高橋睦郎 『漢詩百首』 (中公新書)

高橋睦郎 
『漢詩百首
― 日本語を豊かに』
 
中公新書 1891 

中央公論新社
2007年3月25日 初版
2007年4月25日 再版
xii 248p
新書判 並装 カバー
定価780円+税



本書「おわりに」より:

「この小冊では、日本語を豊かにしてきた漢詩漢文のうち、とくにその精髄というべき漢詩の美と力を再認識すべく、中国の旧詩六十人、日本の漢詩人四十人の作品を取りあげて読みなおし、併せて中国・日本それぞれの漢詩の歴史がわかるように努めた。原詩の白文を省き、韻と平仄の説明を割愛、読み下しのみとしたのは、一篇一見開きというスペースの制限によるところが大きいが、そのことによって漢詩が日本語の大切な宝であることが見えることにもなった、と思う。また訳文をできるだけ原文の文字を生かしてしかも自由な現代日本語にすることを試みた。」
「巻末の「漢詩への感謝」は(中略)二〇〇五年秋、北京大学中国文学教室での小講演をもとにしたもの。」



高橋睦郎 漢詩百首


カバーそで文:

「返り点と送り仮名の発明によって、日本人は、ほんらい外国の詩である漢詩を自らのものとした。その結果、それを鑑賞するにとどまらず、作詩にも通暁する人物が輩出した。本書は、中国人六〇人、日本人四〇人の、古代から現代に及ぶ代表的な漢詩を精選し、詩人独自の読みを附すとともに、詩句の由来や作者の経歴、時代背景などを紹介。外国文化を自家薬籠中のものとした、世界でも稀有な実例を、愉しみとともに通読する。」


目次:

