荒俣宏 『大東亞科學綺譚』

「それにしても、西村真琴はどういう理由で人造人間の製作を思いたったのだろうか。むろん労働の代役をさせる機械奴隷を生みだすためではない。「深い理想をこめた」この製作物は「生物の発生と進化にならう」ものだ。「奴隷的人造人間のみを作って喜ぶというのは、天地の傑作である人間を真似て作る態度として、すこし淋しすぎはしないか」。だから彼は「人種的の差別を超越」した顔をもつ、考えることと微笑むことしかしないロボットを作った――。」
(荒俣宏 「人造人間は微笑する」 より)


荒俣宏 
『大東亞科學綺譚』


筑摩書房
1991年5月21日 初版第1刷発行
444p 口絵(カラー)viii 
20×16cm
丸背紙装上製本 カバー
定価2,880円(本体2,796円)
造本: 祖父江慎



初出: 「OMNI日本版」1986年11月号~87年8月号、88年5月号、89年1月号。
本文中図版(モノクロ)多数。


荒俣宏 大東亜科学綺譚 01


帯文:

「飛べよかし!
超人間の産みの親・西村真琴、火星人たる心構えを説いた原田三夫、絶滅鳥学と架空鳥学をうちたてた蜂須賀正氏、海産脊椎動物に熱中された昭和天皇――未知に憧れた独創の科学者たちの、不思議でキュートな冒険譚のかずかず。
前の世の夢まぼろしよ」



荒俣宏 大東亜科学綺譚 07


帯裏:

「奇妙なことに、これまでの科学史では、公共部分だけが問題となり、私有物に光を当てようとしなかった。だから、独創的だったり大規模すぎる思想を持った人々は必然的に埋もれるしかなかたtのだ。私有部分のすごさ、壮大さを比べるという評価法がなかったためである。……けれども、科学をもともと個人の夢、個人の積み木遊び、その全部をけっして世界で共有することのでいぬ生産物と見るかぎり、私有物はユニークであればあるほど輝き始める。詩人とその作品、魔法使いとその魔力が、本人だけの所有物だったのと同じように。――前口上より」


荒俣宏 大東亜科学綺譚 02


目次:

前口上 まぼろしの日本科学再訪

第一部 日本科学と少年科学
 人造人間は微笑する――万能科学者・西村真琴
  胸にコスモスの花
  満州のマムシ、中国のハト
  保育曼陀羅
 火星の土地を賣つた男――科学啓蒙家・原田三夫
  科学漫画の謎
  火星の土地を売り出した男
  日本ポピュラー・サイエンスの誕生
  子どもはみんな科学者だった
  科学啓蒙の試みまで
  原田三夫の私的な生涯
 冷凍を愛した熱血漢――発明事業家・星一
  代用科学の神髄
  星一の生い立ち
  腐敗しない粉の秘密
  頭脳動員を提案した人
  最大の危機と強制和議
  大規那帝国を夢みて
第二部 忘れられた科学の復活
 江戸の幻獸事典――博物学者・高木春山
  海中花採集記
  江戸の基本科学、博物学
  好奇心探偵団
 まぼろしの大東亞博物館――中井猛之進と“ある執念”
  明治十六年「水産博覧会」のこと
  地下に眠る博物館の夢
  一家三代の奇縁
  植物学者の父と子のまなざし
  まぼろしの博物館は生まれた
 よみがえる德川政治――徳川義親と昭南博物館
  虎狩りの殿さま
  私設研究所の黎明
  昭南の奇跡
  南方こそユートピア
 絶滅鳥を愛した探險家――蜂須賀正氏と冒険博物学
  運命の論文
  ドードーの呪いか?
  冒険華族とコスモポリタンの挫折
  破格の学風を樹てた人
  有尾人をもとめて
 大和魂を科學した人――駿河湾の生物学者・中沢毅一
  富士川が育てるエビ
  アナロジーの生物学者
  大和魂の生物学的解明
 南洋の若き學徒たち――畑井新喜司とパラオ熱帯生物研究所
  内南洋に夢みた人々
  若き研究者たちの熱帯
  大東亜の科学
  ユートピアの終焉
第三部 やんごとなき科学者たち
 昭和天皇とアメフラシ――呪儀と科学のあいだ
  自然への感謝の念
  博物学開眼
  アメフラシを食べられる
  “怪物”の正体やいかに…
  博物学と農耕儀礼
  〈嘗(な)めること〉の意味
 ラストエンペラーの熱帶魚飼育――満州・中国のナチュラリスト
  皇帝という名の囚われ人
  空前の熱帯魚ブーム起こる
  皇帝の博物学教師となる
  戦争下の日中共同研究

あとがき
協力者名一覧

著者略歴
初出一覧



荒俣宏 大東亜科学綺譚 03



◆本書より◆


「前口上」より:

「科学というのは、ひょっとしたら元来「私有物」にすぎなかったのかもしれない。個々人のプライベートな積木遊びだったのかもしれない、と思いはじめた。近代日本の科学史にほとんど語られずに埋もれていった破格の人々を追いかけているうちに。」
「ある人が徹底的に科学に生きようとするとき、かれが生涯を通じて達成した成果は、たぶん単純な原理や真理や法則の発見、技術の開発には還元できないということだ。そこには本人の性格やら生きざまやら運命が目にみえぬ形でこびりつき、結局その人自身の生産物として世に残される。万有引力なら万有引力でいいが、ぼくたちに理解できるのはニュートンが生産した理論全体の何分の一かにすぎない。残りの部分は科学の理論というよりもかれの信条や個性のほうに属する。つまり私有物の部分なのである。
 ところが奇妙なことに、これまでの科学史では、公共部分だけが問題となり、私有物に光を当てようとはしなかった。だから、独創的だったり大規模すぎる思想を持った人々は、必然的に埋もれるしかなかったのだ。私有部分のすごさ、壮大さを比べるという評価法がなかったためである。
 けれども、科学をもともと個人の夢、個人の積木遊び、その全部を決して世界で共有することのできぬ生産物と見るかぎり、私有物はユニークであればあるほど輝きはじめる。」
「われわれには今、そうした豊潤な私有部分を持った奥行きの深い科学者たちの物語に、耳をかたむけてみるときがきたのかもしれない。」




荒俣宏 大東亜科学綺譚 04


「●星一が会社乗っ取り事件を強制和議のかたちで乗りきったとき、記念にくばった新しい福神〈ダーピー〉。この神の霊効はあらたかで、急病に倒れた〈国士〉杉山茂丸も蘇生したという。」


荒俣宏 大東亜科学綺譚 06


「●東京・文京区にある小石川植物園パームハウス(椰子温室)に立つ、作家中井英夫氏。ここは祖父堀誠太郎と父中井猛之進に関係深い場所だ。」


荒俣宏 大東亜科学綺譚 05


「●小石川植物園の本館は、昭和十二年に着工し十四年に竣工している。植物園はすでに植物学教室と切り離されていたが、教授と園長を兼ねる中井猛之進は、何度もこのドアノブを回して園長室に向かったに違いない。」





















































































































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

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