斎藤茂吉 『歌集 赤光』 (復刻)

「月落ちてさ夜ほの暗く未だかも彌勒(みろく)は出でず蟲鳴けるかも」
(齋藤茂吉)


齋藤茂吉 
『歌集 赤光』

東雲堂書店版
新選 名著複刻全集 近代文学館

刊行: 日本近代文学館
発売: ほるぷ
昭和49年11月20日 印刷
昭和49年12月1日 発行(第13刷)
312p+12p 口絵(カラー)1葉 
図版(カラー/モノクロ)2葉
四六判 丸背紙装上製本 カバー



継表紙(背の部分はクロス)。天金。


斉藤茂吉 赤光 01


カバー表。


斉藤茂吉 赤光 05

本体表紙。


斉藤茂吉 赤光 02


目次:

大正二年
 1 悲報來(十首)
 2 屋上の石(八首)
 3 七月廿三日(五首)
 4 麥奴(十六首)
 5 みなづき嵐(十四首)
 6 死にたまふ母(五十九首)
 7 おひろ(四十四首)
 8 きさらぎの日(十一首)
 9 口ぶえ(五首)
 10 神田の火事(五首)
 11 女學院門前(五首)
 12 呉竹の根岸の里(十一首)
 13 さんげの心(十七首)
 14 墓前(二首)
大正元年。明治四十五年
 1 雪ふる日(八首)
 2 宮益坂(八首)
 3 折に觸れて(八首)
 4 靑山鐵砲山(八首)
 5 ひとりの道(十四首)
 6 葬り火(二十首)
 7 冬來(十四首)
 8 柿の村人(十首)
 9 郊外の半日(十七首)
 10 海邊にて(二十三首)
 11 狂人守(八首)
 12 土屋文明へ(八首)
 13 夏の夜空(八首)
 14 折折の歌(二十六首)
 15 さみだれ(八首)
 16 兩國(八首)
 17 犬の長鳴(八首)
 18 木こり(十七首)
 19 木の實(八首)
 20 睦岡山中(十一首)
 21 或る夜(八首)
明治四十四年
 1 此の日頃(八首)
 2 おくに(十七首)
 3 うつし身(十七首)
 4 うめの雨(廿首)
 5 藏王山(八首)
 6 秋の夜ごろ(廿首)
 7 折に觸れて(廿首)
明治四十三年
 1 田螺と彗星(十一首)
 2 南蠻男(十一首)
 3 をさな妻(十四首)
 4 悼堀内卓(七首)
自明治三十八年至明治四十二年
 1 折に觸れ(十七首)
 2 地獄極樂圖(十一首)
 3 螢(五首)
 4 折に觸れ(二十首)
 5 蟲(八首)
 6 雲(十四首)
 7 苅しほ(八首)
 8 留守居(八首)
 9 新年の歌(十四首)
 10 雜歌(十一首)
 11 鹽原行(四十四首)
 12 折に觸れて(二十首)
 13 細り身(三十五首)
 14 分病室(五首)

挿畫
 蜜柑の收穫……………木下杢太郎氏
      彫刻……………伊上凡骨氏
 通草のはな……………平福百穗氏
      三色版…………田中製版所
 佛頭 …………………木下杢太郎氏



斉藤茂吉 赤光 03



◆本書より◆


「めん雞(どり)ら砂あび居(ゐ)たれひつそりと剃刀研人(かみそりとぎ)は過ぎ行きにけり」

「うつうつと濕り重たくひさかたの天(あめ)低くして動かざるかも」

「たたなはる曇りの下を狂人(きやうじん)はわらひて行けり吾を離れて」

「藻のなかに潜(ひそ)むゐもりの赤き腹はつか見そめてうつつともなし」

「つつましく一人し居れば狂院(きやうゐん)のあかき煉瓦に雨のふる見ゆ」

「歩兵隊代々木(よよぎ)のはらに群れゐしが狂人(きやうじん)のひつぎひとつ行くなり」

「赤光(しやくくわう)のなかに浮びて棺(くわん)ひとつ行き遙(はる)けかり野は涯(はて)ならん」

「上野(うへの)なる動物園にかささぎは肉食ひゐたりくれなゐの肉を」

「自殺せる狂者(きやうじや)をあかき火に葬(はふ)りにんげんの世に戰(おのの)きにけり」

「けだものは食(たべ)もの戀ひて啼き居たり何(なに)といふやさしさぞこれは」

「たのまれし狂者(きやうじや)はつひに自殺せりわれ現(うつつ)なく走りけるかも」

「おのが身はいとほしければ赤棟蛇も潜みたるなり土の中(なか)ふかく」

「世の色相(いろ)のかたはらにゐて狂者もり黄なる涙は湧きいてにけり」

「いちめんの唐辛子畑に秋のかぜ天(あめ)より吹きて鴉(からす)おりたつ」

「曼珠沙華咲けるところゆ相むれて現身(うつしみ)に似ぬ囚人は出づ」

「草の實はこぼれんとして居たりけりわが足元(あしもと)の日の光かも」

「くれなゐの百日紅は咲きぬれど此(この)きやうじんはもの云はずけり」

「としわかき狂人守(きやうじんも)りのかなしみは通草の花の散らふかなしみ」

「氣のふれし支那のをみなに寄り添ひて花は紅しと云ひにけるかな」

「猫の舌のうすらに紅き手の觸(ふ)りのこの悲しさに目ざめけるかも」

「屈(かが)まりて腦の切片(せつぺん)を染(そ)めながら通草(あけび)のはなをおもふなりけり」

「けふもまた向ひの岡に人あまた群れゐて人を葬(はふ)りたるかな」

「蛇の子はぬば玉いろに生(あ)れたれば石の間(ひま)にもかくろひぬらむ」

「墓はらを歩み來にけり蛇の子を見むと來つれど春あさみかな」

「病院をいでて墓原かげの土踏めば何(なに)になごみ來しあが心ぞも」

「松風の吹き居(ゐ)るところくれなゐの提灯つけて分け入りにけり」

「猿の肉ひさげる家に灯(ひ)がつきてわが寂しさは極まりにけり」

「みちのくの藏王(ざわう)の山のやま腹にけだものと人と生きにけるかも」

「紅蕈(べにたけ)の雨にぬれゆくあはれさを人に知らえず見つつ來にけり」

「山ふかき落葉のなかに夕(ゆふ)のみづ天(てん)より降(ふ)りてひかり居りけり」

「現し身の瞳(ひとみ)かなしく見入りぬる水はするどく寒くひかれり」

「けだものの暖かさうな寢(いね)すがた思ひうかべて獨りねにけり」

「うつそみの命は愛(を)しとなげき立つ雨の夕原(ゆふはら)に音(ね)するものあり」

「くろく散る通草(あけび)の花のかなしさを稚(をさな)くてこそおもひそめしか」

「汝兄(なえ)よ汝兄(なえ)たまごが鳴くといふゆゑに見に行きければ卵が鳴くも」

「はるばると星落つる夜の戀がたり悲しみの世にわれ入りにけり」

「とほき世のかりようびんがのわたくし兒田螺はぬるきみづ戀ひにけり」

「とほ世べの戀のあはれをこほろぎの語(かた)り部(べ)が夜々つぎかたりけり」

「月落ちてさ夜ほの暗く未だかも彌勒(みろく)は出でず蟲鳴けるかも」

「ぬば玉のふくる夜床に目ざむればをなご狂(きちがひ)の歌ふがきこゆ」



斉藤茂吉 赤光 04




こちらもご参照下さい:

アーサー・マッケン 『夢の丘』 平井呈一 訳 (創元推理文庫)





























































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