ミルトン 『失楽園 (下)』 平井正穂 訳 (岩波文庫)

「彼は暗黒の時代における唯一の光の子だ。
周囲の先例に反抗し、誘惑や慣習に反抗し、自分を敵視する
世間に反抗して敢然(かんぜん)と自らは善たろうとする人間だ。」

(ミルトン 『失楽園』 より)


ミルトン 
『失楽園 (下)』 
平井正穂 訳 

岩波文庫 赤/32-206-3

岩波書店 
1981年2月16日 第1刷発酵
1985年5月20日 第6刷発行
431p
文庫判 並装 カバー
定価600円



John Milton: Paradise Lost, 1667

冒頭の引用中の「彼」はサタンではなくてノアです。


ミルトン 失楽園 下


カバー文:

「サタンの言葉巧みな誘惑に屈したイーヴはついに禁断の木の実を口にする。アダムもまた共に亡びることを決意して木の実を食う。人類の祖をして創造主に叛かしめるというサタンの復讐はこうして成った。だが神のつかわした天使ミカエルは、犯された罪にもかかわらずなお救いの可能性のあることを彼らに説いてきかせる――。」


目次:

第七巻
第八巻
第九巻
第十巻
第十一巻
第十二巻

訳注
解説




◆本書より◆


「第九巻」より:

「ああ、
大地よ、もしわたしに喜びをどこかに見出しうるとすれば、
わたしはいかに大きな喜悦に溢れてお前の世界を歩きまわる
ことであろうか! ここには、山、谷、川、森、野原がある、いや、
陸があり、海がある、森の茂っている岸辺、岩場、洞穴、洞窟が
ある、――それらが次々に快い変化を示している! だがその
どこにも、わたしは己の住処(すみか)も隠れ家も見出すことができない。
周(まわ)りの楽しい光景を見れば見るほど、内なる苦悩に苛(さいな)まれる、――
苛立(いらだ)たしいほど自分から懸け離れたものに囲まれている感じだ。
わたしにはすべての善が悪になってしまった。たとえ天にいたと
しても、今よりさらに悪しき境遇に陥ることは必至だ。」

「だが、野心と復讐のためとあれば、どのようなものに身を
堕(おと)そうと、意に介する必要がどこにあろう? 高きを窺う者は、
その翔(か)けて行こうとする所が高ければ高いほど、それに応じて
一度は低く沈淪(ちんりん)しなければならぬ、いずれは最も卑しいものに
身を曝さなければならぬ。」



「第十一巻」より:

「忽ち、
陰惨で暗くて喧しい或る場所が、アダムの眼の前に現われた。
それは癩病院のように見えたが、とにかくそこにはあらゆる
病気に冒された者たちが、夥しく横たわっていた。凄じい痙攣(ひきつけ)や、
拷問(ごうもん)にも等しい苦痛や、心臓をしめつけるような苦しみの
発作、などを伴うあらゆる病気にかかった患者がそこにいた。
また、あらゆる種類の熱病、痙攣、癲癇(てんかん)、激烈な加答児(カタル)、
腸結石、潰瘍、疝痛(せんつう)、魔物に憑(つ)かれて生ずる精神錯乱、
怏々(おうおう)として楽しまない鬱病、月にうたれて生ずる狂気、
次第に痩せ衰えてゆく萎縮病、消耗症、蔓延(まんえん)して人口を
潰滅させる疫病(ペスト)、水腫、喘息(ぜんそく)、関節を打ち砕くような
僂麻質斯(リュウマチ)などの患者がそこにいた。病人達の七転八倒する
さまは凄絶をきわめ、その呻(うめ)き声(ごえ)は陰惨そのものであった。
「絶望」が、忙しそうに、病床から病床へと駈けずり廻って病人を
看ていた。「死」が、病人達の枕もとで意気揚々とその槍を
ふり廻していた。病人達はその一撃を何よりの贈物、最後の
望み、としてしきりに哀願し、求めたが、「死」は一向にそれに
応じようとはしなかった。」





こちらもご参照ください:

ミルトン 『失楽園 (上)』 平井正穂 訳 (岩波文庫)






































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趣味: 図書館ごっこ。

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