フランツ・シュミット 『ある首斬り役人の日記』 藤代幸一 訳 (白水Uブックス)

フランツ・シュミット 
『ある首斬り役人の日記』 
藤代幸一 訳
 
白水Uブックス 1064

白水社
2003年11月20日 印刷
2003年12月10日 発行
245p
新初判 並装 カバー
定価950円+税
ブックデザイン: 田中一光/プラスミリ
カバー装画: 斬首刑を執行する首斬り役人


「本書は1987年に単行本として小社から刊行された。」



本書「訳者まえがき」より:

「本書は左記の翻訳である。
 Das Tagebuch des Meister Franz, Scharfrichter zu Nürnberg (Nachdruck der Buchaugabe von 1801). Kommentar von Jürgen Carl Jakobs und Heinz Rölleke, Harenberg Kommunikation, Dortmund 1980.
 正式な題名は『ニュルンベルクの死刑執行人フランツ親方(マイスター)の日記』である。(中略)これは十六世紀後半から十七世紀にかけての、一刑吏の克明な記録である。剣と綱で生涯に三六一人を刑場の露と消えさせたフランツ親方の、五八四篇にのぼる編年体日記である。」
「フランツ親方は日記を書くに当たって、極力個人的感情を排し、処刑者の罪状、刑の執行と方法など冷厳な事実のみを記している。(中略)本書は第一部「死刑篇」と第二部「体罰篇」の二部に分かれている。第一部には盗みや強盗をはじめとして、女性の嬰児殺し、放火、毒殺、贋金作り、文書偽造、売春、近親相姦、獣姦、同性愛などが、赤裸々にしかも淡々と描かれ、当時の犯罪の壮大な一覧表となっている。死刑の方法としては剣による斬首刑、綱による絞首刑、車による車裂きの刑、溺死刑であった。(中略)第二部はいわゆる軽犯罪で、盗みや売春、重婚などが扱われている。体罰の方法としては枝笞による笞打ち刑が主で、その他、両頬への烙印押し、柱につないでのさらし者、指の切り落とし、耳そぎである。」
「地図、挿絵、事項索引、カコミの小解説は原著にないが、(中略)訳者が付けた。」



ある首斬り役人の日記 01


カバー裏文:

「中世末期のニュルンベルクの町で生涯に361人を刑場の露と消えさせた首斬り人フランツ親方が克明に記した日記。当時のあらゆる犯罪と刑罰が赤裸々に描かれた貴重な史料であると同時に、中世に生きる人々の興味深い人間ドラマでもある。」


目次:

訳者まえがき

序言 (J・M・F・v・エンター)

ある首斬り役人の日記 第一部

文化史的・法制史的解説 (J・C・ヤーコプス)

ある首斬り役人の日記 第二部

文学史と民俗学からの解説 (H・レレケ)

訳注
事項索引



ある首斬り役人の日記 02



◆本書より◆


本書「第一部」より:

「一五七七年が始まる」

二二 ニコラウス・シュテラー、アイツフェルト出身(中略)。仲間のズンベルク出身のフィラ及びゲオルク兄弟(二人はコーブルクにて四つ裂きの刑に合う)と共に殺人八件を犯した人殺し。最初は馬上の男を撃ち殺した。次に妊婦を生きながらにして切り開いたが、胎児は死んでいた。三番目は同じく胎内に女児を宿していた妊婦を切り開いた。四番目はまたしても妊婦で、彼女を切り開けば双生児の男の子は生きていた。ズンベルクのゲオルクが、おれたちは大罪を犯してしまった、こいつらは司祭の所へ連れて行って洗礼を受けさせてやろうと言った。しかしフィラは、おれが司祭になって奴らに洗礼してやると言いざま、赤児の脚をつかんで地面に叩きつけた。そのためバムベルク市からそりで放逐された。灼熱の火ばさみで彼らの身体を三度つまんだのだが、シュテラーはしかる後車裂きの刑に処した。」

「一五七八年が始まる」

三〇 七月二十一日、ハインツ・グローセン、別名怠け者ハインツ、追い剥ぎ。ニュルンベルク市にて剣で打ち首の刑に処した。私は同人を切り開いて腑分けをした。」

「一五八〇年が始まる」

四三 一月二十六日、デルフラーの娘マルガレータ、エーベルマンスシュタット出身。エルンストの娘エリーザベト、アンスバハ出身。ならびにレングの娘アグネス、アムベルク出身。以上三名は嬰児殺し。デルフラーの娘は砦の陰の庭園で子を産み、その赤児を生きながらにして雪の中に放置した。そのため赤児は地上で凍てつき死んだ。エルンストの娘はベーハイム家で子を産み、その赤児の小さな頭を押しつぶした上、長持の中に閉じこめた。レングの娘はさる銅細工師のもとで子を産んだが、その赤児の首筋を締め、金くずの山の中に埋め隠した。以上三名全員を剣で打ち首の刑に処し、首は絞首台に釘で打ちつけた。(中略)本来は三名を溺死刑に合わせるべきところ、すでに橋が開いていたのでそういうことになったのである。」

