パウサニアス 『ギリシア案内記 (下)』 馬場恵二 訳 (岩波文庫)

「至聖所への入場も一般の者は駄目で、ただ、イシス女神みずからが抜擢して、その人の夢枕に立ち、招き給うた者たちだけが入場を許されたのである。」
(パウサニアス 『ギリシア案内記』 より)


パウサニアス 
『ギリシア案内記 
(下)』 
馬場恵二 訳
 
岩波文庫 青/33-460-2 

岩波書店
1992年2月17日 第1刷発行
441p
文庫判 並装 カバー
定価720円(本体699円)



本書「凡例」より:

「下巻には『ギリシア案内記』全十巻のうち、第二巻「コリント、アルゴリス」と第一〇巻「フォキス」を収録する。」


ΠΑΥΣΑΝΙΟΥ EΛΛAΔΟΣ ΠΕΡΙΗΓΗΣΙΣ
本文中訳者撮影写真図版(モノクロ)24点、その他図版3点。


パウサニアス ギリシア案内記 下


カバー文:

「2世紀に書かれた古代ギリシア旅行案内書。本書では、コリントを振り出しにアルゴリス地方(原書第2巻)、フォキス地方(同第10巻)を案内、コリントでは王女メデイアの古伝を語り、ミケネ遺跡では獅子門をくぐりアガメムノンの墓を訪ねる。同遺跡はその1700年後、本書に導かれたシュリーマンによって発掘されることになる。」


目次:

凡例

第二巻 コリント、アルゴリス
 コリントの名称由来と現状
 コリント地峡(イストモス)
 ポセイドンの聖所
 外港レカイオンとケンクレアイ
 コリント市へ
 コリント市内(一)
 メデイア伝説
 コリント市内(二)
 コリント歴代の王
 コリント市内(三)
 アクロコリント
 河神アソポスの伝説
 テネア
 コリントからシキュオンへ
 シキュオンの建国伝説
 シキュオン衰微の現状
 シキュオン領に入る
 シキュオンのアクロポリス
 シキュオンの下町
 アラトス半神廟とアラトス伝
 スパルタ王クレオメネス三世
 フィリポス五世とアラトスの死
 シキュオン市内(広場の辺り)
 ヘラクレスの聖所
 アスクレピエイオン
 アフロディテの聖所
 アルテミス・フェライアの聖所と体育所
 シキュオンの「聖門」の辺り
 シキュオン郊外のピュライア
 シキュオンからティタネへ
 シキュオンの港と沿岸地帯
 フリウス建国伝説
 フリウスとヘラクレイダイ一門
 フリウスの古跡
 フリウス郊外ケレアイの秘儀
 クレオナイ
 ネメア村
 アルゴス建国伝説
 アルゴス歴代の王たち
 ペルセウスのミケネ建設伝説
 ミケネ破壊と古代遺跡
 ヘライオン(ヘラ神殿)
 ミケネからアルゴス市門まで
 アルゴスの三王家
 ヘラクレイダイ一門の帰還
 アルゴス王テメノス
 アルゴスにおける王権の縮小
 アルゴス市内の名所
 広場とその近辺
 広場からキュララビス体育所へ
 アルゴス市内北西部
 アルゴス市内の他の名所
 アクロポリス「ラリサ」とその近辺
 アルゴス・テゲア街道
 デイラス門からオイノエへ
 デイラス門からリュルケイア、オルネアイへ
 アルゴス市から東へ(ティリュンスほか)
 エピダウロス建国伝説
 アスクレピオス出生譚
 アスクレピオスの聖なる杜
 エピダウロス特別種の蛇
 エピダウロスへの道中
 エピダウロス市内
 アイギナ島古代伝承
 アイギナの台頭
 アイギナ港付近の神殿・聖所
 アファイア伝説
 ゼウス・パンヘレニオスの聖所
 トロイゼン古史の伝承
 トロイゼン市内
 ヒポリュトスの聖域(市外西郊)
 トロイゼンのアクロポリスとその北東麓
 トロイゼン・ヘルミオネの山道
 トロイゼンの市外東郊から港まで
 トロイゼン領の島(一)「聖島ヒエラ」
 トロイゼン領の島(二)カラウレイア
 ハルパロス事件とデモステネスの死
 半島の町メタナ(市内と周辺)
 メタナ農業祭祀の奇習
 ヘルミオネ古史の伝承
 再度トロイゼン・ヘルミオネの山道
 スキュライオン岬の伝説
 ヘルミオネ沿岸の船旅
 ヘルミオネの半島と旧市の聖所など
 ヘルミオネ新市
 プロン山のデメテル聖所とクトニア祭
 廃市ハリケとコキュギオン山の聖所
 マセスから北辺国境へ
 再度アルゴス領(アシネの廃墟)
 アルゴス市から南のレルナへ
 レルナの聖なる杜
 レルナイア祭秘儀の年代考証
 レルナのヒュドラ(水蛇)
 底なし湖アルキュオニア
 レルナからふたたび北へ(テメニオン)
 ナウプリア(カナトスの泉)
 レルナの南(ゲネシオンとその近辺)
 テュレアの古戦場から内陸国境地帯へ

