石井良助 『江戸の刑罰』 (中公新書)

石井良助 
『江戸の刑罰』
 
中公新書 31

中央公論社
昭和39年2月25日 初版
昭和61年2月5日 44版
vii 202p 口絵(モノクロ)i
新書判 並装 ビニールカバー
定価520円
装幀: 白井晟一



本書「まえがき」より:

「本書は江戸時代、ことに幕府の刑罰、牢屋および人足寄場について叙述したものである。」


本文中図版(モノクロ)多数。


石井良助 江戸の刑罰 01


帯文:

「苛酷な刑罰社会の実態を通して江戸時代を浮彫りにした奇書」


帯裏:

「一畳に十八人も詰めこまれ、中腰のまま眠る牢屋のなかでさかんに行われた密殺、入牢してきた目明しにご馳走する椀三杯の糞、そして、下される刑罰は敲、火焙、鋸挽など――。だが、現代人の想像を超えるその苛酷な現実のなかにも、刑罰理念は見懲から改悛奨励へと展開し、病気の囚人を収容する溜や無宿者の授産のための人足寄場などが設置されてくる。江戸時代の特色を刑罰社会の最底辺において探った奇書。」


目次:

まえがき

序 吟味から落着まで
 十両盗めば死刑
 見懲から改悛奨励へ
 “牢屋”のはたらき
 吟味、牢問、落着

Ⅰ 御仕置
 鈴ヶ森の露――生命刑
  首洗い料は金一分(下手人と死罪)
  肝とり朝右衛門
  木刀で切腹
  四尺板に獄門首
  火付には火罪
  見せ槍と止めの槍(磔)
  まねごとの鋸挽
 額に悪の文字――身体刑
  三分二筋の入墨
  のびてもかまわぬ剃髪刑
  数をまちがえて進退伺(敲)
 八丈島送り――自由刑
  高瀬舟の行方(遠島)
  四十八人の女犯僧(晒)
  江戸十里四方追放
  “門外不出”の刑
  油ではずれる手鎖
  飼殺の囚人(過怠牢、永牢)
 とりあげの刑――財産刑、身分刑、栄誉刑
  闕所と過料
  心中すれば非人手下
  強制隠居
 窃盗三度で死罪
 慶弔の御赦

Ⅱ 牢屋
 “小伝馬町”の塀の中
  お奉行所へシャモ入り
  牢屋敷の見取図
  牢屋の沙汰も身分次第
  世襲の囚獄、石出帯刀
  “地獄入り”の式
  女牢ではびろうども黒絹
  密告する牢内世話役
 格子の中の暮し
  牢内役人
  一畳に十八人詰
  “ご馳走”の私刑
  一日二度の盛相飯
  “詰の教え”
  名ばかりの薬で大量牢死
  病死ヶ輪を着る新入り
 シャバと牢屋
  届物
  干魚が運ぶ含み金
  買物、賄賂、博奕
  シャバを歩く楽しみ
  牢庭敲と牢内縄
  牢屋見廻の監察
  牢内巡廻を迎える“時の声”
  牢内は禁制品の山(牢内改)
  恋に狂って破牢の計画
  火事で三日のシャバ見物(切放)
 溜
  非人の作った囚人療養所
  脈をとるだけの診察

Ⅲ 人足寄場
 佐渡の水替人足
 無宿者収容所
 油絞りのノルマ
 水玉人足の生活
 寄場から徒刑場へ

参考文献案内
犯罪と刑罰の対照



石井良助 江戸の刑罰 02



◆本書より◆


「御仕置」より:

「首切り役は町同心の持役である。揚屋に入れられている者はどうしても町同心が切らなければならないが、平素切りなれていないので、ことのほかへただったという。科人が頸を縮めなどすると、刀が頭骨あるいは顎骨などに支えられて首が落ちず、科人が苦痛に堪えかねて、身体をそらすことがある。手伝人足もこまって、こういう時は科人の両足をひき、打ち伏せて首を挽き切った。
 しかし巧みな者もいた。後藤某という同心は打首の妙手であって、強雨の節などは片手で傘を携え、直立のまま、“小刀一下頭は前に飛び”衣服も雨に濡れないで、三、四人の首を瞬時にして切ってしまったという。」

「首切朝右衛門(浅右衛門とも書く)として有名な山田朝右衛門は、刀の御様(おためし)の御用をするのが本職であって、罪人の首斬役ではないが、首斬役を勤めることもある。」
「ある日朝右衛門が罪人の首を斬ろうとすると、首のところに「東照大権現」と文身(ほりもの)がしてあった。(中略)朝右衛門は切らずに、囚獄石出帯刀にこの旨を話して指図を求めた。帯刀は、にくらしい奴だが仕方がない、一命を助けてやれといい、その者は遠島刑になった。これを聞いて、ほかの悪徒がみな東照大権現の文身をやりだした。そこでその首を切るとき、ふたたび朝右衛門がどうしようかと帯刀に聞いたところ、仕方がない、文身のしてあるところだけズーッと切り取って、それから首を斬れ、といったので、悪党たちは、その後は首の皮をそがれるだけ痛い目にあったという話である。
 朝右衛門はまた、科人の胆(きも)を取ることがあったという。科人の首を打ち落し、裸にしてから仰向けにして、臍(へそ)の上を刀の先で五、六寸横に切り破ると、非人が手を入れて胆を取るのであるが、この時は血も出ないという。腹を切り破ると、朝右衛門は七、八寸の麻糸を非人に渡す。非人はこれを受け取って胆の真中を縛って取り出す。取り出した胆は箱に入れて持ち帰るのである。胆は大概三、四寸の長さがあり、徳利(とくり)のような形をしているという。
 死罪には引廻が附加されることがある。見懲のための制度で、罪人は娑婆の見納めに世間が見られるといって、引廻になることをかえって喜んだという。」




こちらもご参照ください:

フランツ・シュミット 『ある首斬り役人の日記』 藤代幸一 訳 (白水Uブックス)
タイモン・スクリーチ 『江戸の身体を開く』 高山宏 訳 (叢書メラヴィリア)
阿部謹也 『刑吏の社会史 ― 中世ヨーロッパの庶民生活』 (中公新書)



































































































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