『アリストテレース 動物誌 (上)』 島崎三郎 訳 (岩波文庫)

「岩場にすむものには、ある人々が「エケネーイス」〔舟留め〕と称する一種の小魚もあって、これを復しゅうののろいや恋のまじないに使う人々もあるが、食べられない。またこの魚は足がないのに、あるという人々があるが、これは鰭が足に似ているためにそう見えるだけである。」
(アリストテレース 『動物誌』 より)


『アリストテレース 
動物誌 (上)』 
島崎三郎 訳
 
岩波文庫 青/33-604-10 

岩波書店
1998年12月16日 第1刷発行
532p
文庫判 並装 カバー
定価860円+税



本書「凡例」より:

「本書は、アリストテレースの『動物誌』(Peri ta zōia historiai, Historia animalium)の前半(第一巻―第六巻)の訳である。」


今日のマイ流行語は「アストラガロス」であります。


アリストテレース 動物誌 上


カバー文:

「アリストテレース自身が見聞した動物にかんする知識を、客観的叙述によって集大成したもの。その研究範囲は広く、約120種の魚や60種の昆虫を含む。ゆうに500を越える異なる種の動物が対象とされ、アリストテレースの観察家としての才能が発揮されている。これにより、生物研究の学問的位置づけがなされた。(全2冊)」


目次:

