなき夜、浅間の社を指して行き、拝殿に腰を掛け、何物にてもあれ、ただ一討ちにせんと待ち居ける所に、
 麓の方より、としのほど十七、八なる美(うるわ)しき女、白き帷子(かたびら)を着て、三歳ばかりなる子を抱き来たりて、何がしを見て云ふやう、「さても嬉しき事かな。今宵はこの社に通夜(つや)を申すに、良き伽(とぎ)のおはしますぞや。余りに草臥(くたび)れたれば、汝は、あの殿(との)に抱(いだ)かれよ」とて、懐より下しければ、この子、するすると這ひ上(のぼ)るを、何がし、持ちたる棒にて、ちやうど打てば、打たれて此の子、母がもとに帰りけるを、「抱かれよ、抱かれよ」とて、ひたと追返す事、五、六度に及べば、くだんの棒も、打ち曲げければ、腰の刀をするりと抜き、此の子を二つに切り倒しける。
 片割れに、又目鼻つきて、此の子二人になりて這ひかかるを、二人ともに切り倒しければ、又、その手、足、むくろなどに、目鼻つきて、子となり、ひたと此の子、数多くなるほどに、のちには二、三百程になりて、拝殿に満ち満ち、一度に何がしに這ひかかる。」



「大森彦五郎が女房、死してのち双六をうちに来たる事」:

「丹波(たんば)の亀山に、大森彦五郎(おおもりひこごろう)とて、三百石とる侍(さむらい)あり。此の人の女房、かくれなき美人なりしが、産の上にて、むなしくなり給ひければ、彦五郎も嘆き悲しび給ひけれども甲斐なし。この内儀(ないぎ)に、七歳の時より、使はれし腰元女ありしが、この女、ことに嘆きて、七日の内には、自害をせんとする事、十四、五度におよべるを、やうやうなだめおきて、はや三年(みとせ)を過ごしける。
 一門寄合ひ、意見して、彦五郎に又妻を迎へさせけり。のちの内儀は、女なれども、よく道をわきまへたる人にて、はじめの内儀を呼び出だし、持仏堂にて、毎日回向(えこう)せられければ、はじめの内儀も、草葉のかげにては喜び給ふと也。
 はじめの内儀、存生(ぞんじょう)のとき、かの腰元と、つねづね双六(すごろく)を好きて、うたれしが、相ひ果てられても、その執心残りけるにや、夜な夜な来たりて、腰元と双六をうつ事、三年におよべり。ある時、腰元申しけるは、「夜な夜なあそびに御座(ござ)候ふ事、すでに三年におよべり。我、七歳の時より、ふびんを加へさせ給ふて、かやうに成人いたし候へば、いつまで御奉公をいたし候ひても、御恩は報じがたく候へども、今は又、かはりの女臈(じょろう)も候へば、若(も)しも、かやうに夜な夜な御出で候ふ事、知れ申し候はば、妬(ねた)みに来たり給ふかと思ひ給ふべし。今より後はもはや来たり給うふな」と申しければ、「まことに其の方が申すごとく、此の双六に執心を残したるとは人もいふまじ。今より後はまゐるまじ」とて、帰られけるが、
 その後、彦五郎夫婦の人に、腰元女、物語りしければ、「さては左様にありつるか」とて、双六盤をこしらへ、かの内儀の墓の前に供へて、ねんごろに弔ひ給ひけると也。」





高田衛 編・校注 『江戸怪談集 (上)』 (岩波文庫)
高田衛 『女と蛇』




































































































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Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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