新村出 『南蛮更紗』 (東洋文庫)

「滅びたものはなつかしい。廃たれたものには情がひかれる。」
(新村出 「ちやるめら」 より)


新村出 
『南蛮更紗』
 
東洋文庫 596 

平凡社 
1995年12月6日 初版第1刷発行
422p 18.4×11.6cm 
角背布装上製本 機械函
定価3,296円(本体3,200円)
装幀: 原弘



本書「編集付記」より:

「一、本書の底本には筑摩書房刊『新村出全集』(昭和四十六年)を用い、改造社刊『南蛮更紗』(大正十三年、初版本)を参照した。
一、漢字は通行のものに改めたが、かなづかいは元のままとした。」



本文中図版(モノクロ)9点。


新村出 南蛮更紗


帯文:

「煙草、時計、ちゃるめら、賀留多など身近な言葉の源を探り、キリシタン文学から生きた日本語を切り取る。『広辞苑』の編者として著名な言語学者・新村出が綴る、36篇の多彩な随筆集。」


目次:

序文
再版本に序す

雪のサンタマリヤ
吉利支丹文学断片
遵主聖範の旧訳本
吉利支丹宗の遺物
日本最古の銅版画
南蛮趣味と和歌其他――三百年前の回顧
南蛮に関する俚謡その他
真宗と切支丹
煙草と煙管
時計伝来の歴史
賀留多の伝来と流行
近世輸入服飾品と其名称
ちやるめら
日本美術史上の新研究
日本文学の海洋趣味
海賊の話
大西洋上より
長崎再遊
日本人の眼に映じたる星
星に関する二三の伝説
二十八宿の和名
星月夜
昴星讃仰
星夜讃美の女性歌人
花の名三つ四つ
ふれふれ粉雪
徒然草の感興
北原白秋の『思ひ出』
図書館の一隅より
地獄小話
鷹狩
鋤焼物語
語原雑話
エスペラントの好望
バクーニン来航の事など
去来一家の事

解説 (米井力也)




◆本書より◆


「序文」より:

「此の一小冊子は曩に世に出だせる『南蛮記』の姉妹編の一ともいふべく、其の大部分は切支丹追懐と異国趣味とに関するものなれど、延いては、著者が思ひを天界の星に馳せ、興を遠く海洋の波間に遊ばせたる新旧七八篇も加はりたり。されば、「亜物(あべ)、海(うみ)の星(ほし)」とある祈禱文に因みて書名を『海の星』と題せんかと思ひしが、遂に旧著の題号に執着して『南蛮更紗』と名づくることとなりぬ。さはあれ、本書に掲ぐる所、更に範囲を越えて、海のあなたの花の名を数へ、「ふれふれ粉雪」の俗謡に王朝の古へを偲び、上りては鷹狩の源流に遡り、下りては鋤焼の鄙びたる風味を探り、偶々逸しては黒竜江より流れ来し露国の怪しき政客を追跡し、忽ち翻つては長崎生れの蕉風正統の俳人が一家を追慕せるが如き変幻常なき趣なしとせず。収むる所三十余篇のうち、讃嘆あり、考証あり、感想あり、紀行あり、紹介あり、全く統一せる姿なしと雖も、元と是れ当社の需に応じて随筆風の一書に仕立てんとの心じらひより、ここに至れるものなるを如何にせん。」


「ちやるめら」より:

「滅びたものはなつかしい。廃たれたものには情がひかれる。昔、西洋から伝はつた楽器のうちにチャルメラといふ喇叭(ラッパ)のやうな吹管楽器がある。今でも片田舎などには聞かれるであらうが、都会でもつい近頃までよく飴屋などが吹いては頑是ない子供らを寄せあつめて居た。江戸時代には唐人笛とも唱へ、時にはラッパと同じに見做されたこともあつたが、どこかに田舎びたやうな、いくらか異国の感じを起させるやうな、物がなしさうで又悠長な響きをもつてゐた。幕末のころは軽業師なども使つてゐたといふ。無論最初伝はつた本場は長崎あたりであつたに違ひない。」


「ふれふれ粉雪」より:

「『俚謡集拾遺』を見ますと、京都の童謡でかういふのが載つてをります。

  雪やこんこん、霰(あられ)やこんこん、
    お寺(てら)の松の樹に、一つぱい積りこんこん

いくらか昔の文句の面影がかよつてはゐるやうです。関東でも以前これと同じ句調か文句のが聞けたとおぼえてゐます。私どもの小さいときには、「ゆきやこほり、おべたいこほり」とか何とかいつた言草(いひぐさ)をうたつた様な気がしますが、こんな童謡もだんだん影をかくしてしまひさうで、なつかしくてたまりません。
 夏ですからもう一つ雪の童謡を出します。やはり京都に、雪が降る日に空を仰ぎながら、児童が、

  雪ばな散(ち)るはな、空(そら)に虫(むし)が涌(わ)くはな、
    扇腰にさいて、きりゝと舞ひましよ

とうたふさうです。」





こちらもご参照ください:

新村出 『新編 琅玕記』 新村徹 編 (講談社文芸文庫)























































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