ロジェ・カイヨワ 『反対称』 塚崎幹夫 訳 (新装版)

ロジェ・カイヨワ 
『反対称
― 右と左の弁証法』 
塚崎幹夫 訳


思索社
1991年1月5日 印刷
1991年1月25日 発行
152p 口絵(モノクロ)1葉
四六判 丸背紙装上製本 カバー
定価1,900円(本体1,845円)
装丁: 高麗隆彦



本書「訳者あとがき」より:

「本書は、Roger Caillois; La dissymétrie, 1973, Gallimard の全訳である。」


カイヨワ 反対称 01


目次:

日本の読者に (ロジェ・カイヨワ 1975年)
訳者まえがき

序言

Ⅰ 問題の提起
Ⅱ 厳密な意味での対称について
Ⅲ 反対称の進化論
Ⅳ 宇宙に遍在する反対称
Ⅴ 右と左
Ⅵ 逆エントロピーの働き

補遺
 社会と芸術における反対称の役割について

原注および訳注
訳者あとがき (1975年)
新版への追記 (1990年)



カイヨワ 反対称 02


◆本書より◆


「問題の提起」より:

「ある一点についてはすべてを知っているが、他についてはほとんど何も知らないというのは、あまり良い方法だとはいえません。この方法では、小さな断片的な区域を、全体の文脈のなかに正しく位置づけることさえできません。とくに、文脈が遠くへだたり、展望が思いがけないものであるときには、まったく不可能だといえます。そのような思いがけない展望のなかにこそ、問題を解くかぎが秘められているのに、です。諸科学を対角線で結んで対話させる対角線の科学(シアンス・ディアゴナル)が、生まれなくてはならない理由がここにあるのです。(中略)他から切り離されている場合には彼らを途方にくれさせる規則はずれの現象も、結びつけられると、互いに他を解き明かすかぎとなるかも知れません。」
「諸科学を対角線で結んで対話させるというこの着想の対象となるものは、現在至上命令になっている分離の原則の犠牲になっている諸研究です。ばらばらの分野でそれぞれ孤立して進められる結果、互いに結びつく点がありうるとは、一度も考えられたことはなかったと思われる諸研究です。これらの分野が異質で不調和だというのは、いまはそう見えているというだけのことです。しかし、いまさら申しあげるまでもないことですが、科学は見かけを拒否するところから、見かけの後ろに隠された、深い同一性を探究しようとするところから始まります。」

「非対称(アシメトリ)とは、平衡の、この場合は対称の、作り出される前の状態をいう。反対称(ディシメトリ)とは、平衡あるいは対称の破壊された後の状態をさす。反対称から推測される、あるいは引き出される結論は、秩序の否定ということです。すなわち、既成の秩序への将来における干渉、必要になった壊乱、あるいは計画的な変更という性格を、反対称は明らかにもっているように見えます。」



「宇宙に遍在する反対称」より:

「さきに、反対称は、行動の自由を奪う重力に支配されながら、絶えずこの力をあざむいて、少しずつ困難な道を切り開いていく革新である、と申しました。しかし、反対称は単にそれだけのものではないことが、いまや明らかになりました。反対称は、極限の粒子の繊細な織物のなかに、すでに存在していたことがわかったのです。そして、反対称を含んだこの繊細な織物の発展こそが、世界の多様な豊かさをもたらしたのです。最初から、反対称は世界の本質に結びついたものでした。(中略)反対称は、宇宙の全体の輪郭を支配していると同時に、その内部の構造のなかにもはっきりと姿を現わしているのだからです。」


「逆エントロピーの働き」より:

「Ⅰ 均質で等方性のすべての媒質は、対称をまったく持たないと定義することもできるし、同様に、特権的な軸や中心や面が存在しない、無限の潜在的な対称を持っていると定義することもできる。この二つの定義の意味しているものは同じで、両者に違いはない。正確にいって、無対称(アシメトリ)とはこのような状態を指す。
Ⅱ すべての無対称的(アシメトリック)な状態は自然に安定の方向に向かう。安定は平衡を生み、平衡は一つあるいはもっと多くの有効な対称を発生させる。
Ⅲ 確立された完全な対称のなかに、部分的で、偶発性のものでない破壊が突如として生ずることがある。この破壊はすでに形成されている平衡を複雑にする。このような破壊が厳密な意味での反対称(ディシメトリ)である。反対称は、結果として、反対称が生じた構造あるいは組織を豊かにする。すなわち、これらに新しい特性を与え、より高度の組織の水準に移行させる。

 熱力学の第二法則を補う、これと対になるものがなかったら、宇宙は絶対的で終局的な、緊張のない平衡の状態に沈み込んでいってしまうことになります。」
「しかしながら、これに対抗する力のまったく同じように静かで着実な活動の存在を、だれもが確かであると認めています。この力の作用の結果、統計学の予測が規則的にくつがえされています。すなわち、第二法則に対立する、宇宙の組織化と複雑化が増大しているという原理が認められるのです。それは常により多くの選択、創意、ためらい、自由を可能にする原理です。この原理は普通負のエントロピー、あるいはネガントロピーと呼ばれています。私自身は、逆エントロピーと名づけたほうが良いと思っています。」
「ところで、逆エントロピーは熱力学の第二法則に反する原理だと申しましたが、実際は見かけだけのことにすぎません。エネルギーの散逸は絶えず起こっています。このエネルギーの散逸は非常にロスの多いもので、回路の外に流れ、放置されているエネルギーも少なくありません。反対称は、この分散したすべてのエネルギーを吸収し、この力を一つにまとめるのです。反対称はこうして、いくつかの明確にしぼられた決定的な点で、まれに全体の流れを逆にすることに成功し、逆エントロピーを実現するのです。」



















































































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