『アリオスト 狂えるオルランド』 脇功 訳

「森の中さ迷い行けば、もろもろの
不思議なことに出会うであろうが、されどこの森
翳るがごとく、そのことは人に知られず終わるであろう、
冒険の大方はそれを知らせる者がなきゆえ。」

(アリオスト 『狂えるオルランド』 より)


『アリオスト 
狂えるオルランド』 
脇功 訳
 

名古屋大学出版会
2001年6月30日 初版第1刷発行
2002年7月30日 初版第2刷発行
(上): xxxii 467p 口絵(カラー)1葉
(下): ii 515p 索引24p 口絵(カラー)1葉
菊判 丸背布装上製本 貼函
定価12,000円+税
挿絵: ギュスターヴ・ドレ



本書「訳者あとがき」より:

「本書はルドヴィコ・アリオスト(Ludovico Ariosto)の『狂えるオルランド』 Orlando Furioso の全訳である。」


上下二冊本が一つの函に入っています。
上巻口絵はアングル「アンジェリカを救うルッジェーロ」(部分)、下巻口絵はティツィアーノ「伝アリオストの肖像」。
本文中、ドレによるフルページ挿絵45点(上巻23点、下巻22点)。


アリオスト 狂えるオルランド 01


帯文:

「波瀾万丈、奇想天外、痛快無比

イタリア・盛期ルネッサンスの
最高傑作にして
16世紀の一大「ベストセラー」

悲劇的でありつつもコミカルで、
抒情的でありながらも勇壮な、――
すべての要素をまとめ上げ、
ヨーロッパ文学を
完成の極地にまで高めた、
めくるめく恋と冒険の物語。」



アリオスト 狂えるオルランド 02


上巻目次:

訳者まえがき

第一歌
第二歌
第三歌
第四歌
第五歌
第六歌
第七歌
第八歌
第九歌
第十歌
第十一歌
第十二歌
第十三歌
第十四歌
第十五歌
第十六歌
第十七歌
第十八歌
第十九歌
第二十歌
第二十一歌
第二十二歌
第二十三歌

訳注



下巻目次:

第二十四歌
第二十五歌
第二十六歌
第二十七歌
第二十八歌
第二十九歌
第三十歌
第三十一歌
第三十二歌
第三十三歌
第三十四歌
第三十五歌
第三十六歌
第三十七歌
第三十八歌
第三十九歌
第四十歌
第四十一歌
第四十二歌
第四十三歌
第四十四歌
第四十五歌
第四十六歌

訳注
訳者あとがき
固有名詞索引



アリオスト 狂えるオルランド 03



◆本書より◆


「第四歌」より:

「ブラダマンテの目に映りしは、容易には
信じられない、別なる不思議、
翼の生えた巨大な馬が甲冑着けた
騎士を背に乗せ、宙空横切(よぎ)る光景だった。
 両の翼は大きくて、異様な色帯び、
背の真ん中に、きらきらと輝く鋼の
甲冑を纏った一人の騎士が打ち跨がって、
西の空目指して天を翔けり行き、
それから、やおら舞い下りながら、山の間に姿を消した。
旅籠の主の語るには(してそれは真であったが)、
それぞかの妖術使い、あるいは遠くを、あるいは近くを、
あのように、しばしば天空駆け行くとのこと。
 天翔(あまか)けながら、ある時は星まで高く舞い上がり、
またある時は地べたを撫でるほどにまで低く舞い下り、
その近辺の眉目よき女子ら、手当り次第に
引っ攫い、連れ去って行く。
それゆえに、哀れにも、眉目よき女子や、
おのれでそうと自惚れる娘らはみな(まるでその
妖術使いが誰彼の見境いもなく連れ去るみたいに)、
日の光のあるうちは一歩も外へ出ぬのであった。
 「かの妖術使いはピレネーの山中深くに
(と主は語った)魔法の力で城を構える、
その城はすべて鋼の造りにて、眩いばかりに美しく、
この世には二つとないほど見事なもの。
これまですでに多くの騎士がその城目指せど、
いまだそこより立ち返りたる者一人とてなし。
それゆえに、みな囚われたるか、さもなくば
殺められたるものかと思い、恐れ戦きおる次第」
 ブラダマンテはそれを聞き、大いに喜び、
不思議なる指輪の力で、妖術使いを、
その城もろとも、始末せんとの企ての成就を信じ、
そしてまさしくその首尾果たすこととなる。」



「第二十三歌」より:

「疲れ果て、悲しみに打ちひしがれて、
草に身を投げ、無言で天をねめつけて、
食べ物を口にも入れず、眠りもせずに、
そのままで太陽が三度昇って沈むのを見た。
激しい苦悩が募ってやまず、
オルランド、ついには正気を失った。
四日目に、激情に駆られたあまり、
身に帯びた鎧の板金、鎖帷子引きちぎり、
 ここには兜を、そこには楯を、遠くには物の具の
いろんな切れ端、より遠くには鎧の胸当てを投げ棄てる。」
「それから衣服も引き裂いて、毛むくじゃらなる
腹や、胸、背中をはだけて、
こののち話に聞くこともなかろうほどの、
げに恐ろしき狂乱ぶりを示し始めた。
 あまりな怒り、あまりな憤怒に、
正気がすっかりくもってしまった。
あっぱれな手柄の数々立てたであろう
あの剣、手にすることさえ忘れた模様。
されどその怪力ぶりには、剣も、
斧も、鉞(まさかり)も、無用であった。
恐るべき力を振い、一揺すりして、
たちまちに見上げるような松を一本引っこ抜く。
 さらに続けて、何本も、あたかも芹か
茴香(ういきょう)のごとくに、松の幹をば引き抜いて、
樫やら、楡の古木やら、椈やら、とねりこ、
黐の木や、樅の木なども同様の目に合わす。」



「第二十四歌」より:

「牧人(まきびと)たちはより近くからその狂人の
途轍なき怪力ぶりと仕業とを目の当りにし、
やにわに恐怖にかられた者がするように、
踵(きびす)を返して、やみくもに行方定めず逃げ出した。
狂人はすぐさまそのあと追いかけて、
一人を捕えて、林檎の木から実をもぎ取るか、
それとも茎からきれいな花を摘み取るごとくに、
その首をいとも容易に捩り取る。
 してその片方の足をつかんで、重たい胴を
棍棒がわりに、残りの者らを叩き伏せれば、
幾人か、最後の審判下る日に目覚めるまでは、
長々と地べたに倒れ、眠り込む。
足が早くて、とっさの機転がきく者は、
たちまちその場を逃げ出した。
もしこの狂人が家畜の群れに狙いを変えずにいたならば、
すぐにも追っかけ、追いついていたことだろう。」



「第三十四歌」より:

「そなたは私と、地上を離れて、
も一つ旅をせずばなるまい。
われらにもっとも近きところをさまよう星なる
月にまで、私はそなたを連れて行く。
オルランドを元の正気に返す
薬がそこにあるゆえ。」



アリオスト 狂えるオルランド 04




こちらもご参照ください:

『Doré's Illustrations for Ariosto's "Orlando Furioso"』 (Dover Pictorial Archive Series)
イタロ・カルヴィーノ 『不在の騎士』 脇功 訳 (イタリア叢書)




























































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