小島憲之 編 『王朝漢詩選』 (岩波文庫)

「勿論同人與異人
鏡中鏡外兩般身」

(島田忠臣 「照鏡」 より)


小島憲之 編 
『王朝漢詩選』
 
岩波文庫 黄/30-036-1 

岩波書店
1987年7月16日 第1刷発行
473p 
「作者小伝」「出典一覧」10p
文庫判 並装 カバー
定価700円



本書「凡例」より:

「本書は、日本漢詩の中から、王朝すなわち平安時代を中心に、それ以前(奈良時代)を含め、七世紀から一二世紀に及ぶ時代の、数にして三〇〇〇余首より一七〇首を選んだものである。」
「訓読文は旧かなづかいとした。」



王朝漢詩選


カバー文:

「「漢詩」という外来の文体に、詩才を競いあって生まれた王朝の漢詩は、漢字による表現の困難さを克服しつつ、王朝びとの詩心を表出した成果にほかならない。7~12世紀に創られた詩は3000余首にものぼる。その中から170首を厳選、訓読文と現代語訳・注釈を付し、先人たちの巧みなまた愛すべき詩を味読できるよう配慮した。」


目次:

凡例

一 王朝以前の漢詩
1 述懷 大友皇子
2 遊猟 大津皇子
3 臨終 大津皇子
4 山齋 中臣大島
5 述懷 文武天皇
6 望雪 紀古麻呂
7 七夕 山田三方
8 於寶宅宴新羅客 賦得烟字 長屋王
9 秋日於長王宅宴新羅客 賦得稀字 刀利宣令
10 在常陸贈倭判官留在京 藤原宇合
11 遊吉野川 藤原宇合
12 過神納言墟 藤原萬里
13 和藤江守詠裨叡山先考之舊禅處柳樹之作 麻田陽春
14 飄寓南荒贈在京故友 石上乙麻呂
15 秋夜閨情 石上乙麻呂
16 晩春三日遊覧 大伴池主
17 銜命使本國 阿倍仲麻呂

