荒俣宏 編著 『Fantastic Dozen 第2巻 神聖自然学』

「『神聖自然学』は世にも奇怪な再画合成図像を構成することになった。一見すると寓意図のようなこの画面には、聖書の名場面が当時の最先端科学書から引いたアバンギャルドな図とモンタージュされるのである。」
(荒俣宏 「バロック期図像の万華鏡」 より)


荒俣宏 編著 
『Fantastic Dozen 
第2巻 
神聖自然学』

PHYSICA SACRA

リブロポート
1990年10月12日 発行
189p 口絵1葉
B5判 角背紙装上製本 カバー
定価2,060円(本体2,000円)
装丁: 鈴木成一



本書「バロック期図像の万華鏡」より:

「まさに知る人ぞ知る、バロック科学の王者ヨハン・ヤーコプ・ショイヒツァー(一六七二―一七三三)の奇著『神聖自然学』を、日本の読者にこうして紹介できるとは、何という恍惚であろうか。
 この書物は、内容もさることながら、バロック期の奇想に満ちあふれた銅版図版を満載し、原著者ショイヒツァーの理解しがたい情熱を雄弁に語りかけてくる。キリスト教に語られるドグマをすべて一八世紀科学の光に照らしだし、ふたたびその真実性を検証しようとした、途方もない企てだからである。」
「実は、久しく埋もれていたこの書物を二〇世紀に再発掘したのは、幻想絵画論に新機軸をうち樹(た)てようと意欲的であったロジェ・カイヨワであった。」
「ここには原著の約三〇パーセントにおよぶ図像を復刻するが、紙幅の関係でこれが精いっぱいであった。」



モノクロ図版170点、カラー図版(口絵)1点。解説中図版(モノクロ)5点。


荒俣宏 神聖自然学 01


帯文:

「バロック科学の王者ショイヒツァーが、キリスト教の真実性を検証するために、
聖書に18世紀科学の光をあて、その図像化を図った恐るべき試み。
天下の奇書を世界に先駆けて復刻する。」



目次:

バロック期図像の万華鏡

旧約聖書 
 創世記
 出エジプト記
 レビ記
 民数記
 申命記
 ヨシュア記
 士師記
 サムエル記
 列王記
 歴代志
 ヨブ記
 詩篇
 箴言
 伝道の書
 雅歌
 イザヤ書
 エレミヤ書
 エゼキエル書
 ダニエル書
 ヨナ書
新約聖書
 マタイによる福音書
 ルカによる福音書
 ヨハネによる福音書
 使徒行伝
 ローマ人への手紙
 ヨハネの黙示録




◆本書より◆


「バロック期図像の万華鏡」より:

「一七二六年、ショイヒツァーの名声を決定的にする大著『ノアの大洪水を目撃した人間』が刊行される。これは、ノアの大洪水時代に存在した人間の化石を発見したというセンセーショナルな事件を報告したものであった。」
「ショイヒツァーが「ノアの大洪水で溺れ死んだ昔の罪ぶかい人間の哀れな骨格」とし、〈ノアの大洪水を目撃した人間〉と呼んだこの骨格は、しかし一八世紀後半になってヨハン・ゲスナーにより、人骨ではなく大ナマズの骨だと反駁された。そして一八一一年になると、比較解剖学の開祖キュヴィエにより巨大なサンショウウオの骨であることがあきらかにされた。キュヴィエはしかし発見者に敬意を表して、アンドリアス・ショイヒツェリ・テュデイなる学名を与えた。
 ちなみに、彼が発見したオオサンショウウオは、絶滅したものと思われていたが、一九世紀になってシーボルトが日本で「生き残り」を発見した。これがオオサンショウウオで、この奇妙な連鎖を物語に仕立てあげたのが、カレル・チャペックの名作『サンショウウオ戦争』(一九三六)だったのである。」

「あの〈人骨〉化石発言(中略)にはショイヒツァーとしての深い動機付けがあった。聖書に描かれている故実を、科学的に立証しようという情熱である。当時、唯一の世界創造史と信じられていた聖書を、(中略)新たに発展してきた「科学」によっても称揚すること。それがショイヒツァーの科学者としての野望であった。彼の考古学は、実のところ聖書考古学にほかならなかったのである。
 だからこそ、一七二六年に彼が発見した〈ノアの大洪水を目撃した人間〉の骨化石は、実に興奮すべき成果だったのである。」
「そして、ショイヒツァーは次に、聖書の真実性を立証する別種の探究にも着手した。それが一七二三年からアウグスブルクで刊行しだした『神聖自然学』すなわち“Physica Sarca”全四巻なのである。
 本書において、ショイヒツァーはアルプスの化石が語る仮説と並行する見通しに即しながら、聖書に書かれた神や聖人の行為、事蹟のすべてがいかに途方もなく見えようとも、自然科学的に十分根拠と可能性とを備えた描写であることを、いちいち実証しようとしたのである。
 ロジェ・カイヨワが論じたように、成立した彼の大著は、形式として「当時の科学知識を一般に広めることを目的としながら、『聖書』の図解という方法」をとったのである。そのために本書の図解は、ノアの大洪水や出エジプトやバベルの塔といった聖書名場面集を中心にしつつも、その周囲に当時有数の科学書から転用したさまざまな図像を散りばめるかたちになった。」
「その結果、『神聖自然学』は世にも奇怪な再画合成図像を構成することになった。一見すると寓意図のようなこの画面には、聖書の名場面が当時の最先端科学書から引いたアバンギャルドな図とモンタージュされるのである。」



