中野美代子/武田雅哉 編訳 『世紀末中国のかわら版』 (中公文庫)

中野美代子/武田雅哉 編訳 
『世紀末中国のかわら版
― 絵入新聞『点石斎画報』の世界』
 
中公文庫 な 35-3

中央公論新社
1999年3月3日 印刷
1999年3月18日 発行
329p
文庫判 並装 カバー
定価876円+税
カバーデザイン: 菊地信義


「本書は『世紀末中国のかわら版 絵入新聞『点石斎画報』の世界』(一九八九年二月 福武書店刊)に大幅な加筆を施したものです。」



本書「凡例」より:

「本書は清朝の末期に刊行された画報『点石斎画報』(一八八四~九六)を抄訳したものである。」
「『点石斎画報』の絵は全部で四千点以上をかぞえるが、本書ではそのうち八十二点を選択し、(中略)五つのジャンルに分類した。」
「本書の方針として、原文の逐語訳は採らず、意訳につとめた。(中略)タイトルも原題の訳ではなく、訳者が付けたものである。」



本書「あとがき」(中野美代子)より:

「本書は、武田雅哉君の企画、進行、そして私への叱咤によって成った。(中略)本書の半ばは担当せねばならない道理であるが、私の事情によって五分の一ほどしか担当していない。」


本書「文庫版へのあとがき」(武田雅哉)より:

「このたびの文庫化にあたっては、巻頭の解説を大幅に書き直したほか、本文には若干の訂正を加えるにとどめた。」


本文中図版(モノクロ)多数。


中野美代子 世紀末中国のかわら版 01


帯文:

「清朝滅亡前夜、西洋近代文明に触れた庶民の奔放な想像力が生んだ驚異の〈世界図鑑〉」


カバー裏文:

「一八八四年、上海で創刊された絵入新聞『点石斎画報』は、大衆への報道・娯楽紙として、飛ぶように売れたと当時の記録は語る。終刊まで十四年にわたって描かれた四千数百点にのぼる絵と、そこに付された文とは、初めて西洋近代文明に触れた清朝末期の中国人の奔放な想像力が生んだ、驚異と興奮と誤解の渦巻く〈世界図鑑〉である。百年前、彼らは何を幻視したのか? 美術史、文学史、科学史、社会風俗史……あらゆる角度からの発掘を待っている宝の山、〈『点石斎画報』学〉への扉が、いま開かれる!」


目次:

凡例
ゾウを想え――清末人の〈世界図鑑〉を読むために (武田)

第一章 洞窟をくぐり抜けたら世紀末 
 バトル・フィールドをフォーカスせよ
 呉淞戦線、異状なし
 気をつけよう! 列車事故
 屈辱のロードローラー
 人か鬼か? 纏足の危機
 母よあなたは強かった
 上海の雪まつり 雪だるまの内乱
 おまるとお尻のスクランブル
 妖怪オン・パレード
 トラの衣を借る……
 霊幻道士もたじたじ ポルターガイスト!
 淫祠邪教を駆逐せよ!
 猟奇! 人食い銭湯の恐怖
 芸者遊びはモダンにいこうぜ!
 チ・ン・ピ・ラ
 なにサッあたいの男よ!
 芸妓いじめもここまできた!

第二章 彼方の国と人びとの風景
 世界は不思議・地球は円い
 股下を失礼! ロードス島の巨人像?
 がんばれ! 青い目のお医者さん
 ヨーロッパ人は競馬がお好き
 美人コンテスト・イン・ジャパン
 君はサーカスを見たか?――空中ブランコは最高!
 君はサーカスを見たか?――ゾウさんも最高!
 大英帝国 大いに震撼す
 天災は忘れたころにやって来る
 彼方の国の摩天楼
 死体縮小の科学
 スコットランド式死体利用法
 『点石斎画報』より――お詫びと訂正

第三章 檻のない動物園 
 さあさあカエルのサーカスだよ!
 ヒョウのいるレストラン
 猪(チョ)ッちゃんが祟るわよ!
 サルの奇計 ワニを宙吊りに 
 オットセイ なぜ鳴くの?
 江中の豚 大いにあばれる
 ありがたや! でっかい魚
 どこから来たの? 海獣さん
 洪水や大海亀に助けられ)
 うちの狆はアヘンがお好き
 うちのサルもアヘンがお好き? (中野)
 うちのサルは草書の名人? (中野)
 塾の先生はおサルさん (中野)
 こわいよ~! バラしても死なない人食いイヌ

第四章 異形のものたちの行進 
 刑場の怪異 イヌに感謝!
 魚頭人身です! 踊り出たボクサー 
 人頭魚身です! 古来のモンスター 
 人食いワニよりこわい人ワニ人を食う 
 闇の左手――てのひらに爆竹を
 怪奇! 呪いのダッチワイフ
 ワニも僕の兄弟だ(一) 誕生
 ワニも僕の兄弟だ(二) 航海
 ワニも僕の兄弟だ(さん) 横死
 恐怖! 古壁妖怪の祟り
 そこのけ、そこのけ 双頭の人が行く
 惨また惨! ボール小僧の涙
 魚の形悪しきは食らわず
 死んでもマージャンやりたいの!
 わ! 異な雄ブタ! 多分ブタだ。ブー! 尾、無いわ!
 怪奇! 妖艶! スッポン美女の恐怖
 猟奇の果てに――嬰児の復讐

