粕谷栄市 『鏡と街』

「どんな理由からか、遠い曇天の街の、その小さな歪んだ部屋に、鉤のようなもので逆さに吊られて、その馬は生きている。」
(粕谷栄市 「部屋のなかの馬」 より)


粕谷栄市 
『鏡と街』
 

思潮社
1992年3月1日 発行
101p
A5判 丸背紙装上製本 カバー
定価2,400円(本体2,330円)
装幀: 芦澤泰偉



本書収録詩42篇のうち、23篇が現代詩文庫の『続・粕谷栄市詩集』に採録されています。


粕谷栄市 鏡と街 01


帯文:

「恐怖と苦痛、狂気と孤独、滑稽と哄笑、冷酷と優情………。病める者、追放された者、閉じてゆく者が実現する世界の多義性を物語るアレゴリカルな幻想の言語。妖しく痛ましくもユーモラスな反世界の詩学。」


目次:


苦痛にあえぐ男の肖像
血だらけの虚無の雄鶏
鏡と街
長靴をはいた男の挨拶
皇帝
英雄
血の帽子屋
罪と罰
病室にて・愛の生活
白鳥
夢の女
詩と夜警
厨房にて
迷路から
半ば潰れて消えかけた顔の男
気球に乗って
老人の話
部屋のなかの馬
犬の精神
跛行
浴室にて
供物
跳びはね男
魔法
満月
スウェデンボルグ氏の手紙
わっ


こんにゃくと夜
らっきょうと昼
死んだ餅屋
曲馬
独房
幻花
厩舎にて
偽虎嘯記
昆虫記
変異論
神罰
安眠
毛銭
へちまと天国
霊験

覚え書き
初出一覧



粕谷栄市 鏡と街 02



◆本書より◆


「苦痛にあえぐ男の肖像」より:

「どんな苦痛が彼を苛んでいるのか、彼の世界の中心に在る透明な青い部屋に、苦痛にあえぐ男は座っている。」
「彼は、椅子に座って、苦痛に歪んだ表情を浮かべるほか、何もできないでいる。」
「外見でしか判断できないのだが、彼が、そのように在ること、そのことが、彼の苦痛の根源であり、より深い苦痛に彼を陥れているように感じられる。
 いずれにせよ、変容は、そして始まっている。」
「もう、直ぐ、炸裂が来るだろう。(中略)彼は、四散して、彼では無い何かになるだろう。金色の椅子のうえで、なまぐさく、血に染まって、驚愕に価する何かになるだろう。」



「血だらけの虚無の雄鶏」より:

「何故、それが、自分にやって来たのか。彼自身にも、それは答えられないだろう。突然、その血だらけの痺れる雄鶏が、そこに現われた理由は。
 一切は、そのまま、進行して、もう誰にもどうすることもできない。」



「鏡と街」より:

「それを知るには、誰もが、血の臭いのする憎悪の夢のなかで、目を開けたまま死んでいる、鶏の首になることが要るかも知れない。」


「皇帝」より:

「それからは、毎日が、殺戮に次ぐ殺戮の日々だ。
 何によって、誰が殺戮されているのか、判らなくなるほどの殺戮の日々だ。」



「迷路から」より:

「全ゆるものごとに、結末があると言うわけではない。
 そして、どんな場合にも、本当に、孤独な日々を生きている人間に起こることには、脈絡がない。」



「跳びはね男」より:

「それは、錯誤かも知れない。だが、どんな他人の夢も理解しようとする優しい人間なら分かるだろう。」


「幻花」より:

「彼にとって、そのほかに、どんな在り方もあり得ないのだ。怖ろしい速度で、終りのない、見知らぬその血の色の空間を、墜落していることのほかは。」


「厩舎にて」より:

「私が、彼を見て、断裂と言うことを考えた途端、彼にそれが始まった。」
「見る間に、彼の顔やからだに、幾筋もの深い裂け目が、現われ、彼は、幾つにも引き裂かれた。骨の見える赤い肉の断片のようなものになって、床に落ちた。」
「私も、そうだったのだと思う。自ら、断裂したのか、そうでないのか、不明だったが、私は意識を失った。」
「ただ、ずっと後になって、私は、本当は、何かの錯誤によって、あの若い男や馬たちが、遙かな厩舎で、私の代りに断裂してくれたのだと、思い出したりしたのだ。」



「へちまと天国」より:

「それにしても、どうして、そこに、一本の大きな青いへちまがぶらさがっていなければならなかったか。
 そのときは、だが、ほんのひとときが永遠で、またその逆でもある、わけのわからない時間を、その男は、ただ、ためいきをつきながら、生きていたのだ。」
「そうでなくても、とても優しいそよかぜが吹いていて、わけのわからない何かが、わけのわからないまま、しょんぼりと、最後に、ぶらさがっていると言うことがあることはあるのだ。」





こちらもご参照ください:

『現代詩文庫 173 続・粕谷栄市詩集』























































































































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