『澁澤龍彦コレクション 3 天使から怪物まで』

「私はたまたまホモ・サピエンスとしてこの世に生まれたが、しかし人間性とは、どう考えても空虚な概念だとしか思えないような気持が私には根強くある。」
(澁澤龍彦 「編者による序」 より)


『澁澤龍彦コレクション 
3 天使から怪物まで』


河出書房新社 
1985年6月20日 初版印刷 
1985年6月28日 初版発行 
286p 
四六判 丸背紙装上製本 カバー 
定価1,300円
装本: 菊地信義

月報 3 (8p):
天使にして怪物(奥本大三郎)/産みます、育てます。(伊藤比呂美)/この巻にあらわれる[原著者・原著作]一覧



本書「編者による序」より:

「本書をもって澁澤龍彦コレクション全三巻は終る。いってみれば、これは『夢の宇宙誌』から『ねむり姫』にいたる、出発から現在までの私の文学的活動のモティーフというか源泉というか、そういうものの総ざらいであった。そんなつもりはなかったのに、結果としてそうなってしまったのである。よくよく私はリヴレスクな人間だとしかいいようがないだろう。」


澁澤龍彦コレクション 天使から怪物まで


帯文:

「聖なるものと奇なるものが
エロティックに隣りあう
妖しくも痛快な
澁澤館の饗宴
古事記から
コクトーまで
118の断章を収録」


 
帯背:

「優美な
快楽の
宝石箱」



帯裏:

「想像力という快楽の翼 金井美恵子
澁澤龍彦の編んだイメージとエピソードのコレクションには、優美という言葉がふさわしい。書物から書物へと自由に飛びかう、想像力という快楽の翼のはばたく優美な、しかし、時に滑稽であり残酷であり可憐であり驚異でもある古今東西のイメージのアンソロジーについて、私は確信するのである。これは断じて、他の追随を許さぬ群を抜いた、快楽的な宝石箱である、と。」



目次:

編者による序

ホムンクルス ゲーテ
ゴーレム マイリンク
男が女になる ヒポクラテス
去勢願望 フローベール
さまざまな去勢者 アンション
女が男になる パレ
悪徳は選択からはじまる コクトー
蝙蝠になった男 チェッリーニ
自分を食う男 フォルヌレ
影の病 只野真葛
アリマスポイ人 プリニウス
北海の半魚人 ハイネ
ものいわぬ子 古事記
シャム双生児 ムジール
アペニンの隠者 サド
奇肱国 山海経
森のニンフたち タッソー
植物国 ホルベア
ベンガルの犬頭人 カモンイス
新世界の大耳族 ヴォルテール
王せん島の馬頭人 御曹子島渡
ホムンクルスの製造法 パラケルスス
マンドラゴラ アルニム
西行、高野の奥にて人を造る 撰集抄
マリオネットか神か クライスト
神という動物 ライプニッツ
復活した王と王妃 アンドレーエ
尻っぽのある人間 フーリエ
臍のない男 トマス・ブラウン
スキヤポデス プリニウス
吉野の有尾人 古事記
水かきのある指 カフカ
三個のふぐり玉 サド
大きな乳房 ゴーティエ
モンキュ氏のペニス マンディアルグ
聖人賢人の相 五雑俎
怪物の誕生する原因 パレ
ラヴェンナの怪物 ボエスチュオ
滑稽な怪物たち ヴァレリー
初めに怪物あり ルクレティウス
怪物を生み出す想像力 シラノ
怪物の製造業 ユゴー
怪物あそび ジャンバッティスタ・デッラ・ポルタ
怪物としてのヒットラー マルセル・ジャン
怪物同士の対面 キャロル
怪物を造る科学者 ウェルズ
処女懐胎 テルトゥリアヌス
処女膜再生 ケベード
横に裂けた女陰 ゴーティエ
坊主頭のレスビアン ルキアーノス
勃起するクリトリス サド
女はキマイラ マルボード
牡牛を愛したパシパエ モンテルラン
蹄のある娘 ランドルフィ
植物になった女 プルースト
ふくろうになった女 レアージュ
宮廷の小人 ユゴー
サテュロスとローマの将軍 プルタルコス
人間に似たヤフー スウィフト
白人変態説 ショーペンハウアー
サテュロスの島 パウサニアス
青銅人タロス アポロニオス
無頭人 バタイユ
空虚人 ドーマル
悪魔の肉体 アグリッパ
反自然という呼び方 モンテーニュ
天使と禽獣と パスカル
世界一の愚行 ヘロドトス
雌は怪物のはじまり アリストテレス
聖なる残酷 ニーチェ
ニュートンという猿 ポープ
人間はカメレオン ピコ・デッラ・ミランドラ
人間たる資格 ディドロ
断食芸人 カフカ
フランケンシュタイン シェリー夫人
自殺者の森 ダンテ
とくさ虫 往生要集
吸血鬼 カルメ
狂人 コクトー
キャリバン シェイクスピア
サラマンドラ フランス
ピュグマリオン オウィディウス
一眼巨人 ゴンゴラ
ペスト王 ポー
魔王エブリス ベックフォード
魔女アルミーダ タッソー
邪眼 フローベール
狼狂 ボレル
三つの目ある淑女 ダンテ
ポーの女 ユイスマンス
巨大な女 ボードレール
樹の女 ルキアーノス
童子のごとく 列仙伝
アイスクリームとしてのドン・フアン スタンダール
あなたの娼婦と呼ばれたい エロイーズ
娼婦になる空想 レリス
女獣となったサロメ ユイスマンス
オルタンス ランボー
眠れるヘルマフロディトス ロートレアモン
オアンネス フローベール
私の女 ブルトン
エンペドクレス シュオッブ
狂帝ヘリオガバルス アルトー
アンドロギュヌスを讃う ペラダン
超男性 ジャリ
両性具有 ゴーティエ
天使の結婚 スウェーデンボリ
天使の認識 トマス・アクイナス
熾天使、智天使、座天使 ピコ・デッラ・ミランドラ
電気の天使 ヴィリエ・ド・リラダン
天使の翼 ダンテ
天使と天の果実 ヤーコブ・ベーメ
天使は泣かない バルザック
芳香を発する傷口 ユイスマンス
天人の五衰 往生要集
天使の自殺 ゴル
天使の愛 ミルトン
遠人愛 ニーチェ




