モニカ・キエッリーニ 『チマブーエ』 野村幸弘 訳 (イタリア・ルネサンスの巨匠たち)

モニカ・キエッリーニ 
『チマブーエ』 
野村幸弘 訳
 
イタリア・ルネサンスの巨匠たち 1 フィレンツェ絵画の先駆者

東京書籍
1994年5月25日 第1版第1刷発行
62p
28×21cm 並装 カバー
定価2,000円(本体1,942円)



Monica Chiellini: CIMABUE, 1988 (I grandi maestri dell'arte)
図版70点。


チマブーエ 01


カバーそで文:

「チマブーエ(活動の記録1272―1302年)
本名はチェンニ・ディ・ペーポ。彼に関する当時の記録はほとんどなく、生没年すら定かではない。ダンテの『神曲』に謳(うた)われ、少年ジョットの画才を見出したという有名な伝承以外には、1272年にローマにいたことと、1301―02年のピサ大聖堂モザイク画制作に関する記録が残されているだけである。しかし、とくに16世紀のヴァザーリが、その著『芸術家列伝』を「チマブーエ伝」から始めて、彼は「絵画芸術に最初の光明をもたらした画家」であり、「ぎこちないギリシア様式」を克服したと称賛して以来、その評価は高く、イタリア絵画の創始者と目されてきた。事実、現存する彼の作品は、いまだビザンティン様式から脱却していないとはいえ、その表現の強さは現代のわれわれをも圧倒する。残念ながら、チマブーエの代表作は損傷が激しく、サンタ・クローチェ聖堂の《十字架のキリスト》は1966年にフィレンツェを襲った大洪水で色彩が剥落(はくらく)し、アッシジ、サン・フランチェスコ聖堂の壁画も、顔料の鉛白が黒変して、オリジナルの状態をとどめていないが、それでもなお、これらの作品がもつ劇的なまでの表現力は、彼の才能をあますところなく示している。」



目次:

序論
二つのキリスト像: アレッツォとサンタ・クローチェの《十字架のキリスト》
アッシジの壁画
聖母崇拝: 荘厳の聖母

主要文献




◆本書より◆

「「……チマブーエを姓にもつジョヴァンニは、(中略)成長するにつれ、父親やまわりの者たちは、彼には鋭敏ですばらしい才能があると考え、修辞学を学ばせるために、当時サンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂で見習いの修道士に文法を教えていた親戚のもとに預けた。しかしチマブーエは修辞学を学ぶどころか、一日中……人や馬、家、そしてさまざまな想像上の事物を、本や紙の上に描いて過ごした」(ヴァザーリ『芸術家列伝』)。」

「Cimabue (チマブーエ)は動詞の“cimare (先を摘む)”、(中略)からきているようだ。(中略)つまり“scornatore (角(つの)を切られた者)”と同じような意味であり、そこから皮肉屋で傲慢、頑固な人を指すようになった。この説は『神曲』の註釈書『オッティモ・コンメント』の精彩ある一節からも確かめられる。これはチマブーエの死のわずか数十年後に書かれたので、当時の風聞を採録することができたであろう。「チマブーエはフィレンツェの街で誰よりも高貴な画家であった。そのうえ彼は横柄で高慢だったので、誰かが彼の作品に欠点を見つけたり、あるいは自分でそれに気づいたりすると、作品にどんなに高い値をつけるものがあっても、すぐに自分で壊してしまうのだった」。つまり彼は断固として自らに誇りをもち、自らの行動に対する称賛を求め、おそらくそれを強いるような人物であったと言えよう。したがってダンテが、自らの野望に打ち負かされた芸術家や詩人といっしょに、チマブーエを傲慢な人々のいる地獄の第七圏においたことを記しておくのも無駄ではあるまい。」



チマブーエ 02


聖マタイのパレスティナ。
「四福音書記者(部分)」(アッシジ、サン・フランチェスコ聖堂上堂)。


「翼廊の中央天井では、交差ヴォールトのそれぞれの帆形の区画にひとりずつ、金地の上に描かれた4人の福音書記者が目をひく。(中略)彼らの前にはパレスティナ(Iudea)としてのエルサレムの街が、イタリア(Ytalia)としてはローマ、ギリシア(Ipnacchaia)はコリント、アジア(Asia)はエフェソスの街の景観が描かれている。これらの街は、言い伝えによれば、4人の福音書記者たちがそれぞれの福音書を執筆したところなのである。」


チマブーエ 03

聖ヨハネのアジア。
「四福音書記者(部分)」(アッシジ、サン・フランチェスコ聖堂上堂)。


チマブーエ 04


聖マルコのイタリア。
「四福音書記者(部分)」(アッシジ、サン・フランチェスコ聖堂上堂)。


「イタリア以外の街の表現には、ほとんどちがいがなく、互いに取り換えてもさしつかえないほどである。どの街も城壁に囲まれ、そのなかには遠近法的に描かれた大小の幾何学的な箱を集めたように、建物がぎっしりと建ちならんでいる。(中略)ギリシアの東方風の円蓋とアジアの城門の上にあるアラビア様式を反映した装飾を除けば、あとは西欧の街の景観に忠実な建物ばかりである。」


チマブーエ 05


「キリストの磔刑(部分)」(アッシジ、サン・フランチェスコ聖堂上堂)。


「残念ながらこの作品は損傷がかなりはげしく、表面が摩滅し変色している。」


チマブーエ 06


「荘厳の聖母(部分)」(アッシジ、サン・フランチェスコ聖堂下堂)。


「フランチェスコ修道会の基本には清貧思想があるため、「荘厳の聖母」を誇らしげな豪奢な雰囲気とはならないようにしている。」
「聖母マリアにも簡素な表現が強く求められており、彼女はここでは質素で飾り気のない衣服を身に着けている。」













































































































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ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

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難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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