『レオナルド・ダ・ヴィンチの手記 下』 杉浦明平 訳 (岩波文庫)

「非常に大きな河が大地の下を流れている。」
(『レオナルド・ダ・ヴィンチの手記』 より)


『レオナルド・ダ・ヴィンチ
の手記 下』 
杉浦明平 訳
 
岩波文庫 青/33-550-2 

岩波書店
1958年6月25日 第1刷発行
1978年9月10日 第20刷発行
362p 別丁口絵1葉 別丁図版2p 
文庫判 並装
定価300円(☆☆☆)



本文中図版(モノクロ)3点。


レオナルドダヴィンチの手記 下 01


帯文:

「「人生論」「絵画論」を集めた上巻に対し、本巻は「科学論」「手紙とメモ」等を収む。レオナルドの偉大さは総べて本書に圧縮されている。」


目次:

科学論
 経験
 自然
 理論と実践
 数学
 力、運動
 音
 天文
 光
 焰
 空気
 水
 地質と化石、附 地誌
 鳥の飛翔
 解剖学
 比較解剖学
 植物

技術
 都市計画等
 水利計画
 軍事技術

手紙とメモ
 手紙
 メモ
 旅行メモ
 翻訳、転写
 遺言状

訳註
解説



レオナルドダヴィンチの手記 下 02



◆本書より◆


「科学論」より:

「大地はその上に憩える一羽の小鳥の重さによって位置を動かされる。
 水圏(すいけん)の表面はその上に垂れる一滴の水滴によって動揺する。」

「もし君が船を停止させ水中に長い管のさきを入れ一方の端(はし)を君の耳に当てるなら、君から非常な遠距離にいる船の音を耳にするであろう。
 また君は地面に管の端をおくことによって同じ実験をおこなうことができる、この場合君は遠くを通っている何びとかの足音を聞くであろう。」

「灯(ひ)を凝視(ぎょうし)しつつその美しさを観照したまえ。瞬(またた)きしてこれをいま一度見直したまえ。そこに君の今見ているものは前にはなかった、そこにかつてあったものはもはやないのである。
 要素が絶えず死んでゆくものとすれば、灯を再生するものは誰だろう。」

「空気は河のように動き、雲を運ぶ、ちょうど流れる水が自分の上に浮ぶすべてのものを曳いて行くように。」

「かつてミラノの上空、マッジョーレ湖の方に当って、わたしは赫々(かくかく)と燃える岩石から作られた巨大な山脈のような雲を見た。というのは、すでに茜色(あかねいろ)になった地平線にあった夕日の光がそれをじぶんの色に染めなしたからである。この雲は、じぶんの周囲にあるすべての小さな雲をじぶんの方へひきよせた。そしてその大きな雲はじぶんの場所にじっととまっていた。いな夜の一時半〔午後七時半〕までもその頂上に太陽の余映(よえい)をたもっていた。その雲の巨大さはそれほどたいしたものだった。夜の二時〔午後八時〕には未曾有(みぞう)の物すごい大風が突発した。この大風は雲の収縮するにあたって起ったのである。」

「水は自然の馭者(ぎょしゃ)である。」

「非常に大きな河が大地の下を流れている。」

「人間は古人によって小世界と呼ばれた。たしかにその名称はぴったりあてはまる、というのは、ちょうど人間が地水風火から構成されているとすれば、この大地の肉体も同様だから。人間が自分の内に肉の支柱で枠組(アルマドゥーラ)たる骨を有するとすれば、世界は大地の支柱たる岩石を有する。人間が自分の内に血の池――そこにある肺は呼吸するごとに膨脹(ぼうちょう)したり収縮(しゅうしゅく)したりする――を有するとすれば、大地の肉体はあの大洋を有するが、これまた世界の呼吸〔潮汐〕によって六時間ごとに膨脹したり収縮したりする。もし上述の血の池から人体じゅうに分枝してゆく血管が出ているとすれば、同様に大洋は大地の肉体を限りない水脈で満(み)たしている。」

「かつて日に照らされたことのない大地のあらゆる部分が水流の侵蝕作用(しんしょくさよう)によって地表として露出される。」

「地中海は、大海として、アフリカ、アジアおよびヨーロッパから自分宛(あて)の贈物(おくりもの)、水をもらっていた。それでその水量は、海を取りまいて堤(つつみ)をなす山々の斜面にまで達していた。アペンニーニの連峰は水に取りまかれた島嶼(とうしょ)としてその海中に横たわっていた。さらにアトラス山の奥地なるアフリカもまた長さ三千マイルにわたるその大平野の土を露天にさらしてはいなかった。メンフィスはこういう海の岸辺(きしべ)に位(くらい)していた。今日鳥の群が飛翔(ひしょう)しているイタリアの諸平原の上を普通魚類の大群が泳ぎまわっていた。」

「彼らは、毎日田舎で、ラミアというあの毒蛇が、その凝視によって磁石(じしゃく)が鉄を惹付(ひきつ)けるように鶯(うぐいす)を自分の方へ惹付けるのを、そして鶯は嘆きの歌を歌いつつおのれが死へと飛んで行くのを見たことがないのか!
 また狼(おおかみ)はその一瞥(いちべつ)で、人間の声を嗄(か)らしてしまう力をもっていると言われている。
 バジリスコ蛇はその目であらゆる生物の生命を奪う力をもつと言うことだ。
 駝鳥(だちょう)、蜘蛛(くも)はその目で卵をかえすという。
 娘たちは男の恋心を自分に惹寄せる力を目の中に持っているといわれている。
 サルディニャ海岸に生れるリンノと言う魚――或る人々はそれを聖エルモと呼ぶが――が、夜になると二丁の蠟燭のような両眼で広い水を照らし、そしてその光耀(こうよう)の中に入った魚という魚が悉(ことごと)く、水中に腹を浮べて即死するのを、漁夫たちが見たことがないであろうか。」





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『レオナルド・ダ・ヴィンチの手記 上』 杉浦明平 訳 (岩波文庫)


























































































































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難破した人々の為に。

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