荒俣宏 神聖自然学 02


「神はまた言われた、
「われわれのかたちに、
われわわれにかたどって
人を造り、
これに海の魚と、
空の鳥と、
家畜と、
地のすべての獣と、
地のすべての這うものとを
治めさせよう」。
神は自分のかたちに
人を創造された。
すなわち、
神のかたちに創造し、
男と女とに創造された。
(『創世記』第一章二六―二七)」




荒俣宏 神聖自然学 03


「主はモーセに言われた、
「あなたはアロンに言いなさい、
『あなたのつえをさし伸べて
地のちりを打ち、それを
エジプトの全国にわたって、
ぶよとならせなさい』と」。
彼らはそのように行った。
すなわちアロンは
そのつえをとって手をさし伸べ、
地のちりを打ったので、
ぶよは人と家畜についた。
すなわち、地のちりはみな
エジプトの全国にわたって、
ぶよとなった。
(『出エジプト記』第八章一六―一七)」



荒俣宏 神聖自然学 04


「神は紅海に沿う荒野の道に、
民を回らされた。
イスラエルの人々は武装して
エジプトの国を出て、上った。
そのときモーセは
ヨセフの遺骸を携えていた。
ヨセフが、
「神は必ずあなたがたを
顧みられるであろう。
そのとき、あなたがたは、
わたしの遺骸を携えて、
ここから上って行かなければ
ならない」と言って、
イスラエルの人々に
固く誓わせたからである。
こうして彼らは
更にスコテから進んで、
荒野の端にあるエタムに
宿営した。
主は彼らの前に行かれ、
昼は雲の柱をもって彼らを導き、
夜は火の柱をもって彼らを照し、
昼も夜も
彼らを進み行かせられた。
昼は雲の柱、夜は火の柱が、
民の前から離れなかった。
(『出エジプト記』第一三章一八―二二)」



荒俣宏 神聖自然学 05


「あなたが
祭壇の上にささぐべき物は
次のとおりである。
すなわち当歳の小羊二頭を
毎日絶やすことなく
ささげなければならない。
その一頭の小羊は
朝にこれをささげ、
他の一頭の小羊は
夕に
これをささげなければならない。
一頭の小羊には、
つぶして取った油
一ヒンの四分の一をまぜた
麦粉十分の一エパを添え、
また灌祭として、
ぶどう酒一ヒンの四分の一を
添えなければならない。
(『出エジプト記』第二九章三八―四〇)」



荒俣宏 神聖自然学 06


「主はまた
モーセとアロンに言われた、
…………
地にあるすべての獣のうち、
あなたがたの
食べることができる動物は
次のとおりである。
獣のうち、すべてひずめの
分かれたもの、すなわち、
ひずめの全く切れたもの、
反芻するものは、
これを食べることができる。
ただし、反芻するもの、または
ひずめの分かれたもののうち、
次のものは食べてはならない。
すなわち、らくだ……岩たぬき
……野うさぎ、これは
反芻するけれども、
ひずめが分かれていないから、
あなたがたには
汚れたものである。
豚、これは、ひずめが
分かれており、ひずめが
全く切れているけれども、
反芻することをしないから、
あなたがたには
汚れたものである。
あなたがたは、これらのものの
肉を食べてはならない。
またその死体に
触れてはならない。
(『レビ記』第一一章一―八)」



荒俣宏 神聖自然学 07


「鳥のうち、
次のものは、
あなたがたに
忌むべきものとして、
食べてはならない。
それらは忌むべきものである。
すなわち、
はげわし、ひげはげわし、
みさご、とび、はやぶさの類、
もろもろのからすの類、
だちょう、
よたか、
かもめ、
たかの類。
(『レビ記』第一一章一三―一六)」



荒俣宏 神聖自然学 08


「わたしの息が
わたしのうちにあり、
神の息がわたしの鼻にある間、
わたしのくちびるは
不義を言わない、
わたしの舌は
偽りを語らない。
(『ヨブ記』第二七章三―四)」



荒俣宏 神聖自然学 13


「あなたは
雪の倉にはいったことがあるか。
ひょうの倉を見たことがあるか。
これらは悩みの時のため、
いくさと戦いの日のため、
わたしが
たくわえて置いたものだ。
(『ヨブ記』第三八章二二―二三」



荒俣宏 神聖自然学 09


「あなたは
罪を責めて人を懲らされるとき、
その慕い喜ぶものを、
しみが食うように、
消し滅ぼされるのです。
まことに
すべての人は息にすぎません。
主よ、
わたしの祈を聞き、
わたしの叫びに耳を傾け、
わたしの涙を見て、
もださないでください。
わたしは
あなたに身を寄せる旅びと、
わがすべての先祖たちのように
寄留者です。
(『詩篇』第三九篇一一―一二)」



荒俣宏 神聖自然学 10


「民のうちの鈍き者よ、
悟れ。
愚かな者よ、
いつ賢くなるだろうか。
耳を植えた者は
聞くことをしないだろうか、
目を造った者は
見ることをしないだろうか。
(『詩篇』第九四篇八―九)」



荒俣宏 神聖自然学 11


「あなたの若い日に、
あなたの造り主を覚えよ。
悪しき日がきたり、
年が寄って、
「わたしには
なんの楽しみもない」と
言うようにならない前に、
また日の光や、
月や星の暗くならない前に、
雨の後に
また雲が帰らないうちに、
そのようにせよ。
(『伝道の書』第一二章一―二)」



荒俣宏 神聖自然学 12


「その日、
主は堅く大いなる強いつるぎで
逃げるへびレビヤタン、
曲りくねるへびレビヤタンを
罰し、
また海におる竜を殺される。
(『イザヤ書』第二七章一)」





こちらもご参照ください:

エドワード・ゴーリー 『ウエスト・ウイング』
マックス・エルンスト 『百頭女』 巌谷国士 訳 (眼は未開の状態にある叢書)
 

















































































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

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