清水俊彦 『ジャズ・オルタナティヴ』

清水俊彦 
『ジャズ・オルタナティヴ』
 

青土社 
1996年11月30日 第1刷印刷
1996年12月20日 第1刷発行
376p
四六判 丸背紙装上製本 カバー
定価2,884円(本体2,800円)
装幀: 戸田ツトム+岡孝治



本文中図版(モノクロ)多数。

駿河屋で注文しておいた古本が届いたので、イタリア文学再読計画の途中ではありますが、中断してそっちをよんでみました。『世界図絵』『世紀末中国のかわら版』『遠景・雀・復活』『鏡と街』そして本書、計3,400円でした。


清水俊彦 ジャズオルタナティヴ


帯文:

「音楽の
永久革命
のために

ニューヨーク新即興派をはじめとする
音楽の新しい実験者たちは、
ジャズの先端を駆け抜け、境界をくい破りながら、
たえず突然変異を遂げて、
われわれの断片化された世界に挑んでいる。
不断にうみだされる最新の動向に耳をそばだて、
そして投げ返された、
43組/71本におよぶクリティック・ノーツ集成。」



帯背:

「変容する
ジャズの前衛」



目次:

はじめに

第1部 From NY downtown scene
 ジョン・ゾーン John Zorn
  ・ふたたび出現しつつある〈呪われた部分の暴力〉
   ジョン・ゾーンのAVANTレーベルと
   その第一作『ヘレティック(異教徒)』について
  ・ロウアー・イースト・サイドのノイズ・メーカーたちが、
   ソニー・クラークに讃辞を呈した。
   ソニー・クラーク・メモリアル・カルテットの『ヴードゥー』について
  ・ジョン・ゾーンの『コブラ』について
  ・ジョン・ゾーンの『スピレーン』『ニューズ・フォー・ルル』のことなど
  ・べらぼうなハードコアが支配する――『スパイvsスパイ』について
  ・ジョン・ゾーンの『ネイキッド・シティ』は
   ネクスト・ウェイヴの先端を行く
  ・ジョン・ゾーンとネイキッド・シティの三枚のアルバムについて
  ・ジョン・ゾーンの『マサダ』をめぐって
 ビル・フリゼール Bill Frisell
  ・〈Tokyo Music Joy '91〉での
   ビル・フリゼールと彼のバンドの演奏は実に刺戟的だった
  ・リリカルな旋律からめくるめく音の塊に炸裂するビル・フリゼールの断言
  ・ビル・フリゼール――
   宙を舞うペダル・スティールの化身から金属的な機銃掃射へ
 ウェイン・ホーヴィッツ Wayne Horvitz
  ・ダウンタウン・シーンの重要人物のひとりである
   ウェイン・ホーヴィッツと彼の音楽について
  ・ニューヨーク・コンポーザーズ・オーケストラとウェイン・ホーヴィッツ
 フレッド・フリス Fred Frith
  ・突然の介入者あるいはたった二人だけの〈オーケストラ〉による
   ロックの解体学――スケルトン・クルー日本公演’83
  ・フレッド・フリスと彼の『ステップ・アクロス・ダ・ボーダー/
   ミュージック・フォー・ザ・フィルム』について
  ・フレッド・フリスとジーナ・パーキンスの近況の一端について
 エリオット・シャープ Elliott Sharp
  ・秩序と無秩序の接点から噴出する音波の混沌が放射する――
   エリオット・シャープの世界
  ・エリオット・シャープは痛烈な美しさで挑んでくる――
   問題は素材が働いているか否かにある
 クリスチャン・マークレイ Christian Marclay
  ・クリスチャン・マークレイのターンテーブル
 ティム・バーン Tim Berne
  ・ミニアチュール
   『アイ・キャント・プット・マイ・フィンガー・オン・イット』
  ・ティム・バーン『ナイス・ヴュー』について
 ローレンス・“ブッチ”・モリス Lorence 'Butch' Morris
  ・ブッチ・モリスのコンダクション――
   狂気と錯乱の王国へと誘いこむ美しさ、そして魂の記録
  ・いま動いている心のサウンド――
   心が夢を見るブッチ・モリスのメタファー
 ヘンリー・スレッギル Henry Threadgill 
  ・ヘンリー・スレッギル・セクステットの『ユー・ノウ・ザ・ナンバー』
  ・ヘンリー・スレッギルのユニット、ヴェリー・ヴェリー・サークル
  ・ヘンリー・スレッギルの『キャリー・ザ・デイ』
 レジー・ワークマン Reggie Workman
  ・レジー・ワークマンの新しいアンサンブルと
   ニッティング・ファクトリーでのそのライヴ・レコーディング