はじめに

一 逝く者は斯夫の如きか   『論語』子罕篇 孔子
二 知らず 周の夢に胡蝶と為るか   『荘子』斉物論篇 荘子
三 国に人無く 吾を知る莫し   離騒 屈原
四 悲しい哉 秋の気為るや   九弁 宋玉
五 力 山を抜き 気 世を蓋う   垓下の歌 項羽
六 楼船を汎べて汾河を済り   秋風の辞 漢武帝
七 吁嗟 此の転蓬 世に居る   吁嗟篇 曹植
八 夜中 寐る能わず   詠懐詩 阮籍
九 荏苒 冬春去り   悼亡詩 潘岳
一〇 吾が家に嬌女有り   嬌女詩 左思
一一 廬を結んで人境に在り   飲酒 陶淵明
一二 潜虬 幽姿を媚び   池上楼に登る 謝霊運
一三 渠碗 佳人を送り   金谷の聚い 謝朓
一四 楡関 音信断ち   詠懐に擬す 庾信
一五 前に古人を見ず   幽州台に登る歌 陳子昂
一六 葡萄の美酒 夜光の杯   涼州詞 王翰
一七 年年歳歳 花相似たり   白頭を悲しむ翁に代る 劉希夷
一八 春眠 暁を覚えず   春暁 孟浩然
一九 独り坐す 幽篁の裏   竹里館 王維
二〇 朝に辞す 白帝 彩雲の間   早に白帝城を発つ 李白
二一 細草 微風の岸   旅夜懐いを書す 杜甫
二二 十里の黄雲 白日曛し   董大に別る 高適
二三 馬を走らせ西来   磧中の作 岑参
二四 閨中の少婦 愁いを知らず   閨の怨み 王昌齢
二五 渓上の残春 黄鳥稀なり   暮春故山の草堂に帰る 銭起
二六 猿啼き 客散ず 暮江の頭   裴郎中を送る 劉長卿
二七 独り憐れむ 幽草 澗辺に生ずるを   滁州西澗  韋応物
二八 父兮 児寒えたり   履霜操 韓愈
二九 慈母 手中の線   遊子の吟 孟郊
三〇 千山 鳥の飛ぶこと絶え   江雪 柳宗元
三一 酒旗相望む 大堤の頭   堤上の行 劉禹錫
三二 新豊の老翁 八十八   新豊の折臂翁 白居易
三三 残灯 焰無くして 影幢幢   楽天のことを聞く 元稹
三四 一方黒照らさる三方の紫に   北方寒 李賀
三五 江湖に落魄 酒を載せて行く   懐を遣る 杜牧
三六 錦瑟 端無くも 五十絃   錦瑟 李商隠
三七 星斗稀に 鐘鼓歇み   更漏子 温庭筠
三八 中和癸卯 春三月   秦婦吟 韋荘
三九 閑夢 遠し 南国 正に芳春   望江梅 李煜
四〇 飛烏 日に先んじて出ず   鴉有り蛆を啄む 梅堯臣
四一 昆夷 道遠くして復た通ぜず   日本刀歌 欧陽修
四二 柔桑採り尽して緑陰稀に   郊を行く 王安石
四三 余生 老いんと欲す 海南の村   澄邁駅通潮閣 蘇軾
四四 霜須八十 同じく老いんことを期す   宜陽に元明に別る 黄庭堅
四五 去って遠ければ即ち相忘るるも   三子に示す 陳師道
四六 山瓢を把つを愛す 儂を笑う莫れ   詩を尋ねる 陳与義
四七 書生の習気 尽く駆除し   仲秋書事 陸游
四八 草は離宮を合せ 夕暉転ず   金陵駅 文天祥
四九 平生 何ぞ曾て稗官有りしや   中州集の後に自ら題す 元好問
五〇 旧て説う 榕郷は好しと   初めて閩に到る 薩都剌
五一 青邱子 臞せて清し   青邱子の歌 高啓
五二 是れ官にして紳を垂れず   人日に自ら笑う 袁宏道
五三 平生を誤り尽すは 是れ一官   自ら嘆ず 呉偉業
五四 秋来 何れの処か 最も銷魂   折楊柳 王士禎
五五 白日 到らざる処   苔 袁枚
五六 楼閣 参差として 未だ灯を上さず   雑詩 龔自珍
五七 千声の簷鉄 百の淋鈴   夜に起きて 黄遵憲
五八 昨夜 書中に故紙を得   故紙に書く 王国維
五九 酒を把り 当世を論ずるも   范愛農哀歌 魯迅
六〇 九嶷山上 白雲飛び   友人に答える 毛沢東
六一 春従り秋に至るまでは 農桑之節なり   憲法十六 聖徳太子
六二 金烏 西舎に臨らい   終りに臨む 大津皇子
六三 閑林に独坐す草堂の暁   後夜仏法僧鳥を聞く 釈空海
六四 春日 江辺 何の所か好き   江辺の草 嵯峨天皇
六五 宿昔は猶し枯木のごとかりしに   桜花を惜しむ 島田忠臣
六六 我は遷客為り 汝は来賓   旅雁を聞く 菅原道真
六七 旅舶君に逢いて 涙窮まらず   傀儡子孫君 大江匡房
六八 夏来りて偏に愛る覆盆子   覆盆子を賦す 藤原忠通
六九 生死憐むべし雲の変更   閑居偶作 道元
七〇 觜頭の尖穎は錐に斉しく   蚊 虎関師錬
七一 中宵に夢破れて響浪浪たるは   熱海 中巌円月
七二 新年も日月は只尋常なるに   歳朝に客を謝して作る 義堂周信
七三 風物眼前 朝暮を愁え   赤間が関 絶海中津
七四 菴に住むこと十日にして意忙忙   養叟和尚に寄す 一休宗純
七五 梧館の秋風 夢魂を驚せば   落葉雨と墜ち来る 藤原惺窩
七六 身衰え齢将に終きんとす   夏の夜の病吟 石川丈山
七七 夏日炎炎 長きを奈んともする無し   夏日の作 釈元政
七八 金井の梧桐に白露浮べば   桐葉秋を告ぐ 徳川光圀
七九 楊柳の花は飛んで江水に流れ   春日の作 新井白石
八〇 門巷 江に随って曲れば   江上の田家 荻生徂徠
八一 行 水駅に臨んで前程を問えば   渡口の柳 梁田蛻巌
八二 千里 剣に依って去り   偶作 祇園南海
八三 祖道 功無くして 古稀に垂んとす   売茶偶成 売茶翁
八四 義刑 末減に従う   寓興 亀井南冥
八五 閭巷に人は奔走しつつ   路人の話を記す 菅茶山
八六 袖裏の毬子 直千金   毬子 大愚良寛
八七 螙冊紛披して煙海深し   修史偶題 頼山陽
八八 道うを休めよ 他郷 苦辛多しと   諸生に示す 広瀬淡窓
八九 嘔血 歳残 枕に憑るの時   血を嘔いて戯れに作る 江馬細香
九〇 水煙漠漠として望めども分ち難し   十三夜 原釆蘋
九一 今来も古往も事は茫茫   芳野懐古 梁川星巌
九二 一陣の狂風 雷雨の声   客舎に雨を聞く 西郷南洲
九三 漕河百道 江に入って流れ   威尼斯 成島柳北
九四 望断す鵠山城外の雲   無題 森鴎外
九五 皇師百万 強虜を征す   凱旋感有り 乃木静堂
九六 馬鹿野郎 糞野郎   無題 正岡子規
九七 死死生生 万境開く   無題 夏目漱石
九八 黄浦江頭 瑟瑟たる波   滬遊雑吟 永井荷風
九九 多少の波瀾 六十七年   辞世に擬す 河上肇
一〇〇 地涯 白雪を呼び   庚戌元旦偶成 鷲巣繁男

対談 漢詩は日本語の財産 (高橋睦郎・鈴木健一)
漢詩への感謝
おわりに




◆本書より◆


「馬鹿野郎(ばかやろう) 糞野郎(ばばやろう)、一棒(いちぼう)打(たた)き尽(つく)す金剛王(こんごうおう)を。再(ふたた)び過(よ)ぎる五台山下(ごだいさんか)の路(みち)、野草(やそう)花開(はなひら)いて風(かぜ)自(おのずか)ら涼(りょう)。
                         無題 正岡子規(まさおかしき)

 馬鹿野郎め 糞野郎め、(金剛智)金剛王なんてやつは棒の一打ちで尽(こなごな)にしてやれ。しかるのち(かの霊山)五台山下の路を再過(もいちどいきす)ぎてみろ、野の草ことごとく花開いて風は自(おのずか)ら涼しいかぎりよ。」

「掲詩は死の年、明治三十五年作。禅僧の遺偈(ゆいげ)に準(なら)って、死に臨む感懐を吐露した。『病牀六尺(びょうしょうろくしゃく)』には「余は今迄禅宗の所謂(いわゆる)悟りといふ事を誤解してゐた。悟りといふ事は如何なる場合にも平気で死ぬる事かと思つて居たのは間違ひで、悟りといふ事は如何なる場合にも平気で生きて居る事であつた」ともいう。」





こちらもご参照ください:

柏木如亭 著/揖斐高 校注 『訳注聯珠詩格』 (岩波文庫)























































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