カルロ・エミーリオ・ガッダ 『メルラーナ街の混沌たる殺人事件』 千種堅 訳

カルロ・エミーリオ・ガッダ 
『メルラーナ街の混沌たる殺人事件』 
千種堅 訳


水声社 
2011年12月10日 第1版第1刷印刷
2011年12月20日 第1版第1刷発行
411p 「著者/訳者について」1p
四六判 丸背紙装上製本 カバー
定価3,500円+税
装幀: 宗利淳一+田中奈緒子
表紙装画: アルベルト・サヴィーニオ



旧邦題『メルラーナ街の怖るべき混乱』。


ガッダ メルラーナ街 01


帯背:

「めくるめく
大捜査劇」



帯裏:

「ムッソリーニ政権下のローマ。
成金街の宝石盗難事件-殺人事件。
奮闘する敏腕警部。
すったもんだに迷走する捜査劇。
混乱。脱線。紛糾。
そして、真犯人は……?」



目次:

改題と改訳について (千種堅)

メルラーナ街の混沌たる殺人事件

カルロ・エミーリオ・ガッダ――人と作品 (千種堅)
ローマという思想 (和田忠彦)




◆本書より◆


「深く、おそろしい、まっかな切り口が、のどのなかをのぞかせて、残忍というほかない。切り口は正面から右へと首の半分におよぶが、彼女から見れば左であり、彼女を見ている人びとからすれば右である。傷口の両端は刃か切っ先でくりかえし刺したためだろう、ぎざぎざになっていて、見るからにおそろしかった。傷口の内部は、早くも凝固した血の黒い泡のあいだに、赤いくず糸のようなものが見えていたが、中央のまだ泡が吹いているところは目もあてられない。それでも警官にとっては興味ぶかい形をしていた。初心者には、それが赤やピンクのマカロニの穴とみえたのである。「気管」とイングラヴァッロがかがみこんでつぶやいた。「頚動脈だ、頸……ああ、神さま」
 その血が首のあたり一面と、シャツの胸の部分、袖、手などをよごしていた。」


「そのとき、闇のなかから呼び出されたようにして、店に通じる小さな階段(中略)の半開きの小さなドアからぴょこんと顔を出し、冷たい床に足をのっけると、お得意のコ、コ、コという鳴き声をあげて、肌着の山がふたつあるあいだをあちらこちらと歩き始めたのは、やぶにらみで半分毛がぬけた雌鶏であり、片目がなくて、右脚には結び目がいくつもあるごつごつした紐がつないであったが、この紐のおかげで外へ出たり上へ行ったりすることができずにいた。いってみれば海から引き揚げた、水深を測るやたらと長い測鉛線のようなもので、舟尾の巻上機が舟上に引き上げるわけだが、ときとしてひげぼうぼうの飾りがくっついてとれないことがある、つまり、深海にあるかび臭い緑色の海草がついてくるのだ。あちらこちらと一度ならず足を上げてみて、そのたびごとに自分がどこに行ったらいいかは充分わかっているのだが、運命がそんなことはするなと禁令を出して邪魔しているために動けずにいるのだとでもいいたげに、いろいろやってみたものの、結局、このよちよち歩きのやぶにらみ鶏はすっかり考えを変えたのである、翼を身体から放し(たっぷり空気を吸いこむため肋骨をむき出すところを思わせる)、そのあいだに押えきれなかった怒りが喉の奥で早くもごろごろとうなっていた――カタル性の威嚇というところである。すでに毒された喉をふるわせてファルセットで鳴き始め、ぼろの山のてっぺんに立って悪魔に取りつかれたように羽ばたきし、そこから宇宙の事物や現象にとびきり上等の鳴き声をまき散らしたのだ、まるでその場に卵でも生み落したように。だが、ときを置かずにとび降りて、また新しい鋭い発作をみせながら床に降り立ったが、それは帆を張ったみごとな滑空ぶりで、まさに記録ものというところだが、あいかわらずうしろに紐を引きずっていた。」





ピエトロ・ジェルミ「刑事」(本書の映画化)より:















































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

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