   『イメージズ』について
 チャールズ・ゲイル Charles Gayle
  ・フリー・ジャズは生きている! チャールズ・ゲイルについて
 ジェイムズ・ブラッド・ウルマー James Blood Ulmer
  ・ジェイムズ・ブラッド・ウルマーの
   『ミュージック・リヴェレーション・アンサンブル: ザ・ネイム・オヴ……』
   をめぐって
 N-BASE
  ・ラウンド・アバウトM-BASE
  ・スティーヴ・コールマン&ファイヴ・エレメンツ
   『ザ・タオ・オヴ・マッド・ファット』
  ・グレッグ・オズビー『3Dライフスタイルズ』
  ・ジャン-ポール・ブレリー『ブラッカデリック・ブルー』
 ドン・バイロン Don Byron
  ・ポスト・モダン・ワールドを浮動するドン・バイロンの折衷主義の精神
 ザ・ジャズ・パッセンジャーズ The Jazz Passengers
  ・ザ・ジャズ・パッセンジャーズの
   『ライヴ・アット・ザ・ニッティング・ファクトリー』について
 ロイ・ナサンソン/アンソニー・コールマン Roy Nathanson / Anthony Coleman
  ・フリー・サンプル――
   ロイ・ナサンソンとアンソニー・コールマンの機知に富んだ企て
 ユニヴァーサル・コングレス・オヴ Universal Congress Of
  ・ハーモロディック・パンクとユニヴァーサル・コングレス・オヴの新作
 ボブ・オスタータグ Bob Ostertag
  ・ボブ・オスタータグのゲイ・ミュージック
 トーマス・チェイピン Thomas Chapin
  ・トーマス・チェイピンの『アニマ』について
 マーティ・アーリック Marty Ehrlic
  ・暗い響きを持つものには“魔力”がある――
   マーティ・アーリックと彼のダーク・ウッズ・アンサンブル
 マイラ・メルフォード Myra Melford
  ・広範な評価を獲得しつつある
   マイラ・メルフォードと彼女のトリオ・アルバム
   『アライヴ・イン・ザ・ハウス・オヴ・セインツ』について
  ・独創的なピアニスト、マイラ・メルフォード
   彼女の新作『マイラ・メルフォード・エクステンデッド・アンサンブル: イーヴン・ザ・サウンド・シャイン』について
 マリリン・クリスペル Marilyn Crispell
  ・マリリン・クリスペルに注目しよう
 ブランダン・ロス Brandon Ross
  ・ジャズの戦士: ブランダン・ロスはどうしているのか?

第2部 freedom principle
 サン・ラ Sun Ra
  ・サン・ラ・アーケストラ『ライヴ・フロム・サウンドスケイプ』について
  ・太陽系/サン・ラにまつわるエピソード――
   “これがわれわれの場所だ”
 オーネット・コールマン Ornette Coleman
  ・オーネット・コールマンの『イン・オール・ランゲージズ』について
  ・オーネット・コールマンの『トーン・ダイヤリング』について
 セシル・テイラー Cecil Taylor
  ・セシル・テイラーの新しいユニットのすばらしさと
   詩の朗誦の意味深長さについて
  ・ベルリンのセシル・テイラー
 アンソニー・ブラクストン Anthony Braxton
  ・アンソニー・ブラクストンがモンクの六曲を演奏した
  ・アンソニー・ブラクストン『タウン・ホール1972』CD化によせて
 ジョセフ・ジャーマン Joseph Jarman
  ・ジョセフ・ジャーマンの『ポエム・ソング』
 ハル・ラッセル Hal Russell
  ・シカゴのジャズの反逆児ハル・ラッセルの生涯と時代と音楽
   『ハル・ラッセルNRGアンサンブル/ライヴ』
 スティーヴ・レイシー Steve Lacy
  ・スティーヴ・レイシーのスウィート・ベイジルでのライヴ録音について
 ポール・ブレイ Paul Bley
  ・ポール・ブレイの『ハンズ・オン』について
 ワールド・サキソフォン・カルテット World Saxophone Quartet
  ・ワールド・サキソフォン・カルテット&アフリカン・ドラムス
   『メタモアフォシス』
 ジュリアス・ヘンフィル Julius Hemphil
  ・ジュリアス・ヘンフィルと彼の二枚の新作について
 デイヴィッド・マレイ David Murray
  ・デイヴィッド・マレイのオクテット・アルバム
  ・デイヴィッド・マレイ・ビッグ・バンド