凡例

第一巻
 第一章 等質部分と異質部分 種と類 生活法や行動や性格による相違
 第二章 食物を取り入れる部分と、排出する部分
 第三章 雌と雄 触覚器
 第四章 血液と血管 有血動物と無血動物
 第五章 胎生、卵生、蛆生の動物 足、鰭、翼 運動点の数
 第六章 動物界の諸類 動物研究の方法
 第七章 人体の外部(頭蓋)
 第八章 人体の外部(顔)
 第九章 人体の外部(眉と眼)
 第十章 人体の外部(眼)(続き)
 第十一章 人体の外部(耳、鼻、顎、口、舌)
 第十二章 人体の外部(頸、胸)
 第十三章 人体の外部(腹と腰 子宮と陰茎)
 第十四章 人体の外部(女性陰部 各部に共通な部分)
 第十五章 人体の外部(背部と肋骨 上下右左の相違 腕と脚 人体の特殊性)
 第十六章 人体の内部(脳 気管と肺 食道と胃と腸)
 第十七章 人体の内部(心臓 肺臓 横隔膜 肝臓と脾臓 腎臓と膀胱)
第二巻 
 第一章 胎生四足類の外部(四肢 歯)
 第二章 胎生四足類の外部(イヌの歯)
 第三章 胎生四足類の外部(ウマ等の歯)
 第四章 胎生四足類の外部(ヒトの歯)
 第五章 胎生四足類の外部(ゾウの歯)
 第六章 胎生四足類の外部(ゾウの舌)
 第七章 胎生四足類の外部(口 カバ)
 第八章 胎生四足類の外部(サル)
 第九章 胎生四足類の外部(サル)(続き)
 第十章 卵生四足類の外部
 第十一章 卵生四足類の外部(カメレオン)
 第十二章 鳥類の外部
 第十三章 魚類の外部 イルカについて
 第十四章 ヘビ類、ゴカイその他の外部
 第十五章 有血動物の内部(食道 気管と肺臓 肝臓と脾臓 胆嚢)
 第十六章 有血動物の内部(腎臓と膀胱)
 第十七章 有血動物の内部(心臓 肝臓と脾臓 胃と腸) ヘビについて
第三巻
 第一章 有血動物の内部(生殖に関する部分)
 第二章 有血動物の等質部分(血液と血管 シュエンネシスとアポルローニアのディオゲネースによる人体血管の分布)
 第三章 有血動物の等質部分(ポリュボスによる人体血管の分布)
 第四章 有血動物の等質部分(著者の見解による血管分布と心臓)
 第五章 有血動物の等質部分(腱)
 第六章 有血動物の等質部分(線維 血液の凝固)
 第七章 有血動物の等質部分(骨)
 第八章 有血動物の等質部分(軟骨)
 第九章 有血動物の等質部分(角、爪、蹄)
 第十章 有血動物の等質部分(毛と皮)
 第十一章 有血動物の等質部分(毛と皮)(続き)
 第十二章 有血動物の等質部分(羽と毛)
 第十三章 有血動物の等質部分(膜)
 第十四章 有血動物の等質部分(網膜)
 第十五章 有血動物の等質部分(膀胱)
 第十六章 有血動物の等質部分(肉)
 第十七章 有血動物の等質部分(軟脂と硬脂)
 第十八章 有血動物の等質部分(脂肪)
 第十九章 有血動物の等質部分(血液の性質)
 第二十章 有血動物の等質部分(骨髄 乳とチーズ)
 第二十一章 有血動物の等質部分(凝乳剤 家畜の乳)
 第二十二章 有血動物の等質部分(精液)
第四巻
 第一章 無血動物の諸類 軟体類とその部分
 第二章 軟殻類とその部分
 第三章 軟殻類とその部分(続き)
 第四章 殻皮類とその部分 ヤドカリ類
 第五章 ウニ類
 第六章 ホヤ類 イソギンチャク
 第七章 有節類とその部分 海産の珍奇な動物
 第八章 感覚と感覚器
 第九章 音と声と言葉
 第十章 睡眠と覚醒 夢
 第十一章 雄と雌の相違
第五巻
 第一章 生殖発生
 第二章 交尾(鳥類と胎生四足類)
 第三章 交尾(卵生四足類)
 第四章 交尾(ヘビ類その他)
 第五章 交尾(魚類 ヤマウズラ)
 第六章 交尾(軟体類)
 第七章 交尾(軟殻類)
 第八章 交尾(有節類) 交尾期 カワセミ
 第九章 産卵期(鳥類、有節類、魚類―その一)
 第十章 産卵期(魚類―その二)
 第十一章 産卵期(魚類―その三)
 第十二章 産卵期(軟体類と殻皮類)
 第十三章 産卵期(野鳥と家禽)
 第十四章 年齢と成熟の徴候 交尾に適する年齢(人類と胎生四足類)
 第十五章 生殖発生(殻皮類 ヒトデとヤドカリ)
 第十六章 生殖発生(イソギンチャクとカイメン)
 第十七章 産卵習性(軟殻類)
 第十八章 産卵習性(軟体類)
 第十九章 産卵習性(有節類)(雪や火の中の虫 カゲロウ)
 第二十章 産卵習性(カリュウドバチ)
 第二十一章 産卵習性(ミツバチ)
 第二十二章 ミツバチの種類 蜂蜜
 第二十三章 産卵習性(アントレーネー スズメバチ)
 第二十四章 産卵習性(マルハナバチ)
 第二十五章 産卵習性(アリ)
 第二十六章 産卵習性(サソリ)
 第二十七章 産卵習性(クモ)
 第二十八章 産卵習性(バッタ)
 第二十九章 産卵習性(イナゴ)
 第三十章 産卵習性(セミ)
 第三十一章 生殖発生(ノミとシラミ ナンキンムシ 魚の寄生虫)
 第三十二章 イガ ミノムシ イチジクのハチと結実との関係
 第三十三章 生殖発生(カメ トカゲ ワニ)
 第三十四章 生殖発生(ヘビ類)
第六巻
 第一章 鳥類の交尾と造巣
 第二章 鳥卵 風卵 ハトの交尾
 第三章 ニワトリの卵の構造と胚の発生
 第四章 ハトの産卵習性
 第五章 ハゲワシ ツバメの雛
 第六章 ワシ類とその育雛
 第七章 カッコウとその産卵習性
 第八章 ハト、カラスおよびヤマウズラの抱卵
 第九章 クジャクの習性
 第十章 軟骨魚類の生殖発生 サメ類の胎児と胎膜
 第十一章 軟骨魚類の生殖発生(続き)
 第十二章 イルカその他のクジラ類およびアザラシとそれらの生殖発生
 第十三章 卵生魚類の発生
 第十四章 コイ、ナマズおよびその他の淡水魚類
 第十五章 魚類の自然発生
 第十六章 ウナギの異常な発生
 第十七章 魚類の産卵期 ヨウジウオ マグロとサバ
 第十八章 胎生四足類の交尾と妊娠(ラクダ、ゾウ、ウマ、ウシ、ブタ)
 第十九章 胎生四足類の交尾と妊娠(ヒツジ、ヤギ)
 第二十章 胎生四足類の交尾と妊娠(イヌ)
 第二十一章 胎生四足類の交尾と妊娠(ウシ)
 第二十二章 胎生四足類の交尾と妊娠(ウマ)
 第二十三章 胎生四足類の交尾と妊娠(ロバ)
 第二十四章 ラバ
 第二十五章 胎生四足類の年齢の徴候
 第二十六章 ラクダ
 第二十七章 ゾウ
 第二十八章 イノシシ
 第二十九章 シカ
 第三十章 クマ
 第三十一章 ライオン
 第三十二章 ハイエナ
 第三十三章 ウサギ
 第三十四章 キツネ
 第三十五章 オオカミ、ネコ、マングース、ヒョウ、ジャッカル
 第三十六章 シリアのラバ
 第三十七章 ネズミ

