呉茂一 『ギリシア神話 下巻』 (新潮文庫)

呉茂一 
『ギリシア神話 
下巻』
 
新潮文庫 2513/草 224-2

新潮社 
昭和54年11月20日 発行
昭和57年3月15日 6刷
320p 
索引47p 参考文献4p 系図16p
「文字づかいについて」その他2p
文庫判 並装 カバー
定価320円
カバー: 田淵裕一
カラー写真: 野中昭夫
本文写真: 平川嗣朗/野中昭夫


「この作品は昭和四十四年十二月新潮社より刊行された。」



本文中図版(モノクロ)9点。
全二冊。


呉茂一 ギリシア神話 下


目次:

第五章 諸地方の伝説
 第一節 テーバイをめぐる伝説
  一、テーバイの建国、王女エウローペーの物語/カドモスとハルモニアー
  二、カドモスの裔、アクタイオーンとセメレー/アタマースとイーノー
  三、ラブダコスの一族、アンティオペーの物語/ゼートスとアンピーオーン、ニオベーの子ら/オイディプースの一生
  四、テーバイへの七将、アンティゴネーの死/「エピゴノイ」、アルクマイオーンの物語
 第二節 クレーテーの伝説
  一、エウローペーの子ら、ミーノース大王/ニーソスとスキュレーの物語/ダイダロスとミーノータウロス
  二、ミーノースの一族、カウノスとビュブリスの物語/グラウコスの甦生とポリュエイドスの物語
 第三節 テッサリアの伝説
  一、馬人ケンタウロイ、イクシーオーンとケイローン
  二、ラピタイ族の首領ペイリトオス/ヒッポダメイアの結婚
 第四節 アッティケーの伝説
  一、初代の王たち、ケクロプスとエリクトニオス/パンディーオーン、ピロメーラーとプロクネーの物語/プロクリスとケパロス
  二、英雄テーセウスの物語(一)、テーセウスの生い立ちとアテーナイへの旅
  三、テーセウスの物語(二)、牛人 ミーノータウロス/ダイダロスとイーカロス/ヒッポリュトスの物語

第六章 英雄伝説
 第一節 ペルセウスの物語
  一、牝牛イーオーとダナエーの箱舟/プロイトスとアクリシオス、黄金の雨
  二、英雄ペルセウス、ゴルゴーンの首/王女アンドロメダーの危難
 第二節 ヘーラクレースの物語
  一、家系と幼時、二人のアンピトリュオーン
  二、十二の功業(上)
  三、十二の功業(下)
  四、遊行中の事跡、怪人アンタイオス、プロメーテウスの解放、猿人ケルコーペス、その他
  五、悩み多い一生の終り、アウゲーとその子、テーレポスの物語/ヘーラクレースの死と昇天
  六、ヘーラクレースの子たち/少女マカリアーの献身

第七章 叙事詩の世界
 第一節 アルゴー遠征の物語
  一、発端、イアーソーンの生い立ち/巨船アルゴーの建造とアルゴナウタイ
  二、航海(一)、ヒュプシピュレーの悲劇/ヘーラクレースとヒュラース少年/アミュコス王
  三、航海(二)、予言者ピーネウスと怪鳥ハルピュイアイ/打ち合い巌シュンプレーガデス
  四、コルキスにて/アイエーテース王の難題
  五、王女メーデイアとの出遭い
  六、金羊裘の奪取
  七、帰航、アイエーテースの怒り/アプシュルトスの虐殺
  八、メーデイア後日譚
 第二節 トロイア戦役の顛末
  一、発端、三女神黄金の林檎を争うこと/美女ヘレネーの出奔
  二、出陣、ギリシア勢アウリスに勢揃えのこと/パラメーデースの冤罪
  三、緒戦、テーレポス王の負傷/ピロクテーテースの物語
  四、闘いの果て、アマゾーンの女王ペンテシレイアの死/黒人王メムノーンの奮闘と討死に/アキレウス、パリスの矢に当ること
  五、アイアース憤死のこと/ヘレノスの予言とパラディオン像の奪取、木馬の計/神官ラーオコオーンの父子の惨死/イーリオスの陥落と滅亡
 第三節 『イーリアス』の物語
  一、アキレウスの怒り/アガメムノーンの凶夢
  二、パリスとメネラーオスの一騎打ち/ディオメーデースの活躍
  三、グラウコスの物語/アイアースとヘクトールの一騎打ち
  四、和解の使者/ドローンの物語
  五、ポセイドーンの救援/ヘーラーの計略
  六、サルペードーンとパトロクロスの討死に
  七、アキレウスの嘆きと出陣
  八、アキレウスとヘクトールの一騎打ち/ヘクトールの討死にと葬送
 第四節 『オデュッセイア』の物語
  オデュッセウスの漂流と帰国について
  一、発端、神々の集会
  二、テーレマコス、求婚者の横暴
  三、スパルテーへの旅、ペーネロペイアの祈り
  四、ニンフ・カリュプソーの島にて、お使い神ヘルメース
  五、暴風雨、王女ナウシカアーとの出会い
  六、パイエーケス王アルキノオスの宮殿にて
  七、饗宴、盲詩人デーモドコス
  八、漂流中の冒険(一)、キュクロープスの洞窟にて
  九、漂流中の冒険(二)、アイオロスの島と妖女キルケーの館
  十、漂流中の冒険(三)、セイレーネスとスキュレー、太陽神の牛ども
  十一、帰郷、イタケー島へ/豚飼いエウマイオス
  十二、テーレマコスの帰国/父子の再会
  十三、裏切りもの・山羊飼いメランティオス/老犬アルゴス
  十四、ペーネロペイアの嘆き、復讐の準備
  十五、最後の饗宴と弓矢の競技
  十六、闘いのおわり、夫婦再会と後始末