第3部 the forever bad blues
 ラ・モンテ・ヤング La Monte Young
  ・ラ・モンテ・ヤング/ザ・フォーエヴァー・バッド・ブルース・バンド
   『ヤングス・ドリアン・ブルース・インG』
 テリー・ライリー/クロノス・カルテット Terry Reily / Kronos Quartet
  ・テリー・ライリー/クロノス・カルテット
   『カデンツァ・オン・ザ・ナイト・プレイン』
 フィリップ・グラス Philip Glass
  ・ジョン・ケージ以降――フィリップ・グラスの場合
 アンソニー・デイヴィス Anthony Davis
  ・アンソニー・デイヴィスのオペラ
   『X ザ・ライフ・アンド・タイムズ・オヴ・マルコムX』について
 フランク・ザッパ Frank Zappa
  ・フランク・ザッパのたどった道程についての断片的な考察
 ガイ・クルセヴェック Guy Klucevsek
  ・ガイ・クルセヴェックとポルカの逆襲

第4部 the sound and the fury
 高柳昌行 Masayuki 'Jojo' Takayanagi
  ・響きと怒り――
   高柳昌行〈アクション・ダイレクト〉について
  ・高柳昌行ニュー・ディレクション『ライヴ・インディペンデンス』について
  ・高柳昌行の『ロンリー・ウーマン』のCD化によせて
 阿部薫 Kaoru Abe
  ・阿部薫の『ラストデイト』について
 間章 Aquirax Aida
  ・アナーキーな開かれた音楽の地平へ向けて
   間章『この旅には終りはない』『僕はランチにでかける』

あとがき




◆本書より◆


「はじめに」より:

「本書でとりあげるアーティストならびに彼らがうみだしてきたシーンは、ジャズというただひとつの源泉から発したわけではない。その源流はいくつもあり、流れは紆余曲折を繰り返している。(中略)じつに様々なものを貪り吸収していくジャンルだけにそれを解剖することはきわめてむずかしい。それぞれのミュージシャンやアンサンブルや作品がそれぞれ異なる音楽的ヴォキャブラリーやテクニックや影響(必ずしもつねに音楽的な影響に限られるわけではない)を、すなわち、ひと組みの新たな目的論的可能性をもたらしているのだ。
 こうしたミュージシャンや作曲家をひとつの理論的な傘下に置こうとするのは意味のない試みかもしれない(そうするにはあまりにもスタイル上、理論上の矛盾が多すぎる)が、すでに述べたように、彼らに共通する顕著な特徴をいくつか指摘することはできる。別の見方をすれば、たとえば、民族音楽の深い理解を含めて、百科事典的な音楽の知識を持っていることもそうだし、進んで様々な流派の音楽を並置したり、作曲と即興をミックスしたりするのも特徴的だ。また、新しいテクノロジーや新しいメディアを実験したがること、権威や順応主義に敬意を払わないという健全な態度、さらに、あくまでも商業的な音楽のシステムの外側で活動を続けようとする頑固な決意(もちろんそこにもやはり健全な必然性が伴っている)も共通している。こういう点では、彼らの系図はフラクタルなもの、共通の美学的なルーツから様々な方向に同時に枝を伸ばしている系統樹と見なすことができるだろう。コンピューター・ソフトウェアに侵入する〈トロイの木馬〉ともいうべき手に負えないウィルスみたいに、それは急激に変化し、たえず突然変異を遂げてさらに新しい精妙な子孫を生み出し、われわれの断片化された世界に挑んでいる。」

