『オデュッセイア』 呉茂一 訳 (集英社版 世界文学全集 1)

「オデュッセウスはひどい着物を肌にまとって、みすぼらしくやつれはてた乞食の、しかも老いぼれと見える姿で杖をつきながら、豚飼いに連れられて来たのでした、まったく汚いひどい衣を肌に着ていたものでした。」
(『オデュッセイア』 より)


『ホメーロス 
オデュッセイア』 
呉茂一 訳

集英社版 世界文学全集 1

集英社 
1979年3月25日 印刷
1979年4月25日 発行
388p 口絵(モノクロ)1葉
四六判 丸背紙装上製本 貼函 
装幀: 坂野豊



散文訳です。
本書はヤフオクで落札(100円+送料)しておいたのをよんでみました。「定価は帯に表示されています」とありますが帯はついていなかったので定価は不明です(たぶん980円)。本来は函プラカバー付きです。


オデュッセイア 世界の文学 01


目次:

オデュッセイア
 第I巻 諸神の会議、アテーネー女神、テーレマコスに出発をうながす
 第II巻 イタケーでの評定、テーレマコス、父を捜索に船出の段
 第III巻 ピュロスでの物語
 第IV巻 スパルテーなるメネラーオスの館(やかた)での物語
 第V巻 カリュプソーの島での話、オデュッセウスの筏(いかだ)での出帆と海難の段
 第VI巻 スケリエー島の王アルキノオスと王女ナウシカアーの物語
 第VII巻 アルキノオス王の館(やかた)での物語
 第VIII巻 スケリエー島での物語、競技と饗宴
 第IX巻 オデュッセウスの漂流譚、キュクロープスの岩屋での物語
 第X巻 漂流譚のつづき――アイオロス、ライストリュゴネス、キルケー
 第XI巻 オデュッセウスが冥界訪問の段
 第XII巻 漂流譚のつづき――セイレーンたち、スキュレー、トリーナキエー
 第XIII巻 オデュッセウス、スケリエー人の船で送られ故郷に帰ること
 第XIV巻 豚飼いエウマイオスの小屋での物語
 第XV巻 テーレマコス帰国して同じく豚飼いの小屋を訪ねて来ること
 第XVI巻 豚飼いの小屋で父子再会のこと 
 第XVII巻 テーレマコスの帰館、オデュッセウスは乞食姿で自館に着く
 第XVIII巻 オデュッセウス、浮浪人イーロスと拳闘のこと
 第XIX巻 身分を隠したオデュッセウスと妻との面会、足洗いの段
 第XX巻 オデュッセウスへの吉兆と求婚者ら騒擾のこと
 第XXI巻 弓矢試しの段
 第XXII巻 求婚者総退治の段
 第XXIII巻 夫婦、晴れて再会のこと
 第XXIV巻 求婚者の亡霊、冥途へゆくこと、彼らの一族とも和睦のこと

後記・注解
解説
 ギリシア叙事詩について
  エポスの始源
  ホメーロスの成立
  ホメーロス問題
  ホメーロス以後の叙事詩
 『オデュッセイア』について
年譜



オデュッセイア 世界の文学 02



◆本書より◆


「第Ⅶ巻」より:

「一方、オデュッセウスはアルキノオスの音に聞こえた宮殿へと出かけていった。ところでずいぶんと、その青銅の敷居に着くまでには、立ちどまっていろいろ心を動揺させた。というのも、さながら太陽か月かのようにきらめく光が、(中略)宮居じゅうにわたっていたからで、まわりの壁もほうぼうが、入口の敷居から奥まで、青銅で張られていて、その上端は青エナメルで飾られている。また純金の二枚扉が堅固な屋敷を内へと仕切り、銀づくりの柱が敷居の上に立っていた。それにまた扉の上の楣(まぐわ)は銀に、掛け金(がね)は黄金づくりで、両側にはそれぞれ金と銀との犬どもがずらりとひかえていたが、これはヘーパイストス神が技巧を凝らして、度量のひろいアルキノオス王の御殿(ごてん)を番するようにとこしらえた、いつの日までも不老不死の犬どもだった。また屋敷の内には肘掛(ひじか)け椅子(いす)がほうぼうに、壁へ向かって寄せかけてあり、入口から奥の間まで引きつづいて置かれた上には、女たちがこしらえ上げた、織りのよい、しなやかな布がかけてあった。」
「中庭の外側には、門の扉に近接して、四畝(グイア)もあるくらいの広い果樹園がつづき、そこには野梨やざくろ、実の輝くほどな林檎(りんご)だの、甘いいちじくだの繁ったオリーブ樹だの、いろんな果樹が丈高く繁りあい、花を開いていた。そうした木々の実は、けっして腐らず、冬も夏も年じゅう絶えるということがなかった。それで始終柔らかな西風が吹き寄せて、木の実をみのらせたり、熟させたりするので、梨の実は梨の実の上に、林檎は林檎の上に古びてゆき、一方ではぶどうの房が他の房の上に、いちじくはいちじくの上に年を重ねてゆくのであった。
 またそこでは実りの多い平らな苑生(そのう)に(ぶどう樹が)根を張っていて、その一部分の日向(ひなた)の平地は暖かいところを占めて太陽に乾かされてい、他のところはいましも収穫の最中、また他の場所では実を踏みつけて汁を絞っているところである。また前のほうのはまだ実も未熟で花が咲きのこっているのに、すぐそばではもう黒く色づいて来たというふうで、そのまたいちばん下の畝のかたわらには野菜がきれいに列をつくって植え付けられ、あらゆる種類の菜類が一年じゅうにぎやかに生い繁る、その間を二本の泉が流れている、その一方は果樹園の全体にわたって水を散じ、もう一方は反対側から、中庭の敷居口をくぐって、高くそびえる館に水を送っていた、そこから市民たちは水を汲んでくるならわしだった。つまりアルキノオスの御殿には、これほど立派な、神々の贈り物があったのだった。」



