カルヴィーノ イタリア民話集 (下)』 河島英昭 編訳 (岩波文庫)

「歩きに歩いてゆくと、飢えのためにもう立っていられなくなった。草原に倒れこんで、口に入れるものを何か探そうと、手を伸ばして草を引きちぎって食べてみた。チコリの一種だったが、噛むやいなや、自分の姿が驢馬に変ってしまった。《こうやって驢馬になってしまったからには――と考えた――二度と飢えに苦しむことはないだろう。草だけ食べて生きていけるのだから》」
(カルヴィーノ 「金の卵を生む蟹」 より)


『カルヴィーノ 
イタリア民話集 (下)』 
河島英昭 編訳 

岩波文庫 赤/32-709-1 

岩波書店 
1985年12月16日 第1刷発行
1990年7月16日 第3刷発行
400p 資料一覧/原書収録作品12p
文庫判 並装 カバー
定価620円(本体602円)



本書「凡例」より:

「本書は、イータロ・カルヴィーノ編著『イタリア民話集』(一九五六年刊、エイナウディ社)全二〇〇篇から、七五篇を選んで訳したものである。」
「(上)には北イタリア編として三三篇を、(下)には南イタリア編として四二篇を収めた。」



Fiabe italiane, raccolte e trascritte da Italo Calvino, 1956
巻頭に地図。カット多数。
訳者による『イタリア民話集』の抄訳としては、すでに『みどりの小鳥』(岩波書店、1978年、31篇収録)があり、そのうち5篇が岩波文庫版と重複しています。
本書のカットには、『宿命の交わる城』(講談社、1980年)掲載のタロット・カードの図柄が使用されています。


カルヴィーノ イタリア民話集 下


カバー文:

「イタリアの民話は長い伝統によってつちかわれた。1300年代の商人の叙事詩とよばれるボッカッチョ『デカメロン』、ヴェネツィア、ムラーノ島で謝肉祭の時期に繰りひろげられたストラパローラ『楽しき夜毎』(16世紀)、そして17世紀のバジーレの民話集『ペンタメロン』がそれである。主人公に、《王さま》と肩を並べて《商人》が登場するのも、イタリアならではの特色である。」


目次:

木造りのマリーア(ローマ)
皇帝ネーロとベルタ(ローマ)
三つの石榴の愛(アブルッツォ地方)
鍬を取らねば笛ばかり吹いていたジュゼッペ・チューフォロ(アブルッツォ地方)
傴僂で足わる・首曲り(アブルッツォ地方)
一つ目巨人(アブルッツォ地方)
宮殿の鼠と菜園の鼠(モリーゼ地方)
黒人の骨(ベネヴェント)
洗濯女の雌鶏(イルピーニア地域)
最初の剣と最後の箒(ナーポリ)
狐の小母さんと狼の小父さん(ナーポリ)
ほいほい、驢馬よ、金貨の糞をしろ!(オートラント地域)
プルチーノ(オートラント地域)
人魚の花嫁(ターラント)
最初に通りかかった男に嫁いだ王女たち(バジリカータ地方)
眠れる美女と子供たち(カラーブリア地方)
七面鳥(カラーブリア地方)
蛇の王子さま(カラーブリア地方)
金の卵を生む蟹(カラーブリア地方ギリシア語地区)
人魚コーラ(シチリア島パレルモ)
なつめ椰子・美しいなつめ椰子(パレルモ)
賢女カテリーナ(パレルモ)
風を食べていた花嫁(パレルモ)
エルバビアンカ(パレルモ)
ツォッポ悪魔(パレルモ)
床屋の時計(パレルモ後背地)
仔羊の七つの頭(フィカラッツィ)
この世の果てまで(サラパルータ)
気位の高い王女(トラーパニ近郊)
隊長と総大将(アグリジェント近郊)
孔雀の羽(カルタニッセッタ近郊)
二人の騾馬引き(ラグーザ近郊)
ジョヴァンヌッツァ狐(カターニア)
十字架像に食べ物をあげた少年(カターニア)
角だらけの王女さま(アーチレアーレ)
ジュファーの物語(シチリア島全域)
修道士イニャツィオ(サルデーニャ島カンピダーノ平野)
ソロモンの忠告(カンピダーノ平野)
羊歯の効きめ(ガッルーラ山地)
人間に火を与えた聖アントーニオ(ログドーロ高地)
三月と羊飼(コルシカ島)
ぼくの袋に入れ!(コルシカ島)

原注
民話と文学 (河島英昭)

原書収録作品
資料一覧



カルヴィーノ イタリア民話集 下 02



◆本書より◆


「三つの石榴の愛」より:

「ある王さまの息子がテーブルで食事をしていた。リコッタを切りながら、指を傷つけてしまい、一雫の血がリコッタの上に落ちた。母親に言った。「ママ、乳のように白く血のように赤い女のひとが欲しい」
 「まあ、息子や、白いひとは赤くないし、赤いひとは白くないのよ。でも、探せば見つかるかもしれないわね」
 息子は歩きだした。歩きに歩くと、ひとりの女に出会った。「若いお方、どこへ行くの?」
 「でも、女のあなたに言うなんて!」
 歩きに歩いてゆくと、小さな老人に出会った。「お若いの、どこへ行きなさるのかね?」
 「あなたになら言ってもよい、あなたは男で年寄りだから、ぼくよりもいろいろなことを知っているでしょう。乳みたいに白く血みたいに赤い女のひとを探しているのです」
 すると老人が言った。「息子や、白いひとは赤くないし、赤いひとは白くないのだ。でも、この三つの石榴(ざくろ)の実を持っていって、あとで開けてみてごらん、何が跳びだしてくるか。ただし、泉の近くでだけ、そうするのだよ」
 若者が一つの石榴の実を開けると、乳みたいに白くて血みたいに赤い、それはそれは美しい娘が跳びだしてきて、すぐに叫んだ。

  黄金の唇の若者よ、あたしに飲み物を
  ください、さもないと死んでしまうわ。

 王さまの息子が手のくぼみに水をすくって、彼女に差しだした。が、まにあわなかった。美しい娘は死んでしまった。
 別の石榴の実を開けると、別の美しい娘が跳びだしてきて、言った。

  黄金の唇の若者よ、あたしに飲み物を
  ください、さもないと死んでしまうわ。

 水を持っていったが、すでに死んでいた。
 三つめの石榴の実を開けると、まえのふたりより、もっと美しい娘が、跳びだしてきた。若者が顔に水を投げかけたので、命を取りとめた。
 娘は母親から生まれ落ちたときと同じように裸だったから、若者は自分の外套をかけてやりながら言った。「この木の上に登っていな。きみが着る服と、きみを宮殿へ連れていくための馬車を、取ってくるから」
 泉のかたわらの木の上で、娘は待っていた。」





『カルヴィーノ イタリア民話集 (上)』 河島英昭 編訳 (岩波文庫)






































































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