パウサニアス 『ギリシア案内記 (上)』 馬場恵二 訳 (岩波文庫)

「トリプトレモスの祭神像が安置されている神殿の前には、犠牲のために引いてこられる姿の牛の青銅像があり、クノソスの人エピメニデスの坐像も据えられている。この人は野山に出た折、洞窟に入って昏々と眠りつづけたと伝わる。眠ったまま四〇歳の年を迎えるまで、睡眠は彼を放さなかったのだ。」
(パウサニアス 『ギリシア案内記』 より)


パウサニアス 
『ギリシア案内記 
(上)』 
馬場恵二 訳
 
岩波文庫 青/33-460-1 

岩波書店
1991年12月16日 第1刷発行
324p 「ギリシア史年表」19p
文庫判 並装 カバー
定価670円(本体650円)



本書「凡例」より:

「本文庫版は『ギリシア案内記』全十巻の全訳ではなく、上巻には第一巻「アッティカ(含メガリス〔メガラ地方〕」、下巻には第二巻「コリント、アルゴリス」と第一〇巻「フォキス」を収録する。訳出した各巻は抄訳ではなく全文訳である。」


ΠΑΥΣΑΝΙΟΥ EΛΛAΔΟΣ ΠΕΡΙΗΓΗΣΙΣ
本文中モノクロ写真図版(訳者撮影)29点。


パウサニアス ギリシア案内記 上


カバー文:

「2世紀後半、ギリシア全土の山間僻地まで精力的に取材して記した詳細な案内記。巧みに設定した順路に沿って名所旧跡を案内し、そこに伝わる行事、宝物、ゆかりの神話を語る。他の文献にはない伝承を数多く伝えており、現代の旅行者にとっても秀抜な旅行案内であると同時に、古代ギリシア研究に不可欠な基本資料である。(全2冊)」


目次:

凡例

第一巻 アッティカ
 アッティカ
  スニオン
  アテネの外港ペイライエウス
  ファレロンとその近辺
  ファレロン街道からアテネ市内へ
  ペイライエウス街道からアテネ市門へ
  市門ディピュロンの市内側の辺り
  市門からケラメイコス(旧広場)まで
  アテネ初代の王たち
  ケラメイコス(旧広場)西縁の建築物
  ガラタイ族の侵入とアテネ軍の奮戦
  ガラタイ族、アシアに渡る
  ペルガモス人の武勲
  円堂と「名祖たち」
  「新名祖」論序文
  プトレマイオス一世・救済王
  プトレマイオス二世・愛姉王
  アッタロス一世・救済王
  ケラメイコス(旧広場)の彫刻点描
  プトレマイオス九世・愛母王
  ヘレニズム諸王の彫像
  リュシマコス伝
  リュシマコスと史家ヒエロニュモス
  リュシマコス伝つづき
  ピュロス伝一・祖先と彼の即位
  ピュロス伝二・イタリア遠征
  ピュロス伝三・イタリア撤退とマケドニア戦争
  音楽堂、エレウシニオンなど
  旧広場西のヘファイストス神殿
  アフロディテ・ウラニアの聖所
  ストア・ポイキレとその絵画
  セレウコス一世・勝利王
  広場からテセウスの聖所まで
  テセウスの晩年とテスプロティア地方
  聖所と中央市庁舎
  下町の聖所
  ゼウス・オリュンピオスの聖所
  ハドリアヌス帝の図書館、体育所
  アテネ市東郊(ピュティオンなど)
  イリソス川の辺り
  「トリポデス通り」
  ディオニュソスの聖所
  前八六年のスラのアテネ占領
  ディオニュソス劇場からアスクレピエイオン
  サウロマタイ族の胸当て
  アクロポリス南麓の聖所と墓
  アクロポリスの表玄関
  アクロポリス西側の彫刻
  アクロポリス聖道の沿道
  パルテノン神殿
  アポロン・パルノピオス
  パルテノン東と南壁沿いの彫刻
  マケドニアのアテネ占領
  アテネの解放
  アクロポリス東寄りの彫刻
  エレクテイオン
  アテナ・ポリアスの神殿
  「聖秘物運び」の儀式
  アクロポリス北西寄りの彫刻
  テセウス伝説
  アクロポリス西寄りの奉納品
  アクロポリス西麓の泉と聖所
  アレイオス・パゴスとその周辺
  アテネ市内の裁判所法廷
  パンアテナイア祭の船
  アテネ市郊外(北西)の聖所
  アカデミア街道沿いの墳墓
  アカデミアとその近辺
  アッティカ田園の集落
  アッティカの山々と祭祀
  古戦場マラトン
  ブラウロンとアルテミス木彫祭神像
  ラムヌウスのネメシス女神
  アイティオピア人とオケアノス河
  ネメシス女神像と台座彫刻
  オロポスの聖所アンフィアライオン
  ヘレネ島とサラミス島
  アイアスの体格と巨大人骨
  サラミス島とプシュタレイア島
  「聖道」の沿道
  レイトイ
  エレウシス――聖所とその近辺
  エレウテライとディオニュソス神殿
  メガラ街道

