『澁澤龍彦コレクション 2 オブジェを求めて』

「どういうものか、私は子どものころから役に立たないものが好きで、もし私の人生一般に対する好みの基準を一言で要約するとすれば、それこそ「役に立たないものが好き」ということになってしまうにちがいない。つまり生産性の哲学や倫理が大きらいなのである。」
(澁澤龍彦 「編者による序」 より)


『澁澤龍彦コレクション 
2 オブジェを求めて』


河出書房新社 
1985年3月20日 初版印刷 
1985年3月25日 初版発行
285p 
四六判 丸背紙装上製本 カバー 
定価1,300円
装本: 菊地信義

月報 2 (8p): 
破壊する神(楠田枝里子)/物の名前(高橋源一郎)/この巻にあらわれる[原著者・原著作]一覧



本コレクション第1巻「編者による序」より:

「本書の翻訳について簡単に記しておく。原文にあたれるものはできるだけ原文にあたって、私自身の手になる訳文にするように努めたが、なかには諸家の既訳をそのまま流用させてもらった部分もある。」


全三冊。


澁澤龍彦コレクション オブジェを求めて


帯文:

「永遠の観念を形象する
物体や器械など
言語の結晶学になる
オブジェの集合
プリニウスから
ボルヘスまで
120の断章を収録」



帯背:

「輝きと
驚異の
標本帖」



帯裏:

「エッセンスの燦めきと歓び 田村隆一
真実はいつも直観の一閃のうちにとらえられ、光りはいつも断章の短い影からあらわれるものだ。澁澤さんの手によって蒐集された燦めくような文章の数々は、古今東西の時空から、余計なものの混じらぬ強烈なエッセンスだけを運んでくる。蜜蜂が花々をわたるように、詩人が酒神を求め歩くように、これらの断章を自由に拾い読みしていくことは、またなんという歓びだろう。」



目次:

編者による序

がらくたの宝物 コクトー
甲冑 タッソー
地球儀 トマス・ブラウン
巨大なダイヤモンド ルーセル
鉋屑と蛙 藤原清輔
ネロの眼鏡 プリニウス
オブジェとしての男根 アルトー
黄金の鳥 イェイツ
黄金の亀 ユイスマンス
黄金のランプ メーテルランク
黄金の兜 セルバンテス
つくも神 御伽草子
かぼちゃ ワラフリート・ストラボー
避雷針その一 メルヴィル
必要にして十分 シャンフォール
オドラデク カフカ
金色のファロス パウンド
玩具のいのち ボードレール
燻製にしん クロス
鉢を飛ばす 大江匡房
大汗の杯 マルコ・ポーロ
人間の家具 サド
首提灯 ダンテ
生殖系統をもつ機械 バトラー
永久運動の機械 マレシャル
機械をこわす ジャリ
ピストンとシリンダー ユイスマンス
脳髄は玉のごとし ドルバック
人工の蝶 ホーソン
宝石と体温計 ディドロ
オブジェとしての少女 ワイルド
ホロフェルネスの首 レリス
眠れる人造美女 ヴィリエ・ド・リラダン
胡桃の中の世界 シェイクスピア
人形の反重力性 クライスト
ガラスの肉体 セルバンテス
跳びはねるボール カフカ
螺旋 フローベール
スペイン金貨 メルヴィル
メドゥサの顔 ピエール・ルイス
パラドックスの鏡 イブン・アラビー
マンモン卿の鏡 ベン・ジョンソン
仮面その一 ジャン・ロラン
頭蓋骨 T・S・エリオット
踊る酒瓶 ネルヴァル
ヤフーの好きな石 スウィフト
石化の儀式 ハーバート・リード
回転樽 ニーチェ
卵の遊び バタイユ
枕 サド
螢石の壺 プリニウス
奇妙な多面体 ヴァレリー
偶像崇拝 マンデヴィル
回転する獨楽 カフカ
道は物にあり 荘子
チパング島の真珠 マルコ・ポーロ
楽器の植物 ジャリ
巨大な兜 ウォルポール
ロンボス ノディエ
酒神杖を投げつける オウィディウス
たとえマッチ箱でも ジュネ
海の蘭 プルースト
彫像を愛す メリメ
コンパス オープリー
パイプ ボードレール
メロンを称える サン=タマン
黄金虫 ポー
翼を買う グランヴィル
涙壺 ロベール・ド・モンテスキュー
アレフ ボルヘス
鏡と死の国 コクトー
ともし火 光巌院
銀の骸骨 ペトロニウス
髪の毛 ロデンバック
あたしの魔笛 アドルフィーネ・フォーゲル
紅雀とダイヤモンド ブルトン
影と実体 シュオッブ
写真機 トーマス・マン
シャンデリア ボードレール
仮面その二 サン=シモン
日時計 リルケ
砂時計 ボルヘス
花時計 マーヴェル
魔法のランプ 千夜一夜物語
詩的なランプ ロートレアモン
ありすい車 テオクリトス
蝋燭 リヒテンベルク
手袋 バルベー・ドールヴィイ
柘榴石 ノヴァーリス
アリストテレスの提灯 アリストテレス
至福をもたらす物たち ホーフマンスタール
狐玉 木内石亭
ガラスの靴 ペロー
スリッパ ビアズレー
葉巻 コクトー
卵形の水晶球 ウェルズ
骨壺の中のオパール トマス・ブラウン
眼鏡 サド
目玉 ホフマン
涙 ポー
オレイカルコス プラトン
珍書奇書 ヴィリエ・ド・リラダン
十八世紀の人工衛星 ホルベア
土星の環 ヴォルテール
これこれ、これは地球だぞ ゲーテ
エオリアン・ハープ スタール夫人
玩具の部屋 ボードレール
避雷針その二 ルーセル
天使の卵 ベアリュ
ヘルメスと亀 ホメーロス讃歌集
貝殻 フローベール
紫色の海胆 シドニウス・アポリナリス
宙におどる巻物 法華験記
鞴 ニーチェ
芳香のある円筒形 マンディアルグ
得体の知れぬもの ヴァレリー
卵と少女 ゲーテ
長崎の魚石 柳田國男
スカラベ ロートレアモン
ダイヤモンドのレンズ オブライエン