第一〇巻 フォキス
 フォキス史
 パノペウス
 ダウリス
 ダウリスからデルフォイまで
 デルフォイ託宣所の古伝
 アポロン神殿の古伝
 デルフォイ市の古伝
 ピュティア競技会の歴史
 隣保同盟
 アテナ・プロノイアの聖所
 体育所とカスタリアの泉
 アポロン聖所の景観
 奉納品解説の原則
 アポロン聖所の入口。コルキュラ市の奉納品
 テゲア市の奉納品
 スパルタの奉納品
 アルゴス市奉納の「トロイアの木馬」
 アテネのマラトン戦勝感謝の奉納
 アルゴス市奉納の「テーベ攻めの七将」ほか
 タラス市の奉納品
 シキュオン人の宝庫
 シフノス人の宝庫
 リパラ市の奉納品
 その他の宝庫
 アテネ人奉納の列柱館
 女予言者シビュラ
 パイオニア王奉納の野牛頭部銅像
 付近のその他の奉納品
 ヘラクレスとアポロンの鼎争奪合戦
 プラタイアイ合戦の勝利感謝奉納ほか
 大祭壇近辺の奉納品
 サルド(サルデニャ)島とコルシカ島
 その他の奉納品
 アポロンの神殿
 ガラタイ族のギリシア侵攻
 アポロン神殿の内陣前廊
 アポロン神殿内陣
 ネオプトレモスの聖域
 ポリュグノトス筆のレスケの絵画(一)
 ポリュグノトス筆のレスケの絵画(二)
 劇場と競技場
 コリュキオン洞窟
 ティトレア
 アスクレピオスの神殿
 イシス女神の聖所
 ティトレア産のオリーヴ油
 レドン
 リライア
 カラドラ
 ケフィソス川の流域
 ティトロニオン
 ドリュマイア
 エラテイア
 アテナ・クラナイアの聖所
 アバイ
 ヒュアンポリス
 スティリス
 アンブロソス
 アンティキュラ
 ブウリス
 キラ
 ロクリス・オゾリス人の名称由来
 アンフィサ
 ミュオニア
 オイアンテイア
 ナウパクトス
 
訳注
参考文献
訳者あとがき

付図
 コリント、アルゴリス地方図
 フォキス地方図
 コリント――広場(アゴラ)とその周辺
 エピダウロスのアスクレピオスの聖所
 デルフォイのアポロンの聖所




◆本書より◆


「アスクレピエイオン」より:

「そこから道がアスクレピオスの聖所に通じている。囲壁をめぐらされた境内に足を踏み入れると左手に、二部屋に仕切られた建物が建っている。手前の部屋には「眠り(ヒュプノス)」の像が安置されているが、頭部を除いてほかには何も残っていない。奥のほうの部屋はアポロン・カルネイオスに捧げられていて、この一室への立ち入りは神官たちを除いて何びとにも許されていない。列柱館には海の怪獣、鯨(ケトス)の巨大な骨が置かれていて、そのつぎは「夢(オネイロス)」の像、そして獅子を寝かしつける「眠り(ヒュプノス)」の像となっている。このヒュプノス像は渾名を「大盤振舞いの神(エピドテス)」という。」


「広場とその近辺」より:

