リルケ 『神さまの話』 谷友幸 訳 (新潮文庫)

「「どんな死にかたをしたのでしょうか」こう尋ねるエヴァルトの声は、低く、やや嗄(しわが)れていました。「水死したのです。とある、深い、森閑とした沼に、身を投じて。そのとき、水面には、幾重にも、波紋が生じ、ゆるやかに拡(ひろ)がって、睡蓮(すいれん)のしたまで伸びてゆくと、水に浮ぶこの白い花が、いっせいに、ゆらぎました」
 「それも、やっぱり、話なんですか」エヴァルトは、僕の言葉のあとにふかまる沈黙に気圧(けお)されまいとして、そう、言いました。「いいえ」と、僕は、答えました。「ひとつの感情なんです」」

(リルケ 「正義のうた」 より)


リルケ 
『神さまの話』 
谷友幸 訳
 
新潮文庫 リ-1-4 

新潮社
昭和28年6月10日 発行
昭和48年11月10日 22刷改版
平成5年7月5日 46刷
176p
文庫判 並装 カバー
定価320円(本体311円)
カバー: 司修


Title: Geschichten vom lieben Gott
Author: Rainer Maria Rilke



リルケ 神さまの話


カバー裏文:

「2カ月にわたるロシアの旅を通じて敬虔で素朴な民衆の姿に感動した若きリルケは、やがてその多くの収穫の中から、神という一本の糸で貫かれた13の珠玉から成る「神さまの話」を書きあげた。これは、子供のための話を大人に話して聞かせる形式をとったもので、神に対する詩人の感受性があふれているとともに、リルケ独自の敬虔な思想をまだ萌芽のまま宿している、貴重な名散文である。」


目次:

神さまのお手についての物語
見知らぬひと
神さまは いかなる思召しで この世に貧しいひとびとをお造りになったか
どうしてロシアへ裏切りなどがやってきたか
ティモファイ老人が 歌いつつ世を去ったこと
正義のうた
ヴェニスのユダヤ人街で拾ったある場景
石に耳を傾けるひとについて
指甲が神さまとなるにいたったこと
死についての物語ならびに筆者不明の追記
切なる要望にもとづいて生れた協会
乞食と気位たかい少女
闇にきかせた話

解説 (谷友幸)




◆本書より◆


「正義のうた」より:

「でも、死人といったところで、年久しく解決に悩んできた事柄について、冷静に、思い澄ましてみるために、真剣になって、浮世を捨て、ひとり閉じこもっているひとと、いったい、どこが違っているのでしょうか。浮世のひとびとに立ち交っていては、主への祈りだって、思い出すことはできません。ましてや、言葉のなかではなくて、おそらくは出来事のなかに成り立つはずの、もっと隠微な、別種の関係にいたっては、思いもよらぬことです。ですからこそ、ひとり離れて、どこか、近寄りがたい静寂のなかへ、はいってゆかねばならないのでしょう。死人とは、おそらく、生について沈思熟考するために、身を退(の)いてしまったひとたちだと、思います」


























































































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ひとでなしの猫

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ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

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好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

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