二 王朝の漢詩
〔前期〕
18 賦櫻花 平城天皇
19 神泉苑花宴賦落花篇 嵯峨天皇
20 春日遊猟日暮宿江頭亭子 嵯峨天皇
21 和左金吾將軍藤緒嗣交野離宮感舊作 嵯峨天皇
22 和左衞督朝嘉通秋夜寓直周廬聽早雁作 嵯峨天皇
23 江頭春曉 嵯峨天皇
24 江邊草 嵯峨天皇
25 夏日臨泛大湖 嵯峨天皇
26 賦得隴頭秋月明 嵯峨天皇
27 和内史貞主秋月歌 嵯峨天皇
28 神泉苑九日落葉篇 嵯峨天皇
29 鞦韆篇 嵯峨天皇
30 淸涼殿畫壁山水歌 嵯峨天皇
31 奉和江亭曉興呈左神策衞藤將軍 淳和天皇
32 春日侍嵯峨山院探得廻字應製 淳和天皇
33 餞美州掾藤吉野得花字 淳和天皇
34 和菅祭酒秋夜途中聞笙之什 藤原冬嗣
35 奉和翫春雪 藤原冬嗣
36 早舟發 仲雄王
37 奉和春日江亭閑望 仲雄王
38 尋良將軍華山庄將軍失期不在 仲雄王
39 彘肩詞 仲雄王
40 留別故人 賀陽豊年
41 別諸友人唐 賀陽豊年
42 傷野將軍 賀陽豊年
43 奉和觀佳人蹋歌御製 小野岑守
44 奉和聖製春女怨 小野岑守
45 奉和傷右近衞大將軍坂宿禰御製 小野岑守
46 遠使邊城 小野岑守
47 留別文友 小野岑守
48 歸休獨臥寄高雄寺空上人 小野岑守
49 五夜月 良岑安世
50 暇日閑居 良岑安世
51 冬日汴州上源驛逢雪 菅原清公
52 奉和侍中翁主挽歌詞二首 菅原清公
53 賦得絡緯無機織應製 菅原清公
54 奉和御製江上落花詞 菅原清公
55 早春田園 淡海福良満
56 被譴別豐後藤太守 淡海福良満
57 夕次播州高砂湊 淡海福良満
58 渉信濃坂 坂上今継
59 和渤海大使見寄之作 坂上今継
60 和菅祭酒賦朱雀衰柳作 多治比清貞
61 伏枕吟 桑原宮作
62 奉和聽擣衣 桑原腹赤
63 奉和傷野女侍中 桑原腹赤
64 觀鬪百草簡明執 滋野貞主
65 奉和觀落葉 滋野貞主
66 臨春風效沈約體應製 滋野貞主
67 和進士貞主初春過菅祭酒舊宅恨然傷懷之作 巨勢識人
68 奉和春日江亭閑望 巨勢識人
69 秋日別友人 巨勢識人
70 奉和春閨怨 巨勢識人
71 和伴姫秋夜閨情 巨勢識人
72 和滋内史奉使遠行觀野燒之作 巨勢識人
73 奉和春閨怨 朝野鹿取
74 題光上人山院 錦部彦公
75 晩秋述懷 姫大伴氏
76 冷然院各賦一物得水中影應製 桑原広田麻呂
77 在唐觀昶法和尚小山 釈空海
78 後夜聞佛法僧鳥 釈空海
79 九想詩(白骨連相) 釈空海
80 奉和除夜 公主有智子
81 春日山莊探得塘光行蒼 公主有智子
82 閑庭雨雪 仁明天皇
83 和良將軍題瀑布下蘭若簡淸大夫之作 源弘
84 秋雲篇示同舎郎 小野篁
85 賦得深山寺應太上天皇制 惟良春道
86 奉和擣衣引 惟氏
87 奉試賦得王昭君 小野末嗣
88 奉試詠塵 六韻爲限 中臣良檝
89 夜聽擣衣 楊泰師
90 和坂領客對月思郷見贈之作 王孝廉
〔中期〕
91 秋夜臥病 都良香
92 花宴應常陸王教 島田忠臣
93 惜櫻花 島田忠臣
94 三月晦日送春感題 島田忠臣
95 病後閑座偶吟所懷 島田忠臣
96 七月一日 島田忠臣
97 早秋 島田忠臣
98 秋日感懷 島田忠臣
99 賦得秋織 島田忠臣
100 見蜘蛛作網 島田忠臣
101 照鏡 島田忠臣
102 元慶七年春大相賜文馬有感自題 島田忠臣
103 花前有感 島田忠臣
104 見叩頭蟲自述寄宋先生 島田忠臣
105 八月十五夜月前話舊各分一字 探得心 菅原道真
106 雪中早衙 菅原道真
107 海上月夜 于時祈神到越州 菅原道真
108 春日過丞相家門 菅原道真
109 夏夜於鴻臚館餞北客歸郷 菅原道真
110 夢阿滿 菅原道真
111 中途送春 菅原道真
112 寒早 菅原道真
113 春盡 菅原道真
114 到河陽驛有感而泣 菅原道真
115 冬夜閑居話舊以霜爲韻 菅原道真
116 四年三月二十六日作 菅原道真
117 言子 菅原道真
118 獨吟 菅原道真
119 野村火 菅原道真
120 殘燈 菅原道真
121 七月七日代牛女惜曉更各分一字應製 探得程字 菅原道真
122 重陽後朝同賦秋雁櫓聲來應製 菅原道真
123 詩友會飲同賦鶯聲誘引來花下 菅原道真
124 對殘菊待寒月 菅原道真
125 不出門 菅原道真
126 聞雁 菅原道真
127 秋夜 九月十五日 菅原道真
128 燈滅二絶 菅原道真
129 謫居春雪 菅原道真
130 見右丞相獻家集 醍醐天皇
131 山家秋歌 越調 紀長谷雄
132 春風歌應製 紀長谷雄
133 贈筆呈裴大使 大江朝綱
134 月影滿秋池 菅原淳茂
135 秋夜待月 菅原文時
136 重賦雲字 橘在列
137 詠白 源順
138 憶龜山二首 效江南曲體 兼明親王
139 病累 善宗
140 初蝉纔一聲 以心爲韻 一條天皇
141 秋花先秋開 具平親王
142 過秋山 具平親王
143 題故工部橘郎中詩卷 具平親王
144 暮春於右尚書菅中丞亭同賦閑庭花自落 以心爲韻 大江以言
145 晩秋遊淸水寺上方 藤原道長
146 左右好風來 以涼爲韻 藤原道長
147 夏月勝秋月 藤原公任
148 花落掩靑苔 以閑爲韻 高階積善
149 雨爲水上絲 以浮爲韻 藤原為時
150 題玉井山莊 藤原為時
〔後期〕
151 紅櫻花下作 藤原明衡
152 傀儡子孫君 大江匡房
153 賦牡丹花 大江匡房
154 見賣炭婦 三宮輔仁親王
155 聞大宋商人獻鸚鵡 大江佐国
156 微月浮江上 分一字 藤原忠通
157 賦覆盆子 藤原忠通
158 重賦畫障詩 藤原忠通
159 運轉老時至 藤原忠通
160 秋月詩 源経信
161 賦薔薇 源時綱
162 秋夜書懷呈左金吾員外次將之閣下 藤原基俊
163 山家春意 藤原周光
164 書窓言志 藤原周光
165 六月祓 藤原茂明
166 賦郭公 釈蓮禅
167 於室泊即事 釈蓮禅
168 爐邊淸談 釈蓮禅
169 冬日向故右京兆東山之舊宅視聽所催潸然而賦矣 釈蓮禅
170 賦雪 釈蓮禅