第五章 科学と機械の幻想譜
 無残! 電気に燃えつきた仁義ある男
 「魂、買ッちくんねえ」――電気はいかにして作られるか
 新型機関銃を完成せよ!
 黄泉の国へのパスポート
 骨まで見せます! エックス線カメラの驚異
 ジェットコースターはあまくない
 恐るべし新型気球! 未来の空中戦争
 天津の屋根の上に気球は翔ぶ
 シカゴの屋根の上に帆船は翔ぶ
 パリの屋根の上に飛車は翔ぶ
 人知は限りなく――海底を行く卵形潜航艇
 超弩級観覧バス――パリ博へ向けて
 驚異の事業――大英帝国の水底トンネル
 ほんとにだいじょおぶ? 新発明の水中自転車
 走れ! 鉄人蒸気紳士
 エジソン先生の「おしゃべりめざましくん」
 鳥だ! 飛行機だ! 科学鳥人だ!
 スウェン・ヘディン――砂漠の探検隊
 科学の視線を宇宙に向けよ
 ありゃなんだ! 出現! 謎のU・F・O
 嗚呼! 地球最後の日

本書関連地図
点石斎画報関連年表
タイトル対照表

あとがき (中野美代子)
文庫版へのあとがき (武田雅哉)




◆本書より◆


「ゾウを想え」より:

「戦争の報道に始まった『点石斎画報』ではあったが、いま四千数百点の作品の山を眺めてみると、「ありとあらゆるものを描いた」といわざるをえない。市井の瑣末(さまつ)な事件から天下国家の大事まで、妖怪の祟りから新時代のテクノロジーまで。」

「『韓非子(かんぴし)』という紀元前三世紀の本の、以下に引く部分は、ぼくの好きな一節だ。

 人びとは生きているゾウの姿を見ることはめったにない。そこで死んだゾウの骨を手に入れて、ゾウの姿を考えては、生きているゾウを想像する。それゆえ、人びとが頭の中で想いうかべるものを、すべて〈象〉というのだ。(「解老篇」)

 〈想像〉とは〈想象〉、すなわち、ゾウというまだ見ぬ奇獣の姿を想いうかべることだというのである。」
「機械にせよ動物にせよ西洋人にせよ、(中略)絵師たちの描いたものどもは、かれらの想像によるものが、その多くを占めるのである。(中略)絵師たちが描き、万人がこれを見ること。これはそのまま、絵師たちの幻視した〈世界〉の〈かたち〉を、万人が(中略)信ずることにほかならないのではなかろうか。」

「『点石斎画報』という現象は、絵師と、そして画報の読者という、清末人の多くを包含しうるであろう、その時代の幻視者たちによる、大いなる饗宴であった。かれらはみずから「世界はこうなっている」と信じうる一冊の〈世界図鑑〉というテキストを編集し、その読み取りに明け暮れた。すなわち、かれらだけの似て非なる地球に、奇妙な外国の事物を配置したり、奇妙な動物園を経営したり、奇妙な飛翔機械を空中に舞わせたりしたのである。」
「その時代に生きた人間の幻想によって構築された、いまひとつの世界であるとはいえまいか。」




中野美代子 世紀末中国のかわら版 06


「死体縮小の科学」より:

「クーパー先生はアメリカの名医である。彼は死体を縮小する薬品を発明した。体長わずか一尺五寸にまでなり、石のように堅くなって腐ることがない。木箱にいれれば携帯にも便利である。」


中野美代子 世紀末中国のかわら版 02


「スコットランド式死体利用法」より:

「ヨーロッパ人は科学の力を尊び、あらゆる廃物を再利用してしまう。(中略)それは人間の死体にまで及ぶという。死体から油を採っては石鹸(せっけん)を作り、骨を削っては肥料にすべきである。と、これはイギリスはスコットランドの、とある化学士が提唱した説である。」


中野美代子 世紀末中国のかわら版 03


「『点石斎画報』より――お詫びと訂正」より:

「さて、昨年の八月掲載の「死体縮小の科学」、そして十月掲載の「スコットランド式死体利用法」(中略)の記事は、(中略)のちほど調査したところ、事実ではないとのことが判明いたしました。本斎はここにこれを明示し、訂正いたします。」



「惨また惨! ボール小僧の涙」より:

「梧州(ごしゅう)で商売を営む男、たまたま通りかかった見世物小屋に入ってみた。そこに出ていたのはまるまるとした子どもであった。しかも尋常のまるさではない。手足は縮み、耳や鼻はつぶれ、さながらボールのようであった。小屋の主人がこのボール小僧を蹴飛ばすと、彼は地面をころころと転がるのだ。」
「空もうす暗くなったころ、主人は小僧を小屋の奥にあるカゴの中に閉じ込めると、どこかへ行った。
 思うところあった商人、そっとカゴに近づいて声をかけた。「おまえさん仔細(しさ)がありそうだね。話してごらん」。小僧はおびえる様子であたりを見まわすと、目に涙を浮かべながら、こう答えた。「四つの時にさらわれて、かめ の中に閉じ込められたんだ。体が かめ いっぱいになると、やっと かめ を割ってもらった。それからも大きくならないようにといって、食べさせてもらえるのは木の実だけだったよ……」。哀れに思った商人は、小僧に向かってこう言った。「お役人に訴えて、きっとここから出してやろうね」。
 翌朝、商人はふたたび見世物のあったところに来てみた。小屋はあとかたもなく消え失せていた。」




中野美代子 世紀末中国のかわら版 04


「猟奇! 人食い銭湯の恐怖」より。



中野美代子 世紀末中国のかわら版 05


「猟奇の果てに――嬰児の復讐」より。














































































































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