川崎寿彦 『薔薇をして語らしめよ』

「人類は同じ祖型をわけもつ。しかも人類のなかで同一文明に属する者は、同じ象徴の言語を語るのだ。」
(川崎寿彦 「バラをして語らしめよ」 より)


川崎寿彦 
『薔薇をして語らしめよ
― 空間表象の文学』


名古屋大学出版会
1991年6月25日 初版第1刷発行
iii 348p 人名索引iv
A5判 丸背紙装上製本 カバー
定価5,665円(本体5,500円)
デザイン: 石川九楊
カバー表: 『バラ物語』挿絵(大英博物館蔵)
カバー裏: ミスター・リンカーン(二口善雄画『ばら花譜』平凡社、1983年より)



本書「編者あとがき」より:

「本書は、故川崎寿彦教授の多くの論文のなかから主に〈鍵暗喩(キー・メタファー)〉の分析によって作品の意味を想像力との関係から解明しようとした一二篇を収録したものである。」


本書は買い忘れていたのでアマゾンマケプレで最安値(600円+送料)のを注文しておいたのが届いたのでよんでみました。冒頭の「バラをして語らしめよ」はフォークナー「A Rose for Emily」における「Rose (バラ)」の象徴的な意味について論じています。

本文中(「静止点としての一七世紀カントリー・ハウス」)図版(モノクロ)9点。


川崎寿彦 薔薇をして語らしめよ


目次 (初出):

第Ⅰ部 空間表象の文学
 バラをして語らしめよ (『名古屋大学文学部研究論集』73 1978年)
 静止点としての一七世紀カントリー・ハウス (『名古屋大学文学部研究論集』103 1989年)

第Ⅱ部 一七世紀形而上詩人論
 ダンの『第一、第二周年追悼詩』――Occasional Poetry としての考察 (原題「Donne の Anniversaries - Occasional Poetry としての考察」/『名古屋大学教養部紀要』第4輯 1960年)
 マーヴェルの「囲われた庭」 (原題「MARVELL の「囲われた庭」/『英文学研究』第37巻第2 1961年)
 一七世紀の〈小さな世界〉――ある崩壊の過程 (『名古屋大学教養部紀要』第8輯 1964年)
 形而上詩と錬金術――ジョンソンとダンを比較して (原題「形而上詩と錬金術――Jonson と Donne を比較して」/『英文学研究』第43巻第1 1966年)
 ヘンリー・ヴォーンの自然神秘主義 (ピーター・ミルワード/石井正之助監修『形而上詩と瞑想詩(ルネッサンス双書3)』 荒竹出版、1976年)
 形而上詩人とミルトン (『名古屋大学文学部論集』82 1982年)

第Ⅲ部 比較のなかの日本文学
 世界詩のなかの芭蕉俳句 (小西甚一編『風雅のまこと(芭蕉の本 第7巻)』 角川書店、1970年)
 漱石における東洋と西洋 (『東洋文化』第20号 1976年)
 あいまいさの効果――『雪国』についての一考察 (林大/林四郎/森岡健二編『作文の条件(現代作文講座3)』 明治書院、1977年)
 『山の音』の〈家〉と〈人〉――『ハワーズ・エンド邸』との比較から始めて (平川祐弘/鶴田欣也編『川端康成『山の音』研究』 明治書院、1985年)

編者あとがき (山田耕士/磯野守彦/神尾美津雄/鈴木俊次)
初出一覧
人名索引




◆本書より◆


「バラをして語らしめよ」より:

「アダムとイヴはエデンという名の〈庭〉から追放されて〈荒野〉をさまよう身となった。以来人類は、始源の至福の〈庭〉への絶えざるノスタルジアと、終末に期待される天国という名の新しい〈庭〉へのはげしい渇仰との間に揺れ動きながら、〈荒野〉に生きてきたといえる。〈庭〉と〈荒野〉とは、だから、人類の全体験にかかわる根源的なタイプとアンチタイプだった。
 エリオットが『荒地』を発表したのが一九二二年、『四つの四重奏』を完成したのが一九四三年である。その二〇年余の思索の歩みは、大まかにいえば〈荒地〉から〈バラ園〉への歩みであったといえよう。しかしわれわれはその〈荒地〉の前にあった始源の〈バラ園〉が、有した意味、果した機能についても、忘れてはならない。すなわちエリオットは自分の幼児期性体験の空間を、彼個人にとってのエデン的〈バラ園〉として把握し、その「経験」を「新しいかたちで回復する」ことをもって、〈荒野〉脱出のための踏切り板にしようとこころみたからである。
 これは深くダンテ的なことでもあった。(中略)〈暗い森〉が、〈荒地〉と並んで、〈バラ園〉のアンチタイプであったことは、象徴言語の体系の全体を見渡しつつ理解しておいてよい事柄であろう。」



「ヘンリー・ヴォーンの自然神秘主義」より:

「ヴォーンの自然神秘主義には、一七世紀瞑想詩の一つの中心であった、聖ボナヴェントゥーラ以来の〈自然の本〉(the Book of Nature)または〈被造物の本〉(the Book of Creatures)の伝統が流れている。そこでは被造物は「神の聖なる象形文字」すなわち神の人間に対する啓示の手段とみなされ、したがって〈被造物の本〉は〈聖書〉と並んで、キリスト教徒が敬虔に読まねばならぬ二冊の本となるのである。なかんずく一七世紀中期にあっては、清教徒が「聖書のみ」(sola scriptura)を主張する立場をとったことと対照的に、被造物の本を熟視しようとする立場は、英国国教徒の瞑想の重要な特徴となったのであった。
 ヴォーンの詩の多くは、この被造物の本の伝統と、直接、間接にかかわっているのであるが、なかでも彼の瞑想詩の代表作の一つである「ある日、時間つぶしに散歩をしたら」(“I walkt the other day (to spend my hour)”)などは、自然の事物の一つ一つを見て回る詩人の歩みが、被造物の本を一ページずつ読んでいく読者の行為を暗示するように書かれている。」





こちらもご参照下さい:

ヤコブセン 『ここに薔薇ありせば 他五篇』 矢崎源九郎 訳 (岩波文庫)
W・B・イェイツ 『神秘の薔薇』 井村君江+大久保直幹 訳 (新装版)
ホルヘ・ルイス・ボルヘス 『永遠の薔薇・鉄の貨幣』 鼓直・他 訳
佐藤春夫 『病める薔薇』 天佑社版 (複刻)
中井英夫 『薔薇幻視』 (平凡社カラー新書)
アレクサンドル・ブローク 『薔薇と十字架』 小平武・鷲巣繁男 訳 (平凡社ライブラリー)
フランセス・イエイツ 『薔薇十字の覚醒』 山下知夫 訳
若桑みどり 『薔薇のイコノロジー』
葛原妙子 第四歌集 『薔薇窓』
ルイージ・マレルバ 『皇帝のバラ』 千種堅 訳
大場秀章 『バラの誕生』 (中公新書)
Pierre-Joseph Redoute 『The Roses : The Complete Plates』 (Taschen)
















































































関連記事
スポンサーサイト
プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

最近の記事
カテゴリー
ブログ内検索
リンク
フリーエリア
netakiri nekotaroの最近読んだ本