「第Ⅸ巻」より:

「そこから九日のあいだ、呪われた風に運ばれ、魚類に富む海原の上を渡ってゆきましたが、十日目に、蓮の実喰い(ロートパゴイ)の国へ上陸しました、その人々は花のような食物を喰いならわす者どもでした。そこで私どもは陸へ上がって、水を汲んで積みこみました、それから仲間の者らは速い船のわきでさっそく晩食にかかったのでした。そして食事をすませ飲物もとると、いよいよそのとき仲間の者らを私は派遣して、どういう種類の人間がこの土地に穀物を食って暮らしているか、いって調べてくるように命じました、(中略)その人々はさっそく出かけて、蓮の実喰いの人たちの間にはいりこんだのでした。いかさま蓮の実喰いどもは、われわれの僚友たちにたいして、破滅を図るという策略を用いようとしたのではありません、ただ彼らに蓮の実(ロートス)を喰えといってくれたのでした。ところでこの蜜のように甘い蓮の実を食べる者はみな、もはや帰って来ようとも、報せを持って戻ろうとも、思わなくなり、ただそのままそこに、蓮の実喰いの人々といっしょになって、蓮の実を貪(むさぼ)り喰ってはい続けることのみ願い、帰郷のことなど念頭になくなってしまうのでした。そうした連中を私は船へと、むりやりに泣き叫ぶのを引っ張っていったのでした、そして中のうつろな船中に、漕座の下へ引きずりこんで縛りつけたものでした。(中略)またひょっとして誰かが蓮の実を喰って、帰郷のことを忘れては大変なので、そこで一同は大急ぎで船へ乗り組み、櫂掛けへと坐りこんで、秩序正しく座につくと灰色をした潮を櫂で撃っていったのでした。」


「第Ⅹ巻」より:

「さてゆくほどに一同は森の低まに、磨いた石でこしらえられたキルケーの屋敷を見つけました、まわりの空(す)いた見通しのきく場所でしたが、そのあたりには山に棲む狼や獅子などが何匹もいたのは(そのキルケーが)あやしい薬草を食べさせて、彼女自身で魔法にかけて人の姿を変えたものなのでした。それでその野獣たちも人間に向かって跳びかかるようなことはせず、かえって長い尾を振りまわしては、立ち上がるのでした。(中略)それで一同は、この恐ろしい怪獣を見て、恐れおののき、結髪の美しい女神の扉口(とぐち)にいって立つうちにも、内でキルケーが綺麗な声で歌をうたうのが聞こえて来ました、ちょうど機(はた)を織っていたので、それは女神たちがお織りのような、大幅の、神々しいもので、しなやかに、上品で何とも立派な出来ばえでした。」

「するとキルケーはみなを館の中へ連れこむと、ソーファだの肘掛け椅子だのに坐らせ、一同にチーズや割り麦や黄色い蜂蜜やらを、プラムノス産の赤ぶどう酒に混ぜ合わせたのを出しましたが、その食べ物へはあやしく恐ろしい魔法の薬を混ぜておいた、それはすっかり故郷のことを忘れてしまわせるためでした。それからこれをみなに与え、一同が飲み干すと、今度はさっそく杖をふるってうちたたき、豚小屋へと閉じこめたのでした。」





























































































































































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◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

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好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

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