「一五八一年が始まる」

五九 八月十日、ゲオルク・シェルプフ、ホーエンシュタイン近郊エルム出身。彼は四頭の牝牛、二頭の仔牛、羊を相手にいかがわしい行為をしたか、かかわりをもった者である。フェレンにて獣姦者の廉で打ち首の上、牝牛とともに火刑に処した。」

「一五八五年が始まる」

九〇 二月十八日、ハンス・メラー、ゴステンホーフ出身、屋根葺き職人で、別名馬乗りヘンスラー。泥棒で、いかさま賭博師、また三人の女性を娶った。彼をニュルンベルク市にて絞首刑に処した。彼は法廷から立ち去り際、審判人たちに向かってこう言った。あばよ、お前たちは今おれを裁いているように、いつかは黒い悪魔を見る羽目になるこったろうよ。と見るからに不遜の態度をあらわにして連れ出されたが、絞首台で二つの歌を唄った。おれの年貢の納め時、神さまはいつでも好きなようにするがいい。」

「一五八七年が始まる」

一〇六 七月二十日、シュミットの娘ゲルドラウト、ファッハ出身、百姓の娘。彼女は実父と兄と四年間にわたりいかがわしい行為に耽った(中略)。お慈悲により打ち首の刑に処された。それから八日後、両人はランゲンツェンにて生きながらの火あぶりの刑に処された。」

「一五八八年が始まる」

一一八 九月三日、ゲオルク・ゾール、ニュルンベルク市出身、じゅうたん織工で、別名菓子職人。彼は捨て子の家で育った。しばしば庭園や民家に押し入り盗みを働いた泥棒であった。(中略)彼は当地にて絞首刑に処されたが、八日間しか吊るされなかった。彼は下半身をズボンごと切り落とされ、上半身はそのまま吊るされていた。しかし、ついに翌日すべて絞首台に投げ出された。余りにも忌まわしく見えたからである。」

「一五九四年が始まる」

一五八 七月二十三日、ハンス・シャッツ、がさつな針金作り職人。二人の針金作りの親方ドラメルおよびカンドラー方から、四年間にわたり針金を巧みに盗み出し、埋めて隠した。それを数ツェントナー掘り出し、ドラメル方では四十五グルデンで売り、残りはカンドラー方で十三グルデンで売った。同人をお慈悲により打ち首の刑に処した。」

「一五九五年が始まる」

一六五 十一月六日、ハンス・ジーゲルト、ノイエマルクト近郊のポリンゲン出身、百姓の下男。彼はジュンダーシュピールでズマーシュタインと称する仕立屋を、三角形の垣根の杭で打ち殺した。同人を当地にて打ち首の刑に処した。彼は刑場でひざまずくまで道中ずっと泣き続けていた。」

「一六〇二年が始まる」

二一五 九月十四日、ゲオルク・ブラウン、マンスフェルト出身。彼は蜜蜂・胡椒入りケーキ職人で、流れ者の剣客であった。」
「同人を当地にて剣で処刑した。その後たっぷり七、八分、彼の首は石の上であちらこちらを向き、さながら四方を見廻すかのように動いた。また、いかにも彼が何かしゃべりた気でもあるかのように、舌を動かし、口をあいた。私は今迄このようなことを一度も見たことがなかった。」

「一六一三年が始まる」

二七二 一月二十八日、ゲオルク・メルツ、レッテン出身、別名木槌。彼は現在ギッヘツェンホーフに住む泥棒で、実に多くの盗みを働いた。同人を絞首刑に処した。刑場へ引かれて行く時にはたらふく飲み食いして、奇妙な振る舞いをした。首を振って笑ってばかりいた。」



「文化史的・法制史的解説」(J・C・ヤーコプス)より:

「見物人の中には単なる衣類泥棒もあったが、処刑者の身体の各部を魔力あるものとして盗もうとする衝動にかられ、絞首台におけるあまたの屍体窃盗に走った者もいたことはまったく明白である。一五九一年六月十五日、フランツ親方によって簡単にしか報告されていない出来事について、ニュルンベルクの一聖職者の記述中にやや詳しい説明がある。「ところで彼が絞首刑にされた時、その夜のうちに絞首台で身ぐるみ剥がれて素裸にされ、ぼろぼろの靴下に至るまで奪い取られた。」
「医学用と魔術用に、とりわけ処刑者の脂肪、指、皮膚、睾丸が使われた。絞首用の縄は戦中にあっては引く手あまたのお守りだったし、泥棒の親指は博打(ばくち)打ちが財布に入れたり、宿のあるじがカウンターの後ろに置けば、大儲け間違いなしと信じられた。ザクセンでは一八三二年になってもまだ処刑者の屍が剥ぎ取られた。そこで監督官庁は早手廻しの埋葬を命じたほどだった。」





こちらもご参照ください:

阿部謹也 『刑吏の社会史 ― 中世ヨーロッパの庶民生活』 (中公新書)










































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