◆本書より◆


「編者による序」より:

「機械や道具でも、この本にあつめられているそれは、どちらかといえば役に立たないもの、無用のもの、遊戯的なもの、用途不明のもの、あるいは本来の用途とは別の目的で使用されているものばかりであって、このあたりに私の用いるオブジェという概念の一つの指標を見てとることができるかもしれない。
 どういうものか、私は子どものころから役に立たないものが好きで、もし私の人生一般に対する好みの基準を一言で要約するとすれば、それこそ「役に立たないものが好き」ということになってしまうにちがいない。つまり生産性の哲学や倫理が大きらいなのである。私のオブジェ好きも、どうやらこの骨がらみになった思想とふかい関係があるらしく、思想も骨がらみになってしまえばほとんど趣味と見分けがつかないから、これは趣味の問題といってもよい。あるいは今日の流行語をもって、ビョーキといってもよいであろう。そもそも骨がらみということばは梅毒の進行状態を意味していたのだった。」
「按ずるにオブジェとは、リビドーが生殖器官に集中している男性の頭の中から出てきた観念なのである。」
「ブルーノ・ベッテルハイムは名著『うつろな砦』のなかに、四歳で特殊幼稚園に「入園するとすぐ、どこからか扇風機を見つけ出してきて、子どもたちが彼を遊びの仲間に引き入れようとしても、一瞬たりとも彼の注意をその扇風機から逸らせることができなかった」ジョイという自閉症児のことを報告している。私はこの病める小さなオブジェ愛好家の記録を初めて読んだとき、異様な感動に胸がいっぱいになったことを告白しておきたい。」



「地球儀
トマス・ブラウン『医師の宗教』第二部」:

「私が見つめる世界は私自身であり、私が目をやるのは私自身のからだというミクロコスモスである。もう一つの世界(すなわち大宇宙)のほうは、地球儀のようにこれを用いて、ときどき暇つぶしの楽しみにくるくる回転させてみるだけだ。私の外形だけを見るひとは、私がどれくらい背が高いかということについて判断を誤るだろう。私はアトラスの肩の上に抜け出ているのである。地球がわずか一点にすぎないのは、私たちの頭上の天と比較した場合だけでなく、私たちの内部の天、霊的な天と比較した場合にも同様なのである。私を閉じこめている肉体というマッスは、私の精神まで限界づけてはいないのだ。あの青天井を見れば天にも限りのあることが分るだろうが、私に限りがあるとはどうしても思えない。私の円は三百六十度以上あると私は頑固に考えているのである。たとえ私の肉体がノアの箱舟の寸法に拡大されたとしても、その寸法で私の精神を包みこむことはとても無理だろう。私は自分自身がいかにミクロコスモスあるいは小世界であるかを発見すべく努めても、結局は自分が大世界より以上のものであることに気がついてしまうのだ。たしかに私たちの内部には神性の一片が存在する。それは四大(しだい)より以前から存在していたもの、太陽のおかげを蒙ってはいないものである。聖書が語っているように、自然もまた、私が神の似すがたであることを語っているのだ。」


「胡桃の中の世界
シェイクスピア『ハムレット』」:

「ローゼンクランツ  それはつまり、殿下が御大望をいだいておられるからでございましょう。望みのある身には、この国は狭すぎるのでございましょう。
ハムレット  なにをいう。たとえ胡桃の殻のなかに閉じこめられていようとも、おれは無限の天地を領する王者のつもりになれる男さ。」



「パラドックスの鏡
ムヒーユ・ウッディーン・イブン・アラビー『予言者の叡智』」:

「自然の世界は、ただ一つの鏡に反映する多くの形象から成っている。というよりもむしろ、数限りない鏡によって映し出された唯一の形象というべきかもしれない。」


「ともし火
光厳院『光厳院御集』」:

「ともし火に我(われ)もむかわず燈(ともしび)もわれにむかわず己(おの)がまにまに」




こちらもご参照ください:

『澁澤龍彦コレクション 3 天使から怪物まで』






































































































































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プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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