松永俊男 『博物学の欲望 ― リンネと時代精神』 (講談社現代新書)

「リンネは、自然が神によって、秩序正しく、整然と造られていると確信していた。この自然の秩序を見いだし、神を賛美するのが人間に課せられた義務であり、それを遂行するのが博物学にほかならなかった。したがってリンネによれば、博物学が最高の学問であった。博物学の任務は、神の造られたものを分類し、命名することであり、その最終目的は、「自然の体系」を完成することであった。」
(松永俊男 『博物学の欲望』 より)


松永俊男 
『博物学の欲望
― リンネと時代精神』
 
講談社現代新書 1110 

講談社
1992年8月20日 第1刷発行
196p
新書判 並装 カバー
定価600円(本体583円)
装幀: 杉浦康平+谷村彰彦
カバー・イラスト: 「プロテア」(荒俣宏『花の王国』平凡社刊より)



本文中図版(モノクロ)多数。


松永俊男 博物学の欲望 01


カバー文:

「世界のすべてを知りつくしたい――。
動・植・鉱物=万物を収集、分類、記述する
博物学が学問の王だった一八世紀。
その帝王リンネと、その下に鎖国日本を含む
全世界をめざす弟子。珍品に踊る王、富豪。
博物学の壮大な野望を描く。」



カバーそで文:

「博物学者たちの世界ネットワーク――当時の博物学者は
国や立場を越えて、国際的なネットワークを形成しており、
リンネの元にもこのネットワークを通じて世界各地から博物標本が送られてきていた。
この博物学者の国際ネットワークは、西はアメリカの博物学者、
東は中国に滞在している博物愛好家にまで広がっており、
さらにのちに述べるように、鎖国下の日本の博物学者にも延びていった。
一八世紀の博物学の欲望は、ヨーロッパを中心にして全世界を覆っていたのである。……
ロンドンの富裕な医師スローンの収集品の中心は植物標本で、量だけでいえばリンネの植物標本よりも多かった。
そのほかに動物や鉱物の標本…… 後にこのスローンの収集品を基礎にして、大英博物館が設立された。――本書より」



目次:

プロローグ――博物学の時代

1 すべての植物を分類しつくす
 夜が明けたら有名人
 植物にも性がある
 植物の婚礼
 「性の体系」のアイデア
 「性の体系」の全体像
 論理を重視したリンネ
 植物画の最高峰エイレット
 リンネはみだらである
 「性の体系」の矛盾
 すべてを分類しつくす
 国境をこえるリンネ植物学

2 植物はどのようにとらえられてきたか
 実用分類から人為分類、さらに自然分類へ
 植物学の祖テオフラストス
 近世本草学の頂点
 本草学から博物学へ
 フランス植物学の父ツルヌフォール
 自然をいかにとらえるか
 リンネの目指した自然分類
 ヴェルサイユ宮殿に出現した自然分類
 リンネ批判
 植物学の革命
 植物分類の発展

3 学名の誕生
 「種」とはなにか
 アリストテレス論理学の属と種
 種は変化しない
 二名法とはなにか
 長すぎた学術名
 リンネの工夫
 二名法の功績
 リンネソウの名の由来
 リンネが広めた記号
 国際命名規約の制定
 門・綱・目・科・属・種

4 最高の学問としての博物学
 神を理解する学問
 神に選ばれた者
 システム・オブ・ネイチャー
 リンネの動物学
 人間は神かサルか
 リンネの地質学
 博物学の世紀
 博物標本はどのように作られるか
 貝殻商だけで六〇〇軒
 富豪たちの庭園
 全世界を覆う博物学者のネットワーク
 大英博物館のもとになったコレクション
 パリ植物園の発展
 恋愛小説より人気のあった『博物誌』
 ビュフォン・リンネ論争
 フランス啓蒙思想と博物学
 リンネを賛美したルソー
 ゲーテとリンネ

5 世界を分類しつくしたい――リンネとその野望
 小さな植物学者
 貧乏医学生
 ラップランド調査旅行
 オランダ滞在中に有名になる
 驚くべき生産量
 科学アカデミー会長に
 ウプサラ大学教授の地位
 ロシアのスパイ?
 教師リンネ
 大学植物園の管理
 植物採集会
 平穏な後半生
 国王が支援者に
 リンネの著作群
 小リンネ
 植物学者中の第一人者

6 地球の裏側までも――リンネと使徒たち
 命を賭けて海外へ
 北アメリカへ
 パレスチナへ
 スペインへ
 アラビアへ
 そして日本へ
 最後の使徒ツンベリー
 ツンベリーの業績
 長崎・箱根・江戸の植物
 四〇〇の新種発見
 ケンペルとシーボルトの業績
 リンネ植物学の日本への導入
 博物学とナチュラル・ヒストリー
 田中芳男の夢
 科学博物館の設立

7 リンネ博物学の遺産
 小リンネの努力
 リンネ標本の国外流出
 リンネ植物学の流行
 博物学界に君臨したバンクス
 探検航海と博物学者
 使徒ソランダー
 キュー植物園の誕生
 大英博物館の役割
 二五歳でリンネ標本の所有者に
 ロンドン・リンネ学会の設立
 リンネ標本の行くえ
 イギリス博物学の三つの柱

エピローグ――リンネからダーウィンへ
 一八世紀のリンネ、一九世紀のダーウィン
 動物命名法とダーウィン
 植物命名法とダーウィン
 現代生物学とリンネ
 日本の博物学の現状

参考文献



松永俊男 博物学の欲望 02



◆本書より◆


「プロローグ」より:

「博物学者たちは、自然のすべてを知るために、命がけで未知の世界へ出かけて行った。この博物学の情熱を支えていたのが、キリスト教信仰であった。神の創造した自然を理解することが、神自身を理解することになると信じられていた。近代科学は当初、キリスト教と一体だったのである。」
「わが国が西洋の科学を本格的に導入し始めた一九世紀末には、科学と宗教の分離がほぼ完了しており、そのため、わが国にも近代科学が容易に移植されることになった。その反面、近代科学が本来、キリスト教信仰に結びついていたという事実が理解しにくくなってしまった。また、博物学が自然科学の基盤であることも理解されないまま今日にいたっている。
 本書では、リンネを中心として一八世紀という博物学の時代を描こうと思う。また、その後の博物学についても触れておきたい。
 第1章では、リンネの名が知れわたるきっかけとなった「性の体系」という植物分類法について説明し、第2章で、「性の体系」が植物分類学の歴史の中でどういう位置にあるのかを見る。第3章では、リンネの最大の功績とされる学名の確立について述べる。第4章で一八世紀の博物学の全体を概観し、第5章でリンネの生涯を述べる。第6章ではリンネに触発されて世界各地に出かけた弟子たち、とくに日本に来たツンベリーの活躍を述べ、その後の日本の博物学について概観する。また、「博物学」という言葉の由来についても述べる。第7章では、イギリスの博物学がリンネ博物学を基礎に発展した状況について述べる。エピローグではダーウィンを中心に一九世紀の博物学について述べ、わが国の博物学の現状を見ることにする。」


















































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