『チェッリーニ自伝 ― フィレンツェ彫金師一代記 (下)』 古賀弘人 訳 (岩波文庫)

『チェッリーニ自伝
― フィレンツェ彫金師一代記 
(下)』 
古賀弘人 訳 

岩波文庫 赤/32-711-2 

岩波書店 
1993年8月18日 第1刷発行
361p
文庫判 並装 カバー
定価620円(本体602円)



Benvenuto Cellini: La Vita
巻頭に図版(モノクロ)2点、地図1点。解説中に図版2点。


チェッリーニ自伝 下 01


カバー文:

「地下牢ふかく幽閉された孤独と呻吟の2年間をチェッリーニは超人的な生命力をもって耐えぬいた。そしてパリへと向かい、フランソワ一世の宮廷で新たな制作意欲に奮い立つ。しかし――。奔放不羈なおのれの人生を誰はばかることなくあけすけに語り、ゲーテ、スタンダールをも驚嘆させた自伝文学の傑作。」


目次:

チェッリーニ自伝
 第二部

訳注
解説 (古賀弘人)



チェッリーニ自伝 下 02



◆本書より◆


「ある日、リヨンまであと一日というあたりに来て、日の暮れる二時間まえのころ、空がにわかに甲高い雷を鳴らしだし、あたりが真っ白になった。私は道づれから、弩(いしゆみ)の届く距離ぐらいさきに立っていた。雷鳴につづき、空のたてる轟きはそれは凄まじい恐ろしいものになり、私の目にはまるで〈最後の審判〉の日が到来したかと映った。しばらく馬をとめていると、雨だれを伴わない霰(あられ)が降りだした。吹矢筒(ふきやづつ)の玉よりも大粒であった。それが身体にあたって刺すように痛かった。その霰がいよいよ大きくなり、弩の弾(たま)ほどにもなった。馬が怯えきっているようなので、私は全速で一気にとってかえした。つれの者たちはと見ると、彼らも同じように恐れをなして、松林のなかに足留めされていた。霰はさらに大きめのレモンの実ほどになった。私は「ミゼレーレ〔我れを憐れみたまえ〕」の祈りを唱えた。こうして私が一心に神様に祈っているあいだ、ばらばらっと落ちてきた大粒の玉のひとつが、てっきり安全だと思った、そこの松の木の大枝の一本を打ち砕いた。玉の群れのもうひとつは私の馬の頭に命中し、馬は倒れそうな恰好を見せた。私にも当たったが、さいわい直撃ではなく、さもなければ命を落としていたであろう。
 同じように玉のひとつが、気の毒にあの老いたリオナルド・テダルディを打ち、そのため彼は、私と同じにひざまずいていたのだが、地面に這いつくばった。そこで私は、松の大枝も、また「ミゼレーレ」をもってしても楯にはなりそうにないので、なんらかの手を打つ必要があると察し、頭にかぶった服を二重にした。そうしておいて、「イエス様、イエス様」と助けを求めて叫ぶリオナルドに、そのおかたはみずから助くる者を助くるのだと戒めた。自分よりも彼の世話がひと苦労であった。この霰はしばらくつづき、やがては止んだものの、われわれはみなぐったりして、力を振りしぼり馬に乗りなおすのがやっとだった。互いの擦り傷や打ち身の痕を見せあいながら宿を探して進むうちに、一ミッリオほどさきで、われわれの比ではない、なんとも言い表しようのない惨状にぶつかった。
 木という木はみな剥きだしになり、根から折られて、霰の打ちあたった家畜という家畜がやられていた。そこここに牧童が死んでいた。両の手にもあまるほどの玉をどっさり見た。」





こちらもご参照ください:

『チェッリーニ自伝 ― フィレンツェ彫金師一代記 (上)』 古賀弘人 訳 (岩波文庫)
ジェローラモ・カルダーノ 『カルダーノ自伝 』 清瀬卓・澤井繁男 訳 (平凡社ライブラリー)















































































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