『セルバンテス短篇集』 牛島信明 編訳 (岩波文庫)

『セルバンテス短篇集』 
牛島信明 編訳
 
岩波文庫 赤/32-721-7 

岩波書店 
1988年6月16日 第1刷発行
375p
文庫判 並装 カバー
定価550円

「カバー・カットはセルバンテス家の紋章」



本文中挿絵図版(モノクロ)4点。


セルバンテス短篇集 01


カバー文:

「愛する妻の貞節を信じ切れない夫は試しに妻を誘惑してみてくれと親友に頼みこむが…。突飛な話の発端から、読む者をぐいぐいと作者の仕掛けた物語の網の目の中に引きずりこんでゆくこの「愚かな物好きの話」など4篇を精選。『ドン・キホーテ』の作者(1547―1616)がまた並々ならぬ短篇の名手であることを如実にあかす傑作集。」


目次:

やきもちやきのエストレマドゥーラ人
愚かな物好きの話
ガラスの学士
麗しき皿洗い娘

解説



セルバンテス短篇集 02



◆本書より◆


「ガラスの学士」より:

「その奇妙な狂気とは自分の体がガラスでできているという妄想に他ならず、このあわれな男はこうした妄想ゆえ、誰かが自分の方にやってこようものなら、とたんに恐慌をきたして大声でわめきたて、触(さわ)るとこわれてしまうから、どうか近寄らないでくれ、自分は本当に普通の人間と違って足の先から頭のてっぺんまでガラスでできているのだから、といった意味のことを、なかなか筋のとおった言葉づかいで訴え、嘆願するのであった。
 彼のこのおかしな幻覚から救い出してやろうと、多くの者が、相手の叫び声や懇願などものともせず、彼にとびかかって抱きしめ、ほらよく見るがいい、べつに壊れはしないじゃないかと説得してみたが、そうした努力も結局はすべて水泡に帰した。抱きつかれた学士は、けたたましい金切り声をあげながら地面に身を投げ出すと、そのまま失神してしまい、ほとんど四時間もしなければ正気に戻らなかったし、おまけに正気に戻れば、またぞろ、頼むから近寄らないでくれという例の嘆願を繰り返したからである。そして彼は、近寄らずに遠くからであれば、なんなりと好きなことを質問してもらいたい、自分はガラスの人間であって肉体をそなえた人間ではないから、どんな質問に対しても、より思慮深い返答を与えられるはずだ、なんとなれば、ガラスというのは繊細にして緻密な物質ゆえ、それに包まれた精神が、重苦しくも俗臭紛々たる肉体に包まれたそれより機敏に、しかも的確にはたらくのは明らかなのだから、などと口走った。
 すると、彼の言うことが本当かどうか試してみようとする者も現われて、多くの難問をやつぎはやに吹っかけたが、彼はいささかもとどこおることなく、明快な答えを並べて、驚くべき才知のひらめきを見せつけるのであった。」








































































































































































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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