チェチリア・ヤンネッラ 『シモーネ・マルティーニ』 石原宏 訳 (イタリア・ルネサンスの巨匠たち)

チェチリア・ヤンネッラ 
『シモーネ・マルティーニ』 
石原宏 訳
 
イタリア・ルネサンスの巨匠たち 5 シエナを飾る画家

東京書籍
1994年8月29日 第1版第1刷発行
80p
28×21cm 並装 カバー
定価2,000円(本体1,942円)



Cecilia Jannella: SIMONE MARTINI, 1989 (I grandi maestri dell'arte)
図版79点。


シモーネマルティーニ 01


カバーそで文:

「シモーネ・マルティーニ(シエナ1284頃―アヴィニョン1344年)
14世紀前半トスカーナ地方の都市国家シエナでは、フィレンツェとは異なる固有の様式をもった美術作品が生み出されていた。なかでもシモーネ・マルティーニは、繊細で装飾的なシエナ派の特徴をもっともよく発揮した画家である。彼は早くからシエナ政府の依頼を受け市庁舎をその作品で飾っただけでなく、当時南イタリアを支配していたアンジュー家とも密接な関係をもち、アッシジやナポリに重要な作品を残している。そして現在、フィレンツェのウフィツィ美術館を代表する作品のひとつである《受胎告知》は、その金地の広がりと描線の優美さがあいまって、静謐で甘美な情感を醸し出し、イタリアにおいてもっともゴシック的な画家であったシモーネの頂点を成す作品と言われている。晩年フランスのアヴィニョンにあった教皇庁に赴き制作を続けた彼の作風は、後に国際ゴシック様式と呼ばれるものの嚆矢となった。」



目次:

シモーネ・マルティーニの生涯
シモーネとトスカーナ: 初期の作品
シモーネとシエナ市: 高まる名声
シモーネとアンジュー家: アッシジとナポリでの制作
トゥールーズの聖ルイ
シモーネとその工房
《サンタ・カテリーナの多翼祭壇画》
オルヴィエートでの制作
シエナでの新たな制作
 《福者アゴスティーノ・ノヴェッロの祭壇画》
 アルトモンテの小板絵
 《グイドリッチョ・ダ・フォリアーノ騎馬像》
 祭壇画《受胎告知》
アヴィニョン時代

年譜
主要文献




◆本書より◆


「シモーネ・マルティーニの生涯」より:

「いったいシモーネはどんな顔をしていたのだろうか? シモーネの親友だった詩人ペトラルカ(1304―74年)の記述から察すると、美男子ではなかったようだ。」
「中世絵画において、個人を描いた最初の肖像画は、シモーネによって描かれた。彼は各人物の容貌が一つの独立した主題となることを、他の画家たちよりも先に気づいていたようである。(中略)これらの作例は、シモーネが、フランチェスコ・ペトラルカの希望によって描いた詩人の恋人ラウラの肖像画(残念ながら現存していない)においても、ラウラの美しさを際立たせていたにちがいないことを想像させる。ペトラルカは、シモーネの作品の美しさをたたえて、二つの優雅なソネットを作っているほどで、彼女の肖像画はほんとうにすばらしい出来栄えであったにちがいない。」
「史料からわかるように彼は社会的な信頼を必要とする公職に就いており、シモーネがかちえた芸術家としての揺るぎない名声は、そのことによって評価がいっそう高められたのは疑いのないことである。(中略)その一方で、死の直前、教皇の四つの認可証を手に入れるためにシエナのサンタ・マリア・デッラ・スカーラ病院から預かった金を着服するということもしている。」



シモーネマルティーニ 02


「瞑想する聖アンブロシウス(部分)」(アッシジ、サン・フランチェスコ聖堂)。


シモーネマルティーニ 03


「福者アゴスティーノ・ノヴェッロの祭壇画(部分)」(シエナ、国立絵画館)。


「福者アゴスティーノ・ノヴェッロ(俗名マッテオ・ダ・タラノ、1235頃―1309年)の物語は、13世紀の中ごろから14世紀の初めにかけてイタリアのさまざまな都市に浸透していた民間信仰の特殊な現象としてとらえることがでいる。教会が賛美しつづけてきた伝統的な聖人たちは、この時代の人々にとっては、時代的には遠い昔の人であり、精神的にもまた近づきがたい人々であった。(中略)民衆にとって、アッシジの聖フランチェスコはまだ記憶に新しい聖人ではあったが、彼らはさらに実際に触れることができるような、日常の現実のなかで触れ合えるような聖人を必要としていたのである。このために、社会活動や宗教活動に功績のあった自分の町の人たちを、聖人や福者として崇めたのである。」
「アゴスティーノ・ノヴェッロはそういったいく人かのうちのひとりであった。(中略)俗人としても、また聖職者としても輝かしい経歴をたどっていたが、1300年にシエナ近郊のサン・レオナルド・アル・ラーゴの人里離れた土地に隠遁するため、社会生活を捨て去った。」
「福者アゴスティーノの奇蹟を起こす力は、三つ葉形の半円アーチで縁取られた祭壇画の左右の部分で、四つの奇蹟の物語として余すところなく再現されている。天使のように飛翔して、たちどころに人々の前に出現する、そういうアゴスティーノの聖徳が強調され、それが中世の人々の心を打った。なぜなら、痛ましい災いの犠牲者はたいていが幼い子どもたちであったからである。」



シモーネマルティーニ 03a


バルコニーから落ちた子どもを救いにかけつける福者アゴスティーノ。


シモーネマルティーニ 03b


事故現場にかけつける福者アゴスティーノ。


シモーネマルティーニ 04


「グイドリッチョ・ダ・フォリアーノ騎馬像(部分)」(シエナ、市庁舎)。


シモーネマルティーニ 05


「受胎告知(部分)」(フィレンツェ、ウフィツィ美術館)。


シモーネマルティーニ 06


「ウェルギリウスの写本扉絵」(ミラノ、アンブロジアーナ図書館)。


「フランチェスコ・ペトラルカが「確かな心でポリュクレイトスを見れば」と、「シモーネに他界構想が浮かび」と歌う、1336年11月4日の日付のある二つのソネットによって、この年の初めには、シモーネが妻と多くの助手たちとを引き連れて、アヴィニヨンに到着していたことはほぼ完全に確認できる。」
「そこでペトラルカはウェルギリウス(前70―前19年)の『田園詩』や『農耕詩』、『アエネイス』を含む写本の扉絵を描くことをシモーネに依頼している。(中略)この写本の扉絵には、古典古代の雰囲気と自然主義的な調子が満ちており(中略)、15世紀初期のフランスの装飾写本の典型的な規準を予告している。」





こちらもご参照ください:

チェチリア・ヤンネッラ 『ドゥッチョ・ディ・ブオニンセーニャ』 松原哲哉 訳 (イタリア・ルネサンスの巨匠たち)
近藤恒一 『ペトラルカ研究』
石鍋真澄 『聖母の都市シエナ ― 中世イタリアの都市国家と美術』


















































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