訳注




◆本書より◆


「第2巻 第1章」より:

「単蹄類の中では、インドロバだけにアストラガロスがある。というのは、ブタは先に述べたように、単蹄とも双蹄ともどっちつかずで、上等なアストラガロスを持っていないからである。しかし、双蹄類の多くのものにはアストラガロスがある。足先のたくさんに分かれた動物でそういうアストラガロスのあるものはないし、ヒトにもないから、ヒトと同様であるが、ヤマネコのは「半アストラガロス」に近く、ライオンのは彫刻の「迷宮」のように、らせん状である。すべてアストラガロスのある動物では、後脚にある。アストラガロスは関節に縦に入っていて、「背」は外に「腹」は内に向かい、「コーア」は内側で互いに向き合い、いわゆる「キーア」は外に向いているが、「角」は上を向いている。さて、アストラガロスのある動物におけるその位置は、みな以上のとおりである。」


「訳注」より:

「アストラガロス astragalos はくるぶしの間にある距骨 talus であるが、動物によって形はさまざまである。反芻類では対称的な両凸型で、古代の さいころ にされたものであるが、他の動物では不整形である。アリストテレースは両凸型の、さいころになるようなもののみを「アストラガロス」と呼んだ。」


「第4巻 第6章」より:

「イソギンチャクの類も独特なものである。すなわち、殻皮類のあるもののように、岩に付いてはいるが、ときどき離れる。貝殻はなくて、その体は全身が肉質である。感覚があるし、人が手をもっていくと、ちょうどタコが巻腕でするように、しっかりつかまえてはなさないので、肉がはれあがるほどである。真中に口があり、〔貝類が〕貝殻についているように、岩に付いて生きている。すなわち、ちょうど人の手にまといついたように、小魚にもまといつくし、何か食べられるものが近づいてきた場合も同様である。ウニやホタテガイも食べる。また、イソギンチャクのある類は、〔岩を〕離れる。排出物などはまったくないように見えるので、この点は植物に似ている。イソギンチャクには、二つの類があって、一つはより小さくて食べやすいが、一つはカルキス地方にも産する、大きくて硬いものである。ところで冬の間は肉がしっかりしているが(それゆえ捕えられるし、食用にもなるのであるが)、夏はだめである。というのはぐにゃぐにゃになり、触るとすぐばらばらにこわれ、そっくり取り出すことはできないし、暑さにやられると、なおのこと岩の中へ引っこんでしまうからである。」


