柴田宵曲 『明治風物誌』  (ちくま学芸文庫)

柴田宵曲 
『明治風物誌』
 
ちくま学芸文庫 シ 22-2

2007年8月10日 第1刷発行 
329p+1p
文庫判 並装 カバー
本体1,300円+税
装幀: 安野光雅
カバーデザイン: 間村俊一
装画: 井上安治「筋違通夜景」


「『明治風物誌』(昭和四十六年十二月、有峰書店刊)を底本とし、初出紙および『柴田宵曲文集』第五巻(平成三年、小沢書店刊)を照合した。初出は、『秋田魁新報』昭和四十三年一月四日から四月五日まで、九十三回の連載。明らかな誤字脱字はこれを訂し、常用漢字は原則として新字体に改め、適宜ルビを補った。ルビは現代仮名遣いとした。」



森銑三による「序」より:

「明治風物誌は、その晩年の著作であるが、(中略)生前には活字にならずにしまひ、歿後に至つて秋田魁(さきがけ)新報に連載せられて、やつと日の目を見た。」


柴田宵曲 明治風物誌


カバー裏文:

「西南戦争後の夜空に出現した西郷星、ペスト大流行と鼠供養の塚、團十郎人気と贋物たち、焼芋と明治文学、白秋「東京景物詩」にみる瓦斯燈の詩情、落書きのため借家を追われた青木繁、コックリさんと小波お伽噺。サーカス、野球、人力車、競馬、水族館、赤帽、バナナ、半熟玉子、軽気球、凌雲閣、新聞広告など、九十七の主題によって明治を語り、懐古した本書は、その静かな滋味あふれる語り口で、偉人文人たちの逸話を披露しつつ、事物の考証を通して市井生活のささやかな詩情にも光を当てる。」


目次:

序 (森銑三)

サーカス
ミラー公判
ポスト
野球
万年筆
西洋菓子
ペーパーナイフ
人力車
瓦斯
毛布
焼芋
珈琲
いちご
今川焼
木の実
絵はがき
ボート
ヴァイオリン
競馬
團十郎
日本橋
電車
火事
浪花節
巡査
ペストと鼠塚

煙管
葉巻
汽車
大晦日
デヤボロ
不忍池
連隊旗

植物園
噴水
水族館
赤帽

扇風器
唱歌
西郷星
石鹸
新人
コックリさん
煙草
手品
照葉狂言
ラムプ
借り着
蝋燭
運動会
頌徳表
バナナ
ラムネ
煉瓦
豆腐屋
街路樹
蛇の目傘
楽書
下宿屋
同名異人
撞球
漬物

郊外
半熟玉子
軽気球
変つたカルタ
居合抜
凌雲閣
お伽噺
洋書
仮装
悪筆
大頭
酒客
パノラマ
上野の戦争
パイプ
ハンケチ
単騎旅行
月並
天長節
画題

月賦販売
月見
超然派
新聞広告

ステッキ
蒲焼
汽車弁
蕎麦
雑誌

宵曲先生のこと (池上浩山人)

解説 希代の明治居士 (加藤郁乎)




◆本書より◆


「ポスト」より:

「必ずしも創業時代には限らぬ。神経質な人などは、後々までポストに投じ去つた郵便物の上に或不安を感ぜざるを得なかつた。泉鏡花(きょうか)が紅葉(こうよう)山人の玄関にゐた頃、日課として新聞社へ送る先生の原稿をポストに入れに行く。手を投入口に深く入れて、暫く原稿を離さずに居る。漸く原稿がポストの底に落ちてからも、まだ安心ができず、もしやポストの外に落ちはせぬかとその周囲を三遍回り、更にもう一度振返つて後、はじめて立去るといふことを繰返してゐた。」
「歌の添削を担当してゐた大口鯛二(たいじ)が、「黒ぬりのポストの上を今朝見れば……」といふ歌の初句を改めて「道のべの」とし、ポストには赤塗りも青塗りもないから、特に黒塗りと断る必要はないと云つたことがある。この時代のポストは皆黒一色だつたのであらう。赤いポストが出来たのはいつ頃からか知らぬが、子規の「病床牀六尺」に「自分の見た事のないもので、一寸見たいと思ふ物」を列挙した中に、「自働電話及び紅色郵便箱」があるのを見れば、明治三十五年にはもうあつたに相違ない。赤は子規の好きな色であつた。」



「超然派」より:
 
「田口和美(かずよし)博士(中略)が日清戦役を知らなかつたといふことは、明治の学者気質として有名な逸話の一つであるが、逸話といふものは自然に推移するものとみえて、「黙想の天地」(沼波瓊音)にもさう書いてあるのに、同じ人の手に成つた「徒然草講話」になると、日露戦役もまた開戦後数月に至るまで知らなかつたといふ一条が加はつてゐる。しかも著者の知つてゐる画師が解剖図を画く関係上、博士のところへ出入してゐたので、或る晩偶然の機会から日露開戦の話を口にした。博士はびつくりしたのみならず、興味をもつてこれを聞き、時に興奮さへしたといふのだから、どうしても事実でなければならぬが、残念なことに博士は三十七年二月三日に亡くなつてゐるのである。(中略)博士の死は実に宣戦布告に先立つ一週間であつた。」
「この逸話の推移はこれだけに止らず、「明治音楽物語」(田辺尚雄)では、大学の解剖室にたて籠つた博士が、或るとき珍しく校門を出て不忍池の方まで来ると、至るところ国旗が翻り、人が雑踏してゐる。大学に帰つてこの話を学生に話したら、それは凱旋のお祝ひですといふ答へであつた。それまで日露戦役を知らなかつたといふ話になるのであるが、さうなると博士は一年半以上も生き延びなければならぬ。逸話がだんだん面白くなり、おまけがついて来る消息は田口博士の例だけ見ても明かである。」





こちらもご参照ください:

柴田宵曲 『明治の話題』 (ちくま学芸文庫)
























































































































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難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

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好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

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尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

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