『坂口安吾全集 17』 (ちくま文庫)

「アイツの歌は大ゲサだなア。しかし、調子は天下一品だなア」
(坂口安吾 「柿本人麿」 より)


『坂口安吾全集 17』 
安吾巷談/安吾史譚/安吾下田外史 ほか
ちくま文庫 さ 4-17

筑摩書房
1990年12月4日 第1刷発行
581p 「編集付記」2p
文庫判 並装 カバー
定価1,030円(本体1,000円)
装幀: 安野光雅
カバーデザイン: 横尾忠則
カバー原写真: 濱谷浩



本書「解題」より:

「第十七巻には、『安吾巷談』『安吾史譚』を中心に昭和十三年(一九三八)六月から昭和二十九年(一九五四)五月にかけて発表された巷談に連なる観戦記、ルポルタージュなどのエッセイ二十二篇を発表年代順に収めた。」


新字・新かな。


坂口安吾全集17 01


目次:

囲碁修業
相撲の放送
島原一揆異聞
講談先生
坂口流の将棋観
男女の交際について
観戦記
将棋の鬼
集団見合
本因坊・呉清源十番碁観戦記
呉清源論
私の碁
文人囲碁会
碁にも名人戦つくれ
安吾巷談
 麻薬・自殺・宗教
 天光光女女史の場合
 野坂中尉と中西伍長
 今日われ競輪す
 湯の町エレジー
 東京ジャングル探検
 熱海復興
 ストリップ罵倒
 田園ハレム
 世界新記録病
 教祖展覧会
 巷談師退場
安吾史譚
 天草四郎
 道鏡童子
 柿本人麿
 直江山城守
 勝夢酔
 小西行長
 源頼朝
チャタレイ傍聴記
見事な整理
親が捨てられる世相
世紀の死闘
安吾武者修業 馬庭念流訪問記
安吾下田外史

解説 (島田雅彦)
解題 (関井光男)



坂口安吾全集17 02



◆本書より◆


「相撲の放送」より:

「ベルリンのオリンピックの放送で、女史平泳の予選の時、支那のヤン嬢(多分そういう名であったと思うが)がひどく派手な緑の水着をきて、外の選手がみんな水へ飛び込んでウォームアップをしているのに、このお嬢さんだけはどこを風が吹くかというようにスタート台に悠々腰を下して水面を眺めているだけである。そういう放送があった。名放送である。どうして、こういう事実をとらえて目のない聴衆に伝えてくれないのであろうか。
 ヤン嬢のように強烈な個性を示した好都合の場合ばかりはあるまいが、とにかく、どの競技者にも個性がある筈(はず)だ。が、放送は個性がきこえてこないのだ。個性をとらえるとは、事実をとらえることだ。どのような事実をとらえるか。これこそ技術者の一生を賭けた重大問題の筈である。小説家の小説に於ける場合に於ても。」



「男女の交際について」より:

「どんな兇悪な犯罪でも、ただれた愛慾でも、我々がもし良く考える心をもつなら必ず自分の心にも同じ犯罪者の血を見出す筈で、いかなる神の子といえども変りはない。キリストも釈迦(しゃか)もそうで、いかなる犯罪も悪徳も犯しかねない罪の子という自覚から生れてきたものがその宗教である。(中略)全ての人が犯罪者となり狂人となる素質を持っており、外部条件によって、そうなる。我々は人をそしり、笑う前に、己れを知り、そして外部条件を考えることを知らねばならぬ。」
「まことの知識というものは、先ず内省から始まるもので、そこから、如何に生くべきかという問題がはじまる。日本には内省から始まる知識というものが殆どなく、命令と服従、禁止と許可、鋳型の中で育てられて疑ることも知らず、自分で考えるということを知らないばかりでなく、それがむしろ悪徳とせられていた。」



「麻薬・自殺・宗教」より:

「織田作之助はヒロポン注射が得意で、酒席で、にわかに腕をまくりあげてヒロポンをうつ。当時の流行の尖端だから、ひとつは見栄(みえ)だろう。今のように猫もシャクシもやるようになっては、彼もやる気がしなかったかも知れぬ。」

「いったい、この世に精神病者でないものが実在するか、というと、これはむずかしい問題で、実在しないと云う方が正しいかも知れない。程度の問題だからだ。すべての人間が犯罪者でありうるように、精神病者でありうる。」
「私は日本人は特に精神病の発病し易い傾向にある人種だと思うが、どうだろう。」



「東京ジャングル探検」より:

「わが経来りし人生を回想するという年でもないが、子供のころは類例稀(ま)れな暴れん坊で、親を泣かせ、先生を泣かせ、郷里の中学を追いだされて上京しても、入れてくれる学校を探すのに苦労した。私が苦労したわけではないが、親馬鹿というもので、私はだいたい学校というものにメッタに顔をださなかった。たまに顔をだすと、たちまち、先生と追いつ追われつの活躍となり、しかし結局先生を組み伏せるのは私の方であるし、当人の身にもツライことで、たのしいものではない。
 追いだされるのは仕方がない。当人の身にはホッとして、これで悪縁がきれた、まったくである。不良少年というものは、行きがかりのものだ。当人が誰よりツライのである。」

「私の一生は不逞無頼(ふていぶらい)の一生で、不良少年、不良青年、不良中年、まことに、どうも、当人がヒイキ目に見てもロクでもない一生であった。それでも性来、徒党をくむことを甚しく厭(い)み嫌ったために、博徒ギャングの群にも共産党にも身を投ずることがなかった。
 云い換えれば、私の一生は孤独の一生であり、常に傍観者、又、弥次馬の一生であった。」

「どうも日本人というものは元々一般庶民たることに適していて、特権を持たせると鬼畜低能となる。」























































































関連記事
スポンサーサイト
プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

最近の記事
カテゴリー
ブログ内検索
リンク
フリーエリア
netakiri nekotaroの最近読んだ本