解説
参考詩一覧
出典一覧
詩人小伝




◆本書より◆


「91 秋夜臥病 (秋夜(しゅうや)病(やまい)に臥(ふ)す) 都良香(みやこのよしか)
 秋の夜やまいに伏して。

臥病獨悽悽   病(やまひ)に臥(ふ)して 独(ひと)り悽悽(せいせい)たり、
寂然人事睽   寂然(じゃくねん)として 人事(じんじ)睽(そむ)く。
階前無履跡   階前(かいぜん) 履跡(りせき)無(な)く、
門外斷賓蹊   門外(もんぐわい) 賓蹊(ひんけい)断(た)つ。
忽歎浮生苦   忽(たちま)ちに浮生(ふせい)の苦(くるしび)を歎(なげ)く、
寧知與物齊   寧(なん)ぞ物(もの)と斉(ひと)しきことを知(し)らんや。
形容信非實   形容(けいよう) 信(まこと)に実(じつ)に非(あら)ず、
魂魄怳如迷   魂魄(こんぱく) 怳(うつ)けて迷(まよ)ふが如(ごと)し。
夜久風威冷   夜(よる)久(ひさ)しく 風威(ふうゐ)冷(ひや)やかに、
窓深月影低   窓(まど)深(ふか)く 月影(げつえい)低(ひく)し。
憂愁不能寐   憂愁(いうしう) 寐(ぬ)ること能(あた)はず、
長短聽鳴鷄   長短(ちやうたん) 鳴鶏(めいけい)を聴(き)く。

病床に臥してひとりわが身をいたましく思う、煩わしい世間の事に背(せ)をむけた静けさの中にあって。
きざはしの前には人の足跡もなく、門の外は客の来る小径(こみち)も消えて人影もない。
ゆくりなくもはかない人生の苦しみを歎く、どうして自分は他の物とひとしいことを知ろうか、苦しみはわが身のみ。
顔かたちはやつれてほんとに実物とはちがい、魂魄(たましい)はぼんやりとしてものに迷うような有様だ。
秋の夜は長く吹く風のいきおいはつめたく、窓は深くてさしこむ月の光は低くたれる。
憂いつつねむられず、長くまた短く鳴く鶏(かけ)の声に耳をかたむけるばかり。」


「101 照鏡 (鏡(かがみ)に照(て)らす) 島田忠臣(しまだのただおみ)
 鏡にわが身を照らして。

勿論同人與異人   論(あげつら)ふこと勿(なか)れ 同人(どうじん)と異人(いじん)と、
鏡中鏡外兩般身   鏡中鏡外(きやうちゆうきやうぐわい) 両般(りやうはん)の身(み)。
閑亭獨坐無遊伴   閑亭(かんてい)独坐(どくざ) 遊伴(いうはん)無(な)し、
毎覓交朋發鏡頻   交朋(かうほう)を覓(ま)ぐ毎(ごと)に 鏡を発(ひら)くこと頻(しき)る。

鏡に写るのは同じ人かそれとも別人かなどと議論してもはじまらない、鏡の中と鏡の外には二つのべつべつの身が存在しているから。
ひっそりした亭(ちん)にひとり坐っているわたしには遊ぶ友もいない、そうしたときなど交際すべき朋友を求めるたびにしきりに鏡を開いて写る影を友とする。」





































































































































































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◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

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分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

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