イタロ・カルヴィーノ 『マルコ・ポーロの見えない都市』 米川良夫 訳

「どの都市(まち)のお話を申し上げるときにも、私は何かしらヴェネツィアのことを申し上げておるのでございます。」
(イタロ・カルヴィーノ 『マルコ・ポーロの見えない都市』 より)


イタロ・カルヴィーノ 
『マルコ・ポーロの
見えない都市』 
米川良夫 訳


河出書房新社 
1977年7月15日 初版発行
1990年7月15日 6版発行
238p
四六判 丸背紙装上製本 カバー
定価2,000円(本体1,942円)
装幀: 池田龍夫



Italo Calvino: Le città invisibli, 1972


カルヴィーノ 見えない都市 01


帯文:

「’90東京ブックフェア開催記念復刊
イタリア文壇の鬼才の最高傑作!
メルヘンの香り漂う空想都市から現代のメガロポリスまで――幻想の旅を行くマルコ・ポーロが、憂い顔の皇帝フビライ汗に語る55の都市の変奏曲!」



帯背:

「イタリア現代文学の
奇蹟の金字塔!」



帯裏:

「ここでは幻想は寓喩(アレゴリー)としての意味をもつかのようにも思われ、これら文字どおりの、裏返しの《ユートピア》(=《どこにもない国》)の物語は、そのまま、この作品がもつ現代における都市論的な、あるいは文明論的な主題を示しているかのようでもある。
――「訳者あとがき」より」



カルヴィーノ 見えない都市 02


目次:


…………
都市と記憶 1
都市と記憶 2
都市と欲望 1
都市と記憶 3
都市と欲望 2
都市と記号 1
都市と記憶 4
都市と欲望 3
都市と記号 2
精緻な都市 1
…………

…………
都市と記憶 5
都市と欲望 4
都市と記号 3
精緻な都市 2
都市と交易 1
…………

…………
都市と欲望 5
都市と記号 4
精緻な都市 3
都市と交易 2
都市と眼差 1
…………

…………
都市と記号 5
精緻な都市 4
都市と交易 3
都市と眼差 2
都市と名前 1
…………

…………
精緻な都市 5
都市と交易 4
都市と眼差 3
都市と名前 2
都市と死者 1
…………

…………
都市と交易 5
都市と眼差 4
都市と名前 3
都市と死者 2
都市と空 1
…………

…………
都市と眼差 5
都市と名前 4
都市と死者 3
都市と空 2
連続都市 1
…………

…………
都市と名前 5
都市と死者 4
都市と空 3
連続都市 2
隠れた都市 1
…………

…………
都市と死者 5
都市と空 4
連続都市 3
隠れた都市 2
都市と空 5
連続都市 4
隠れた都市 3
連続都市 5
隠れた都市 4
隠れた都市 5
…………

訳者あとがき



カルヴィーノ 見えない都市 03



◆本書より◆


「Ⅰ 都市と記憶 3」より:

「思い出から湧きあがるこの波で、海綿のようにこの都市(まち)はずぶずぶに濡れてふくれあがっているのでございます。今日あるがままのザイラを描きだすということにはまたザイラの過去のいっさいが含まれておるはずでございましょう。しかし都市(まち)はみずからの過去を語らず、ただあたかも掌の線のように、歩道の縁(へり)、窓の格子、階段の手すり、避雷針、旗竿などのありとあらゆる線分と、またさらにその上にしるされたひっかき傷、のこぎりの痕、のみの刻み目、打った凹(へこ)みといったなかに書きこまれているままに秘めておるのでございます。」


「Ⅱ 都市と欲望 4」より:

「灰色の石の都フェドーラの中心には、部屋ごとにガラスの球をそなえた金属の宮殿がございます。その球をのぞきこむと、それぞれ中には空色の都市(まち)が見えますが、それはフェドーラのいま一つの雛型でございます。いずれもそれは、この都市(まち)が何かしらの理由で今日見られるとおりのものにならなかったならばそのさいに示したはずの姿なのでございます。」


「Ⅴ 都市と名前 2」より:

「二種類の神々がレアンドラの都市(まち)を守護し給うとのことでございます。そのいずれの神々も、いかにも姿小さくて目には見えず、またその数は無数にして数えることもできぬほどでございます。一方の神々は家の戸口に御座し、また家の内ならば、傘立てや外套懸けにひそんでおります。引越しのおりには家族につき従って、その新しい住いに鍵の受け渡しと同時に住みつくとのこと。またもう一方の神々は台所にいて、鍋の下、爐の煙除(よ)けの中、あるいは箒置場の中に好んで姿を隠しております。この神々は家の一部をなしており、そこに住む一家が立ち去るときも、新しい入居者とともになおそこに留っているものでございます。多分、まだ家ができていないときから、もうそこにいて、造成地の雑草のあいだとか、錆びたドラム罐のなかなどに隠れているのでございましょう。」


「Ⅵ …………」より:

「「まだ一つだけ、そちが決して話そうとしない都市(まち)が残っておるぞ。」
 マルコ・ポーロは首を傾げた。
 「ヴェネツィアだ」と、汗(カン)は言った。
 マルコは微笑した。「では、その他の何事をお話し申し上げているとお思いでございましたか?」
 皇帝は眉一つ動かさずに言った。「だが、そちがその名を口にするのをついに聞いたことはなかったぞ。」
 ポーロは答えて――「どの都市(まち)のお話を申し上げるときにも、私は何かしらヴェネツィアのことを申し上げておるのでございます。」」



「Ⅸ 都市と死者 5」より:

「すべての都市は、ラウドミアも左様でございますが、住民がやはり同じ名で呼ばれているもう一つの都市を傍(かたわら)に備えているものでございます。つまり死者たちのラウドミア、墓地でございます。しかしラウドミアの類まれな長所は、二重であるばかりか、三重の都市である、すなわち三番めのラウドミア、まだ生れ来ぬ人たちの都市(まち)をも含んでいるということでございます。」


「Ⅸ …………」より:

「「生ある者の地獄とは未来における何ごとかではございません。もしも地獄が一つでも存在するものでございますなら、それはすでに今ここに存在しているもの、われわれが毎日そこに住んでおり、またわれわれがともにいることによって形づくっているこの地獄でございます。これに苦しまずにいる方法は二つございます。第一のものは多くの人々には容易(たやす)いものでございます、すなわち地獄を受け容れその一部となってそれが目に入らなくなるようになることでございます。第二は危険なものであり不断の注意と明敏さを要求いたします、すなわち地獄のただ中にあってなおだれが、また何が地獄ではないか努めて見分けられるようになり、それを永続させ、それに拡がりを与えることができるようになることでございます。」」




こちらもご参照ください:

マルコ・ポーロ 『完訳 東方見聞録 1』 愛宕松男 訳注 (平凡社ライブラリー)







































































































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