『カルヴィーノ イタリア民話集 (上)』 河島英昭 編訳 (岩波文庫)

『カルヴィーノ 
イタリア民話集 (上)』 
河島英昭 編訳 

岩波文庫 赤/32-709-1 

岩波書店 
1984年8月16日 第1刷発行
1990年7月16日 第4刷発行
381p 資料一覧6p
文庫判 並装 カバー
定価620円(本体602円)



本書「凡例」より:

「本書は、イータロ・カルヴィーノ編著『イタリア民話集』(一九五六年刊、エイナウディ社)全二〇〇篇から、七五篇を選んで訳したものである。」
「(上)には北イタリア編として三三篇を、(下)には南イタリア編として四二篇を収めた。」



Fiabe italiane, raccolte e trascritte da Italo Calvino, 1956
巻頭に地図。カット多数。
訳者による『イタリア民話集』の抄訳としては、すでに『みどりの小鳥』(岩波書店、1978年、31篇収録)があり、そのうち5篇が岩波文庫版と重複しています。
本書のカットには、『宿命の交わる城』(講談社、1980年)掲載のタロット・カードの図柄が使用されています。


カルヴィーノ イタリア民話集 上


カバー文:

「『グリム童話集』に匹敵する民話集をという熱意から、カルヴィーノ(1923-85)は他の作家活動の一切をなげうち、膨大な資料をあさり異校をつき合わせて、イタリア全土から典型的な民話200篇を選んで世に問うた。その中から、さらに75篇をえりすぐって、(上)を北イタリア編、(下)を南イタリア編と2冊に分けて収める。(上)の巻末にカルヴィーノの民話論を付す。(全2冊)」


目次:

恐いものなしのジョヴァンニン(北イタリア全域)
緑の藻の男(リグーリア西海岸)
何ごとも金しだい(ジェーノヴァ)
水蛇(モンフェッラート丘陵地帯)
鸚鵡(モンフェッラート丘陵地帯)
クリックとクロック(モンフェッラート丘陵地帯)
カナリア王子(トリーノ)
強情者だよ、ビエッラの人は(ビエッラ近郊)
花薄荷の鉢(ミラーノ)
星占いの農夫(マントヴァ)
聖ジュゼッペの信者(ヴェローナ)
蟹の王子さま(ヴェネツィア)
まっぷたつの男の子(ヴェネツィア)
満ち足りた男のシャツ(フリウーリ地方)
怠けの技(トリエステ)
ベッラ・フロンテ(イストリア半島)
無花果を食べあきなかった王女(ロマーニャ地方)
傴僂のタバニーノ(ボローニャ)
塩みたいに好き(ボローニャ)
七頭の竜(ピストイアのモンターレ)
眠れる女王(ピストイアのモンターレ)
ミラーノ商人の息子(ピストイアのモンターレ)
魔法の宮殿(ピストイアのモンターレ)
フィレンツェの男(ピーサ)
弾む小人(ピーサ)
乳しぼりの女王(リヴォルノ)
カンブリアーノの物語(ルッカ近郊)
魔女の首(アルノ川上流域)
林檎娘(フィレンツェ)
プレッツェモリーナ(フィレンツェ)
籠のなかの王さま(フィレンツェ)
地獄に堕ちた女王の館(シエーナ)
十四郎(マルケ地方)

原注
民話を求める旅 (イータロ・カルヴィーノ)
資料一覧




◆本書より◆


「蟹の王子さま」より:

「あるとき、ひとりの漁師がいて、ろくに魚が獲れないため、家族にポレンタを買ってやることさえ出来なかった。ある日のこと、網を打っていると、手応えがあり、容易には引きあげられなかった。それで引きに引くと、左右の目では見きれないほど大きな大きな蟹(かに)がかかっていた。「おお、やったぞ。こんどこそ、すごい獲物だ! これで、幼い子供たちに、ポレンタを買ってやることもできるだろう!」
 蟹を背負って家へ帰ってきた。そして妻に向かって、すぐにポレンタを持って帰ってくるから鍋を火にかけておけ、と言いつけた。そして王さまの宮殿へ蟹を持っていった。
 「陛下」と、王さまに言った。「恐れながら、わたしの取ったこの蟹をお買いあげいただけるのではないかと思って、やってまいりました。わたしの妻はもう鍋を火にかけて待っておりますが、わたしにはポレンタを買うお金もありません」
 王さまが答えていった。「いったい蟹なんか、わたしにどうしろと言うのだ? 誰か、よそのひとのところへ行って、売ってきたらどうだ?」
 ちょうどそのとき、王さまの娘が入ってきた。「まあ、すてきな蟹ね、何てすてきな蟹でしょう! お父さま、あたしに買って、あたしに買ってちょうだい、お願いですから。鯔(ぼら)や黒鯛(くろだい)といっしょに、生簀(いけす)に入れて飼ってみたいの」
 王さまの娘は魚が大好きで、庭の生簀の縁に何時間も腰をおろしては、鯔や黒鯛が泳ぎまわるのに見とれていた。父親は目に入れても痛くないほど娘をかわいがっていたから、その願いを聞き入れてやった。蟹を生簀に放つと、漁師は袋にいっぱい金貨を貰った。もうこれで一ヵ月は安心して子供たちにポレンタを食べさせることができるだろう。
 王女さまはその蟹をいくら見ても見飽きなかった。それで一向に生簀から離れようとしなかった。そのうちに、蟹のことならば何でもわかるようになって、蟹の癖まで覚えてしまった。そして正午から三時までのあいだ、どこへ行くのかわからないが、蟹が姿を消すことも、わかるようになった。ある日のこと、王さまの娘がそこで蟹への思いにふけっていると、呼び鈴の鳴る音が聞こえた。」





カルヴィーノ イタリア民話集 (下)』 河島英昭 編訳 (岩波文庫)















































































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