「アルゴスの広場中央の建造物からそう遠くはないところに土盛りがあって、その中にはゴルゴなるメドゥサの首が埋まっていると伝わっている。だが神話の霧を払えば、彼女について語られていることはつまりこうなのだ。彼女はフォルコスの娘であって、父親が死ぬとトリトニス湖周辺に住む者たちの女王となって、狩猟にも出れば、リビュア人を率いて合戦の指揮も執った。だが、ペロポネソス選り抜きの精鋭部隊が従軍していたペルセウスの軍勢と対峙していたとき、夜陰にまぎれて暗殺されてしまった。ペルセウスは遺体になお残る彼女の美貌に感嘆のあまり、彼女の首を切り取って、ギリシア人に見せるために持ち帰ったという次第なのだ。
 しかしカルタゴの人でエウクラテスの子のプロクレスはもうひとつ別の、つぎの話のほうが先のものより信憑性があるとしていた。リビュアの砂漠には聞いても信じられないような獣がいろいろ棲息しているが、なかでも野生人間というのが男も女もいて、プロクレスが語って言うには、そのうちのひとりの男がローマに運ばれていくのを見たことがあるという。そこで彼は憶測するわけだが、連中のなかのひとりの女がさ迷い出て、トリトニス湖あたりまでやって来ては周辺の地元住民に乱暴を働いていたが、ついにペルセウスが彼女を退治した。そのさいアテナ女神が彼の壮挙に手を貸し給うたと思われる。」



「アクロポリス「ラリサ」とその近辺」より:

「ラリサの頂上には、添え名をラリサイオスというゼウスの神殿が建っているが、屋根は落ちている。木彫の祭神像はもはや台座には立っていない。(中略)ここに安置されている奉納品のなかではとくにゼウスの木彫像が一見に値し、そのふたつの目は普通の自然な場所にあるのだが、額に第三の目がついている。」


「アファイア伝説」より:

「さて、アイギナ島においてゼウス・パンヘレニオスの山に向かう、その途中にアファイアの聖所があり、このアファイアに関する詩をピンダロスがアイギナのために作っている。だがクレタ島の人たちの主張では(中略)、ピュトン(デルフォイの大蛇)殺しの穢れからアポロンを清めたカルマノルの息子にエウブウロスなる者がいて、そのエウブウロスの娘のカルメとゼウスとのあいだにブリトマルティスという女の子が生まれた。彼女は走ったり狩りをするのを楽しむ女の子で、アルテミス最愛の友であった。ところが、彼女を恋したミノスの手を逃れて、魚の捕獲用に放置されていた網(ディクテュア)のなかに身を投げてしまったという。(中略)アイギナにおける同女神の添え名はアファイアといい、クレタでは「漁網の女神(ディクテュンナ)」という。」


「パノペウス」より:

「パノペウスの街道筋に日干し煉瓦造りの大きくはない建物があって、堂内のペンテリコン大理石の祭神像はアスクレピオスとされているが、いやプロメテウスだと主張する人たちがいて、その論拠とする証拠なるものさえ指摘する。すなわち、そこの水無し川(カラドラ)の河床の縁(へり)に石が(ふたつ)でん とあって、大きさは両方ともそれぞれを運ぶのに荷車一台で充分間に合う程度。色は粘土色だが、粘土と言っても泥土混じりのものではなく、カラドラとか砂地質のケイマロスの河床にできるような粘土。そして彼らが最大の確証として指摘するのは人間の体臭であって、これらはすべて、プロメテウスが粘土を練り上げて全人類をこしらえた、その粘土の余った残りなのだと説いている。」


「イシス女神の聖所」より:

「アスクレピオスの聖所から四〇スタディオンほど離れて、イシス女神の「聖なる囲い地(ペリボロス)と「立ち入り御法度の至聖所(アデュトン・ヒエロン)」があり、これはギリシア人がエジプトの同女神のために建立した数ある聖所のなかでも、もっとも神聖な聖所である。ティトレア住民の仕来りでは同所周辺の居住は許されず、立ち入り御法度の至聖所への入場も一般の者は駄目で、ただ、イシス女神みずからが抜擢して、その人の夢枕に立ち、招き給うた者たちだけが入場を許されたのである。これと同じことはマイアンドロス川上手(かみて)の諸都市においても地下神系の神々が行なっていて、至聖所入場を許してやってよいと神々が望んだその者たちのところに、神々は夢の幻を送り給うのである。」




こちらもご参照下さい:

パウサニアス 『ギリシア案内記 (上)』 馬場恵二 訳 (岩波文庫)
『エリュトゥラー海案内記』 村川堅太郎 訳註 (中公文庫)

































































































































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分野: パタフィジック

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