高津春繁 『ギリシア神話』 (岩波新書)

「彼はパーンやサテュロスや、シーレーノスなどの半神半獣の者たちや、(中略)踊り狂うマイナスたち(中略)を引き従えて山野をさ迷う。」
(高津春繁 『ギリシア神話』 より)


高津春繁 
『ギリシア神話』
 
岩波新書 青版 547

岩波書店
1965年1月22日 第1刷発行
1979年2月10日 第21刷発行
206p 目次iii
新書判 並装
定価320円



本書「あとがき」より:

「カットは主としてギリシア古瓶上の絵をもとにして中西立太氏にお願いした。」


本文中図版(カット)多数。地図1点。


高津春繁 ギリシア神話 01


目次:

一 ギリシア神話と英雄伝説の成立
二 ギリシアの神々
三 英雄伝説(Ⅰ)
 カリュドーンの猪狩
 メラムプース一家の話
 アルゴナウテースたちの遠征
 ペルセウス物語
 ヘーラクレース物語
 テーセウス物語
四 英雄伝説(Ⅱ)
 テーバイ物語
 トロイエー物語

地図・系譜
あとがき



高津春繁 ギリシア神話 02



◆本書より◆


「一 ギリシア神話と英雄伝説の成立」より:

「このようにして、一方では英雄諸家の系譜の整理調整が試みられたけれども、本来別々に発達した神話や英雄伝説に相互的な統一がないのは当然である。」
「神々の場合も同じで、本来あちらこちらで崇拝されていた神々を一つに纏めたり、ある一種の神に統合したりした上に、全く関係のない神々をオリュムポスの一族に纏めたために、相互にうまく合わない点が数多くあるのはやむを得ない。古代のギリシア人は酒神ディオニューソスや詩の女神のような神々の源を北方のトラーキアに求めているが、これらの新しい神々もやがて歴史時代に完全にギリシア化されている。(中略)これらの詩女神はまた古くは九人ではなくて、三人と言われ、優雅の女神である三人のカリスや運命(モイラ)の三女神と密接に関聯していた。
 これらの渾沌とした神々や英雄の世界の整理はヘーシオドスに始まり、サモスの人アシオスに継承された。彼の詩は相当に多くの引用断片によって知られるが、いずれも系譜学的であったらしい。
 この努力は、その後、シューロスの人ペレキューデース(前六世紀末―五世紀初)やアルゴスの人アクーシラーオスのような散文作家に受けつがれ、この二人は古代に於て神話伝説の系譜上の権威と目されていた。こうして英雄世界は系譜を与えられ、それはアポロドーロス(前一世紀)の名に帰せられている『ギリシア神話』(後一―二世紀の作)が伝えているような、諸家の系譜を根幹とする厖大な伝説圏に纏められ、詳しい系譜が作り上げられたが、しかし、やはり本来の相互矛盾は根本的には解決されていない。
 神々の姿にしても、やはり時代と共に大きく変っている。古い時代には、エロースは立派な大人の姿で描かれていたのに、それが段々と髯のない若者から子供になり、終に赤ん坊みたいな姿となった。ヘルメースも髯ある大人から美しい髯のない青年に変貌した。ホメーロスでは、何か恐ろしいデーモニッシュな神であったアポローンも、前六世紀には光明と理性の、またデルポイの神託の中心の神となった。」
「以上に述べたように、ギリシアの神々と英雄の物語は、われわれが乏しい資料でもあとづけることが出来る位に新しく発達し、新しい解釈が次々にほどこされ、やがて定着した。神々の姿や機能についても同じである。ギリシアの神々は全智全能の唯一神ではなくて、大勢の神がゼウスの下に一大家族を形成し、各〃多くの機能をもっている。(中略)従って同じ機能を二人以上の神が異なる面で受けもっていることが屡〃ある。(中略)これは神々の由来や崇拝される場所によっても相違する。各〃の都市や村が夫々同じ神の名の下に多少異なる神を祭っているからである。同じ穀物の女神デーメーテールも、アッティカのエレウシースとペロポネーソスのリュコシュラでは性質も神話も違うのである。しかし普通、デーメーテールの話は、エレウシースの秘教の伝える物語で、『ホメーロス讃歌』の中に歌われているものが中心、本筋とされている。
 従って、以下に紹介する神話や伝説も、勢いエクレクティクなものである。それは時々の名高い著作によって定着された物語の姿である。流動しているものの、ある時に与えられた姿である。本来ならば、これらの移り変った様を与えるべきであろうが、それは(中略)紙幅の面からも不可能である。本書では、従って、普通に行われている筋を、歴史的な解釈をあまり加えないで、話すことにした。」



「二 ギリシアの神々」より:

「成長したディオニューソスは葡萄の木を発見した。ヘーラーが彼を狂わせたので、彼はエジプトとシリアをさ迷い、(中略)後、プリュギアの大地女神キュベレーの所で(中略)潔められ、その秘教を学んだ。その後彼はトラーキアに旅し、エードーノス人の王リュクールゴスが彼を侮辱し追放した。(中略)神はリュクールゴスを狂わしめ、王は自分の子を、葡萄の木の枝をかっている積りで、斧で打ち殺し、その身体のはしばしを切り取った後、正気にかえった。彼の領土は不作に見舞われ、神は彼が死ねば実るであろうとの神託を下したので、人民は彼を馬に縛りつけて八つ裂きにした。ディオニューソスはまたテーバイに来て、その婦人たちに家を棄ててキタイローン山中で乱舞せしめた。これを阻止しようとしたペンテウス王を、母のアガウエーや姉妹たちをはじめとして、彼を野獣と思った女たちが狂気のうちにその四肢を引き裂いて殺した。ディオニューソスはテーバイの人たちに自分が神であることを示した後、アルゴスに来た。アルゴス人が彼を敬わないので、女たちを狂わせ、彼女らは山中で乳呑子の肉をくらったが、予言者メラムプースが女たちを治療した。同じように、オルコメノス王ミニュアースの三人の娘がこの神をうけ入れなかったために、狂気となり、子供を八つ裂きにした話がある。次いで神はアッティカのイーカリアーで彼を歓待したイーカリオスに葡萄の木を授けた。イーカリオスは隣人に葡萄酒を供したところ、酔った彼らは毒を飲まされたと思い、彼を殺した。娘のエーリゴネーは犬のマイラに導かれて父の死体を発見、そこで縊れて死んだ。その後神はナクソス島へ渡ろうとして、テュレーニア人の海賊船に乗った。彼らは神を奴隷に売ろうとして小アジアに急いだが、神は帆柱と櫂を蛇に変え、船を蔦と笛の音でみたし、彼らは狂って海に飛び込み、海豚となった。
 ディオニューソスは冥界から母を連れ戻すべく、冥府に降り、セメレーを上界に連れて来て、テュオーネーという名を与えて天界に置いた。ディオニューソスは冥府で母親と交換にハーデースにミルトの木を譲ったが、これはディオニューソスの秘教会で人々がこの花の冠を戴く縁起である。」


















































































































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