キアーラ・フルゴーニ 『ロレンツェッティ兄弟』 谷古宇尚 訳 (イタリア・ルネサンスの巨匠たち)

「家々は毀され火を放たれ、道は瓦礫に塞がれ、建物は崩壊し、無秩序な兵士たちが人々を殺し傷つけ、横暴をきわめている。閑散とした街には、働いている者は誰もいない。職人と鍛冶屋だけが、熱心に武器を調えている。」
(キアーラ・フルゴーニ 『ロレンツェッティ兄弟』 より)


キアーラ・フルゴーニ 
『ロレンツェッティ兄弟』 
谷古宇尚 訳

イタリア・ルネサンスの巨匠たち 6 シエナを飾る画家

東京書籍
1994年8月29日 第1版第1刷発行
80p
28×21cm 並装 カバー
定価2,000円(本体1,942円)



Chiara Frugoni: PIETRO E AMBROGIO LORENZETTI, 1988 (I grandi maestri dell'arte)
図版93点。


ロレンツェッティ兄弟 01


カバーそで文:

「ピエトロ・ロレンツェッティ(シエナ1280/85頃―1348?年)
アンブロージョ・ロレンツェッティ(シエナ1285―1348?年)
現在は失われてしまったフレスコ画連作に記されていた署名から兄弟と知られるピエトロとアンブロージョは、シモーネ・マルティーニの極度に洗練された優美な様式とは一線を画し、当時の絵画にもうひとつの重要な局面を付け加えた。ピエトロがアッシジのサン・フランチェスコ聖堂下院に描いた《キリスト受難伝》連作に見られる人物像の巧みな感情描写や、アンブロージョがシエナ市庁舎の《善政の効果》に描き込んだ中世都市国家の場景は、14世紀前半のシエナ派絵画を代表する表現といえるだろう。また多くの物語場面を伴う祭壇画や、様々な聖人に取り囲まれた《荘厳の聖母(マエスタ)》は、当時の神学解釈や修道会のプロパガンダなど、制作された時代背景を鮮やかに浮かび上がらせているのである。」



ロレンツェッティ兄弟 12


目次:

ピエトロ・ロレンツェッティ、伝記上の資料
制作年のわかっている祭壇画
 アレッツォ、《ピエーヴェの多翼祭壇画》
 《カルミネ会祭壇画》
 フィレンツェ、ウフィツィ美術館の《玉座の聖母子》
 シエナ大聖堂付属美術館の《聖母の誕生》
アッシジ、サン・フランチェスコ聖堂下堂のフレスコ画
アンブロージョ・ロレンツェッティ、その生涯の概要
《聖母子》像
荘厳の聖母
 マッサ・マリッティマの《荘厳の聖母》
 小品《荘厳の聖母》
ウフィツィ美術館の《聖ニコラウス伝》板絵
《神殿奉献》と《受胎告知》
異論ある作品: 作者は兄弟のうちどちらか?
シエナ、サン・フランチェスコ聖堂と回廊のフレスコ画
シエナ市庁舎のフレスコ画
シエナ市庁舎「平和と戦争の間」に書かれた銘文

主要文献
邦語文献




◆本書より◆


ロレンツェッティ兄弟 02


「キリストの磔刑(部分) 左側の2人の騎士」(アッシジ、サン・フランチェスコ聖堂下堂)。


ロレンツェッティ兄弟 05


「最後の晩餐(部分) 2人の給仕のいる台所」(アッシジ、サン・フランチェスコ聖堂下堂)。


ロレンツェッティ兄弟 06


「首をつるユダ」(アッシジ、サン・フランチェスコ聖堂下堂)。


「「マタイ福音書」27章5節だけがわずかにつぎのように述べている。「そこでユダは銀貨を神殿に投げこんで立ち去り、首をつって死んだ」。一方「使徒行伝」1章15節以降にはどのようにユダが自殺したかが記されており、伝統的な図像はその説明に従ったものである。そこではペテロがつぎのように語る。「ユダは不義の報酬である地所を手に入れたが、その地面にまっさかさまに落ちて、腹がまん中から引き裂け、はらわたがみな流れ出てしまった」(このような細部描写は、古代さまざまな民族が、悪魔はとりつかれた人の腹に宿り、その腹は死ぬときに悪霊を外に出すため破裂する、と信じていたことによる)。通常、画家は、聖書に書かれている事柄と完全に創作された事柄とが入り混じる人々の言い伝えにのっとり、ユダを内臓が飛び出し、イチジクの木(キリストから呪われていた木)で首をつる姿で描き出すのだが、ロレンツェッティはとりわけ、『聖書外典』の「ニコデモ福音書」に記される内容に従っている。それによると、絶望したユダは妻の許に帰り、彼の犯した罪と、その後まもなくキリストが復活したことに対する恐れを打ち明け、その苦悩から逃れることができずに「紐で輪をつくり首をつった」という。実際、作品のなかで、ユダはたしかに彼の家の梁で首をつっており、首の腱(けん)は恐ろしげにはずれている――ロレンツェッティは、この細部の表現を実際に何回も目にした光景から学んだのであろう(処刑された者は何日もぶら下がったまま放置され、それは生々しい警告となった)。」


ロレンツェッティ兄弟 08


「聖痕を受ける聖フランチェスコ」(アッシジ、サン・フランチェスコ聖堂下堂)。


ロレンツェッティ兄弟 09


「海辺の都市」(シエナ、国立絵画館)。


ロレンツェッティ兄弟 07


「湖畔の城館」(シエナ、国立絵画館)。


ロレンツェッティ兄弟 03


「善政の寓意(部分) 平和、剛毅」(シエナ、市庁舎)。


ロレンツェッティ兄弟 04


「市内における善政の効果(部分) 9人の踊る娘の一団」(シエナ、市庁舎)。


ロレンツェッティ兄弟 10


「市内における善政の効果(部分)」。


ロレンツェッティ兄弟 11


「市内における悪政の結果」(シエナ、市庁舎)より。


「家々は毀され火を放たれ、道は瓦礫に塞がれ、建物は崩壊し、無秩序な兵士たちが人々を殺し傷つけ、横暴をきわめている。閑散とした街には、働いている者は誰もいない。職人と鍛冶屋だけが、熱心に武器を調えている。丘の連なる広大な風景のなかでは、ただ死をもたらし、破壊し、点在する家々あるいは集落全体に火をかけることに懸命になっている。郊外も不毛で荒廃している。木々は実を結ばず、誰も土地を耕そうとしない。(中略)恐怖がこのフレスコ画の重要な主人公であり、あらゆる形の公的な生活も私的な生活も麻痺させ、都市の城門を閉めざるをえなくする。その一方で、馬に乗った兵士がよりいっそうの破壊をもたらすため、城外へ出てゆく。」


























































































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