「ここで強調しておきたかったのは次のようなことである。すなわち、取り上げたミュージシャン、作曲家とその作品をひとつにくくる要素は、いわば共通の態度、姿勢ともいうべきものである。それは文化的美学的規範に対する果敢な挑戦であり、合理主義的言語そのほかの社会的・政治的現実、消費的資本によって要求されながら、個々の人間を歪めていった言説への不信であり、したがってアーティストたるもの、コミュニケーションにおける従来の様式に唾を吐きかけるだけでなく、その自己表出のために必要とされるのは、抽象から脱して感覚と感情と結びついた、より〈正統的〉(本質的)な方法を見出さなければならないという決意である。」



「突然の介入者あるいはたった二人だけの〈オーケストラ〉によるロックの解体学――スケルトン・クルー日本公演’83」より:

「絶対に言わなければならないことは、形はどうであれ、さまざまな冒険をして、とにかく表現されねばならない。あらゆる断絶は、カッコつきの〈始源〉の瞬間に立ち戻る。つまり、どこか隅っこにいる誰かが、(中略)あまりにも整合しすぎるものすべて、自分はなにか別のことを言わなければならないと思わせるものすべて、そういったものすべてに、絶対に我慢できなくなった時にたち帰る。(中略)事物のそういう次元での介入・発言はつねに反抗行為なのだ。」


「クリスチャン・マークレイのターンテーブル」より:

「クリスチャン・マークレイが演奏するのを見ていると、彼のレコードに対する軽蔑の気持ちが伝わってくる。彼は五、六台のターンテーブルの前に立ち、トーンアームを押さえつけてサウンド・システムを通して音をたたき出し、用がすむと肩ごしにレコードを投げ捨てる。文字通り切り刻み、張り合わせたレコードから音のループを紡ぎ出し、レコードにつけた糊から大きなズシンという音を引き出すのだ。マークレイにとって、レコードは不可侵の、固定した、一握りの情報ではなく、常に変化する、操作を受ける側のものである。」
「この偶像に対する攻撃、これが、ジョン・ゾーンなどとともにニューヨーク・ダウンタウン・シーンの中心人物の一人であるマークレイがやっていること、少なくともその一つである。音楽会社の聖なる牛、レコードを取り上げて、それをたたきのめすことによって、彼はレコードを聴いたり、〈演奏〉したりするプロセスをもっと多方向的な、オープンなものにしているのだ。
 レコードが閉じられた、完成された記録ではないと考えているマークレイがやっているようなことをすれば、レコードは恒久的なものではなく、傷がついたり、何かほかの変化が起こることがあるのがわかるだろう。彼はメディアそのものを聴こうとしているのであり――音楽がすべてに優先するという念仏を唱えるのではなくて――メディアをオブジェ(モノ)にしてしまうようなものをつくっているのだ。ラップのDJたちも、やはり普通とは違う姿勢をとっている。彼らはレコードを音楽の完成品だとはみなしてはいない。つまり、(中略)レコードは〈アクティヴな〉かたちで使うことができると考えているのである。
 そのオープンなところがすばらしいと思う。なにしろ、ぼくらは音楽は作曲されるもので、ぼくらの前に差し出されたら、もうそれを変えてはならないという観念を植えつけられて育ってきたのだから……。」
「彼はもとの音楽に対して荒っぽいことをするだけでなく、音楽をエンターテイメントとして使うことを拒否している。(中略)「聴きたいかどうかに関わりなく、ぼくらはエレヴェーターや食料品店やいろんなところで音楽を聞かされている」とマークレイは言う、「音楽はそこにある。公けの存在物の一部として、ぼく自身の一部としてあるんだ。だから、ぼくは自分がやっていることが盗作だとは思わない」と。彼は情報をねじ曲げたり、それをもとにして何かをつくったり、修正したり、ノスタルジーをそそるようなかたちでそれを使ったりするのが好きなのだ。また、受動的な聴き手にとどまるのではなく、それと相互的に関わり合うのも好きなのだ。」





こちらもご参照ください:

清水俊彦 『ジャズ・アヴァンギャルド クロニクル1967-1989』



































































































































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プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー

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