 メガリス(メガラ地方)
  メガラ古史
  メガラ市内案内――テアゲネスの泉場など
  アクロポリスのひとつ「カリア」
  メガラ市内北側と近郊
  もうひとつのアクロポリス「アルカトア」
  「アルカトア」南麓
  広場近辺
  外港ニサイア
  地方都市パガイとアイゴステナ
  コリントに向かう沿道

訳注
解説
パウサニアス校訂本と参考文献
ギリシア史年表

付図
 ギリシア全図
 アッティカ、メガリス地方図
 アテネのアゴラ俯瞰図
 アテネ市内中心部
 アテネのアゴラ(旧広場ケラメイコス)
 イリソス川流域図
 メガラ市と近郊




◆本書より◆


「音楽堂(オデイオン)、エレウシニオンなど」より:

「トリプトレモスの祭神像が安置されている神殿の前には、犠牲のために引いてこられる姿の牛の青銅像があり、クノソスの人エピメニデスの坐像も据えられている。この人は野山に出た折、洞窟に入って昏々と眠りつづけたと伝わる。眠ったまま四〇歳の年を迎えるまで、睡眠は彼を放さなかったのだ。そののち、彼は詩を創作したり、アテネの町をはじめ他の国々を祓い浄めた。」


「「聖秘物運び(アレフォリア)」の儀式」より:

「アテナ(・ポリアス)の神殿に接続して建つのがパンドロソスの神殿。」
「ここに私を非常に驚嘆させた行事があって、しかも誰もが知っているというような神事ではないので、何が執り行なわれるのか、書いておくことにしよう。二人の少女がポリアスの神殿のすぐ近くで寝起きしていて、アテネの人びとは彼女らのことを「聖秘物運び(アレフォロイ)」と呼んでいる。彼女らはある期間を女神のもとで過ごし、祭礼当日がやってくると、夜中につぎのような役を演ずる。アテナの女神官の授けるものを頭に載せて運ぶのだが、授ける側の女神官も自分の授けるものが何かを知らず、運び役の少女たちにも分かっていない。ところで、(アレフォロイの家の)囲壁(ペリボロス)は、市内所在のほうのいわゆる「庭園(ケーポイ)に在(いま)すアフロディテ」(の聖所)からそう隔たってはおらず、しかも、囲壁をくぐって天然の地下道が下に通じているのだが、実はこの道を少女らは降りていくのだ。彼女らは運んできたものをそのまま置き去りにして、代わりに何か包み隠されたものを受け取って持ち帰る。そこまでで彼女らはお役ごめんとなり、人びとはこれと交代に別の少女たちをアクロポリスに導いていく。」



「ヘレネ島とサラミス島」より:

「レタイオス河畔のマグネシアの市民にプロトファネスという者がいて、オリュンピア競技会で一日のうちに全力格闘技(パンクラティオン)とレスリング両種目の優勝をさらった。このプロトファネスの墓の中へ盗賊どもが、何か稼ぎはあろうと考えて、入り込んだことがあった。盗賊どもの用件がすんだあと、さっそく町の人たちが入ってみると、彼の肋骨は一本一本が分かれているのではなくて、肩のところから最小の肋骨、つまり医者の言う仮肋骨にかけての部分全体がくっついて、一枚の胸板に固まっていたことが判明した。」


「訳注」より:

「「聖秘物運び」 パウサニアスは二名のみを語っているが、少なくとも大パンアテナイア祭の年には四名が選ばれた。アテネ上流家庭の七歳から一一歳の少女の中からアルコン・バシレウスが選出した。四名のときは二名ずつに役割分担してひとつの組はアテナ女神のために衣を織り、ひとつの組がパウサニアスの叙述する聖秘物運びを演じた。彼女らが主役を演じる祭礼はアレフォリア祭と呼ばれ、麦の収穫もすでに終わったスキロフォリオンの月(六月/七月)に執り行なわれた。パンドロソスは姉妹ヘルセとアグラウロスと同様に露に関係があり、聖秘物は蛇とか男根(ファロス)を象ったものらしく、この祭礼は収穫後の大地の生産力回復を祈願する豊穣信仰の神事であった。」





パウサニアス 『ギリシア案内記 (下)』 馬場恵二 訳 (岩波文庫)

























































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難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

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