解説 (吉田敦彦)

系図
参考文献
索引




◆本書より◆


「第五章 諸地方の伝説」より:

「ミーノースのもう一人の息子グラウコスは非常にお伽噺(とぎばなし)的な存在であった。この話は、有名な予言者で鳥や獣の言葉を解するといわれたメランプースの子孫といわれるポリュエイドス(中略)の予言の力と関連している。グラウコスが幼少の頃、一人で球を弄(もてあそ)んでいたおり、はずみに足を滑らせ、中庭に埋め込んであった大きな、蜜(みつ)を満たした瓶(かめ)に落ち込んでしまった。そして蜜の奥に隠れたので、小児の見えないのに気づいた人たちが、いくら探しても見つからなかった。その間に子供はもちろん息が絶えてしまった。
 子供の姿がいくら探してもどこにも見えないもので、人は彼が球の後を追って海へでも落ちたかと考えもした。そこでミーノース王が神託を伺うと、彼の家畜の中に一匹のふしぎな犢(こうし)がいる、もしこの犢が何に似ているか言い得る者があったら、その人がグラウコスを生けて返してくれよう、ということだった。そこで王は牧場を隈なく探らせると、ふしぎな犢が見つけられた。それは日中、四時間ごとに色を変えるので、初めは白く、それから赤く、次には黒くなるのだった。王はさっそく国中の占師を集めて相談したが、誰一人としてよい知恵を出す者がなかった。そのとき、ちょうどこの島に来合せていたポリュエイドスが(彼はいわば渡り占師で、諸国を遍歴して人々を助けていた)話を聞いて王宮に立ち寄り、その犢は、桑の実に似ている、それは初めは白く、ついで赤く、終りには黒くなるから、というのであった。
 そこで今度は彼に、行方知れずになった小児を見つけ出し、その上に生き返らせる、という仕事が課せられることになった。しかしこれも、彼は鳥占(とりうら)によって難なく克服することができた。まず彼は岸の上を飛ぶ海鷲(うみわし)を見て、小児は波に浚(さら)われたのではなく、陸上にいるのだ、と見きわめた。いつも海上を翔(かけ)る海鷲がいま陸の上に来ているのは、その兆を示すためだ、と判断したのであった。次に彼は食糧をいれる庫(くら)の軒下に巣くう梟(ふくろう)が、蜜蜂(みつばち)を逐(お)い払っているのに目を付け、蜜蜂の甕(かめ)があるのを悟った。その中に彼は小児を見つけ出した。
 神託に従って、彼はこの小児を蘇(よみがえ)らせなければならない。それで彼は小児と一緒に墓の中の殯室(ひんしつ)に閉じ込められた。するとそこへ一匹の蛇が現われ、死骸に近づき寄った。ポリュエイドスは剣を執って、この蛇をうち殺した。そこへたちまちもう一匹の蛇が出て来て、仲間の蛇が死んだのを見ると、急いで姿を消した。そしてしばらくたつと、何か薬草をくわえて戻って来た。それを死んだ蛇にこすりつけると、見る見る死んでいたのがまた動きだし、やがて連れ立って去(い)ってしまった。ポリュエイドスはすかさずその薬草をとって、グラウコスを蘇らせた。合図によって墓から現われた二人の姿に、ミーノースを始め王宮の人々の喜びと感嘆は限りがなかった。しかし欲望は尽きるところを知らないので、ミーノースはポリュエイドスに強請して、予言の術をグラウコスに教えさせた。そこでよんどころなく、不快を感じながらも、ポリュエイドスは権力の前に屈してそのとおりにした。ただ、島をいよいよ出発するおり、グラウコスに命じて、自分の口の中に唾(つば)を吐くように、と言いつけた。子供のグラウコスは言われるまま、先生の口の中に唾を吐いた。ポリュエイドスはそのまま上機嫌で、ミーノースを始め島の人々に訣(わか)れを告げて出帆した。その後でグラウコスに占いをさせてみて、人々は初めて予知の力がすっかりもう失われたのに気がついたという。」



「第六章 英雄伝説」より:

「しかもこれらの英雄のことごとくが、多かれ少なかれ人生行路の涯(はて)において、幸福とはけっしていえない、端的にいえば暗い不幸な、末路を嘆かねばならないのは、ある意味でいかにもギリシア的といえる。ギリシア人はけして明るい、おめでたい人種ではなかったのである。彼らが明朗な、翳(かげ)を知らない民族のようにしばしば見受けられるのは、彼らの意志の力と、激しい努力のためといえよう。近代的、逆説的にいえば、彼らの絶望が彼らを明るくしたのだと。」


「第七章 叙事詩の世界」より:

「しかしアキレウスは今は涙をこらえきれず、仲間からひとり離れて、波の鞺鞜(とうとう)とうち寄せる渚にいって、はてしない海原を眺めやりながら、両手をさし伸べ母親の名を呼んで祈った。彼の訴えは、大海の底深く、姉妹たちと父ネーレウス(海神)の洞窟(どうくつ)にいたテティスの耳に届いた。女神は、さながら靄(もや)のごとくに波白ぐ海面から浮び上がり、涙にくれる息子のそばに寄り添って、やさしくその背をさすりながら、泣く所以(ゆえん)を訊ねるのであった。」




こちらもご参照下さい:

呉茂一 『ギリシア神話 上巻』 (新潮文庫)
高津春繁 『古典ギリシア』 (筑摩叢書)

















































































































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