◆本書より◆

 
「編者による序」より:

「人間だって、一般の哺乳動物や鳥類から見れば、全身に毛がはえていないところはまさしく怪物以外の何ものでもあるまい。人間たるもの、ゆめゆめ爬虫類を笑うことはできないのだ。さればこそ、不思議の国のアリスは森のなかの鳩から、「あなたが少女であろうと蛇であろうと、私にはまったく同じことですよ」とばかにされるのである。種(しゅ)がある以上、怪物は遍在する。まず第一に、これが本巻の基本的なテーマだと思っていただきたい。」
「私はたまたまホモ・サピエンスとしてこの世に生まれたが、しかし人間性とは、どう考えても空虚な概念だとしか思えないような気持が私には根強くある。」
「カフカではないが、私はいつでも動物に変身することによって、忘れ去られた誕生以前の記憶を掘りおこしたいと望んでいる。ドゥルーズ=ガタリがうまいことをいっているが、「動物への変身は動かないまま、その場で実現される旅」なのである。単に動物への変身のみと限らず、かつてピコ・デッラ・ミランドラがいったように、人間はあらゆるものに変身しうるカメレオンだと考えたほうが、はるかに私などには好ましいような気がする。」
「ヒエラルキアの頂点にいるつもりの天使でさえ、つい隣りを見れば、そこには見るも恐ろしい怪物がいるという、この切れ目のない円環は完全に無差別平等である。人間概念を逸脱しなければ、ついに人間というものを知ることはできないという、一つの形而上学的なパラドックスを具現しているのが、人間の頭の中から生み出された怪物だといってもよいであろう。」



「人間はカメレオン
ピコ・デッラ・ミランドラ『人間の尊厳について』」:

「おお、父なる神のこの上なき寛大さよ、人間のこの上なき、驚くべき幸福よ。人間には、自分の望むものを所有し、自分の欲するものになるということが許されている。動物たちは生まれると同時に、彼らがやがて所有することになるはずのものを、ルキリウスのいうように「母の胎内から」自分といっしょに持ってくる。最高位の霊たちは、最初から彼らが永遠にあるであろうところのものだった。ところで、神は生まれ出る人間に、あらゆる種類の種子とあらゆる種類の生命の萌芽を授けたもうた。各人が育てた種子は成長して、その果実を各人のなかに実らせるであろう。もし彼が植物的な種子を育てたとすれば、彼は植物となるであろう。もしその種子が感覚界に属していれば、彼は動物となるであろう。もし理性の領域にあれば、彼は天の地位に高まるであろう。もし叡知の領域に属する種子ならば、彼は天使や神の子となるであろう。そしてもしいかなる被造物の運命にも満足せず、おのれの個体の中心にふかく思いをひそめるならば、彼は万物の上に位置する御父の孤独な闇のなかで、神と不可分一体の霊となり、万物に優越する地位を占めるであろう。
 この私たち人間のカメレオンぶりを感嘆しない者があろうか。それともこれ以上に、感嘆すべきものが何か他にあるだろうか。みずから変貌しうる、このカメレオンにも比すべき人間の性質を理由として、アテナイ人アスクレピオスは秘儀における人間をプロテウスとして示した。ヘブライ人やピュタゴラス派のひとびとのあいだでよく知られた、あの転身という観念もここから生じたのである。」



「アンドロギュヌスを讃う
ジョゼファン・ペラダン『アンドロギュヌス』」:

「いと清らかな性、愛撫されれば死ぬ性、
 いと聖なる性、天上にあって孤独な性、
 いと美しき性、側近を認めぬ性、
 いと気高き性、肉を軽んずる性、
 かつて楽園のアダムのごとき何人かの知っていた非現実の性、
 地上の恍惚は不可能なる性、存在しない性、おんみを讃う!
 いとやさしき性、見るだけで孤独の慰められる性、
 いと穏やかな性、苛立った神経を眠らせる性、
 いと柔和なる性、清らかな快楽から生ずる性、
 いと情愛にみちたる性、われらの魂に口づけする性、
 いと甘美なる性、われらを高きにみちびく性、
 いと慈悲ぶかき性、われらに夢をあたえる性、
 ジャンヌ・ダルクの性、奇蹟の性、おんみを讃う!
 おお、太初の性、窮極の性、愛の絶対、形式の絶対、性を否定する性、永遠の性、おんみを讃う、アンドロギュヌスよ!」



「遠人愛
ニーチェ『ツァラトゥストラはかく語った』」:

「わたしはきみたちに隣人愛を勧めるだろうか。むしろ、わたしは隣人からの逃避と遠人愛を勧める。
 隣人愛よりも、もっとも遠い未来の者への愛のほうが高い。わたしは人間への愛よりも、事物と幻影への愛のほうがさらに高いと思うものだ。
 わたしの兄弟よ、きみに先だって進んでゆく幻影は、きみよりも美しい。なぜきみはこの幻影に、きみの肉と骨とをあたえないのか。だが、きみは幻影をこわがって、きみの隣人のもとへ走る。」





こちらもご参照ください:

『澁澤龍彦コレクション 1 夢のかたち』














































































































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難破した人々の為に。

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趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

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