「第5巻 第1章」より:

「さて、動物においても、植物と共通なことがある。すなわち、ある植物は他の植物の種子から生ずるが、あるものは、自発的に、あるそういった根源が構成されると、発生し、また、後者の植物の中のあるものは、地面から養分をとるが、あるものは、他の植物の体内に生ずるのであって、『植物学』において述べたとおりである。動物においても同様で、あるものは、動物から同類の形態のものとして生まれるが、あるものは自発的に、すなわち、同類のものからでなく発生し、また、後者のあるものは、多くの有節類に見られる如く、腐植土や植物から発生するが、あるものは、動物体の中でその部分にある排出物から発生する。同類の動物から発生するもので雌雄の別のある場合は、交接して発生する。魚類のあるものには、雄でも雌でもないものがあって、これらは、類としては他の魚と同一であるが、種としては、別のものであり、あるものはまったく独自の〔類の〕ものである。また、あるものは〔みな〕雌であって、雄はいない。これらから、鳥類における風卵〔無精卵〕のような卵が生まれる。」
「動物体とか地面とか植物体とか植物の部分とかに自発的に発生〔自然発生〕する動物には、雄と雌があり、それらの交接によっても何かが発生するにはするが、けっして親と同じものにはならず、不完全であって、たとえば、交尾したシラミからは「コニデス」と称するものが、ハエからは蛆が、ノミからは卵状の蛆が生れるが、これらは生みの親と同じものにも他の動物にもならず、こういう(中略)ものになるだけである。」



「第5巻 第20章」より:

「たとえば、古くなった雪の中に蛆がいることがある。古い雪は赤味をおびてくるので、その蛆もそういう色をしていて毛深い。メーディア〔ペルシア〕の雪から発生する蛆は大きくて白い。いずれにしても、みなあまり動かない。キュプロス島では――ここは銅の鉱石を焼く所である――何日も続けて〔鉱石を火に〕投げ込むと、そこの火の中に大きなハエより少し大きくて翅のある虫が発生し、火の中を跳んだり、歩いたりする。また、前の例の蛆にしろ、この虫にしろ、後者は火から、前者は雪から離すと死んでしまうのである。火の中でも燃えないような動物が存在するということは、サラマンドラ(中略)の例によって明らかである。(中略)キンメリス〔クリミア〕のボスポロス海峡地方のヒュパニス河の沿岸では、夏至の頃ブドウの実より大きい袋のようなものが流れ下ってくるが、これが破れると、翅の生えた四足の動物が出てくる。夕方まで生きていて飛ぶが、太陽が傾くと弱り、沈むと同時に、一日生きただけで、死んでしまうので、そのために「一日虫」(中略)といわれるのである。」


「第6巻 第17章」より:

「ウナギは、交尾によって生まれるのでも、卵生するのでもなく、いまだかつて白子を持っているものも、卵を持っているものも、捕れたことがないし、裂いてみても、内部には精管も子宮管〔卵管〕もないので、有血類の中でこの類は、全体として、交尾によって生まれるのでも、卵から生ずるのでもない。明らかにそうなのである。なぜなら、ある池沼では、完全に排水し、底の泥をさらっても、雨の水が降ると、またウナギが出てくるからである。しかし日照りの時には、水のたまった沼にも出てこない。雨の水で生き、身を養っているからである。ところで、交尾によって生まれるのでも、卵から生じるのでもないことは明らかであるが、あるウナギには小さな寄生虫がいて、これらがウナギになると思われるので、ウナギが生殖すると思っている人々もある。しかし、これは正しくないのであって、ウナギは泥や湿った土の中に生ずる「大地のはらわた」と称するもの〔ミミズ〕から生ずるのである。また、すでにこれら〔ミミズ〕からウナギが出てくるところも観察されているし、ミミズを切りきざんだり、切り開いたりすると、ウナギがはっきり見えるのである。」






















































































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プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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