リチャード・キャヴェンディッシュ 『アーサー王伝説』 高市順一郎 訳

リチャード・キャヴェンディッシュ 
『アーサー王伝説』 
高市順一郎 訳
 

晶文社 
1983年9月20日 発行
328p 19.5×15.5cm 
丸背紙装上製本 カバー
定価1,800円
ブックデザイン: 平野甲賀
カヴァー説明: バン・ジョーンズ「アーサーの死」



Richard Cavendish: King Arthur & the Grail, 1978
各章扉に図版(モノクロ)4点。


キャヴェンディッシュ アーサー王伝説


帯文:

「冒険と
激情と。
名誉と
死と。

あらゆる
騎士物語の
源流にして
その最高峰をなす
アーサー王伝説の
魅力のすべて。」



帯背:

「アーサー王と
円卓の騎士」



カバーそで文:

「アーサー王は紀元6世紀にイギリスに実在したとされる伝説的英雄である。王の宮廷には、絶世の美女、魔法使い、豪勇の騎士たちが集い、幾多の物語が生まれた。これが「アーサー王と円卓の騎士」の物語として、今日までヨーロッパじゅうで語り継がれてきた。冒険と名誉、恋愛と陶酔にみちた、この物語の魅力と価値をあきらかにする。

 リチャード・キャヴェンディッシュ イギリスの作家。1930年生まれ。オックスフォード大学で歴史を学ぶ。はじめ小説を書いていたが、やがて神話やオッカルトを題材にしたノンフィクションの分野に転じた。『魔術の歴史』『天国と地獄のヴィジョン』(いずれも未邦訳)などの著書がある。」



目次:

はしがき

Ⅰ ブリテン王アーサー
 実在のアーサー
 ケルト伝説のアーサー
 コーンウォルの猪

Ⅱ アーサー王と円卓の騎士
 石にささった剣
 円卓とその騎士たち
 ランスロット、ガウェイン、トリストラム
 マーリンとモーガン・ル・フェイ

Ⅲ 聖杯の探求
 漁夫王の城
 アリマテアのヨセフ
 パーシヴァルと聖杯
 ギャラハッドの勝利
 グラストンベリー伝説

Ⅳ アーサーの死
 ランスロットとギネヴィア王妃
 モルドレッドの裏切り
 終幕 アーサーの死

付録Ⅰ 「ブリテンの話」
付録Ⅱ ウェストン女史とA・E・ウェイト
原注
参考文献
訳者解説――中世の森と城のロマンス




◆本書より◆


「ブリテン王アーサー」より:

「アーサー物語によく見かけられる例では、英雄はよく人間界をはなれ、神々や妖精、未知の正体不明の生き物の棲む異世(ことよ)や、ふしぎな危険きわまる国へ冒険を求めていく。この異世で、英雄は偉大な武勲を立てたり、測りしれない価値をもつ何ものかを手に入れるのだ。例えばドラゴンや怪物を退治したり、捕われた人を解放し甦えらせたりして、人間界へ連れもどす。また、人知をこえた知恵を得たり、美しい花嫁や類しれない宝物を手に入れたりする。聖杯伝説では、生の奥義を見出し、不死をかちとるということさえある。」
「物語によっては英雄は異世にいつまでも滞まり、人間界に帰らないものもいるが、すぐれた第一級の英雄であれば必ず人間界にもどって来なければならない。(中略)英雄はこの世にない、人すべてが欲しがる何ものか、生を蘇えらせ高める何ものかを、もたらすものなのだ。
 こうした類型は、遡ると窮極的に先史時代の部族つきのシャーマンや神官=魔術師の祭祀にまでつながる。シャーマンは自ら恍惚状態に入り、そうして神々や霊魂の世界を訪れ、数々の恐ろしい危険や障碍に出会う。が、この冒険は異世から死者の魂を救い、生きてまた人間の躰に復してやるための遠征である。シャーマンはまたこうして自然を治め、生死を支配する不思議な力の知識を得、部族の利益のために用いた。
 シャーマンの恍惚・体験は、現代心理学による英雄伝説の解釈にも役立つ。英雄が足を踏み入れる異世とは、無意識の心に他ならないからだ。英雄が勝利をかちとり真理を発見するのは、情熱や行動の源泉であるこの人間性の最も暗い部分、また最も危険な領域からである。発見するのは、つまり自分自身のことに他ならず、英雄は「入手困難な宝」を携え日常世界に帰ってくる。宝とは完徳のことである。」

「異世についてのケルト伝承は、中世のアーサー王物語に強大な影響を与えた。異世は、美しく神秘的な、魔法のかかった国である。その国は人間界の慣いに従わない。一つの場所でありながら多くの場所でもあり、遠くにありながらまたすぐ近くにもある。西方の海上の一つの島であることもあるし、一群の島であることもある。地下か湖底のこともあれば、丘の上か埋葬塚の中のこともある。ふつう目につかずとも、次の角を曲がったすぐのところにあるかもしれない。その訳は、異世は多くヴェールに隔てられ、死すべき者の目に見えないからだ。
 異世では死もなければ時間もない。食べ物や飲み物は、魔術の大釜か色々の器で自然に運ばれてくる。異世の住人たちは何もしないで、酒盛りをしたり愛し合ったりしながら楽しく時を過す。耳には甘美な音楽がきこえ、鼻にはすばらしい匂いがにおっている。花が一年中咲き、木々にはいつもたわわな果物が実っている。」
「ケルト神話のこうした牧歌的な離れ島は、多くの点でギリシア時代の「幸運の島」、あるいは「祝福されたものの島」――つまり、海をわたった西の死者たちの国――の映像によく似ている。ケルトの民話では、しかし多くの場合、異世が死者たちの国なのかどうかはっきしていない。時には神々の棲み家であることもあり、不老不死の、美しい幸せな妖精たちの棲み家であることも非常に多いのだ。」



「アーサー王と円卓の騎士」より:

「「散文トリスタン」は、円卓の騎士にもう一人楽しい滅茶苦茶の新顔、ディナダン卿を登場させている。」
「ディナダンが滅茶苦茶男なのは、競争と戦いを通じて完徳を得るという騎士道の理想を持たないからである。他の人物たちは戸惑いといらだちの交った面白げな目ざしで彼を眺め、これほどおかしな道化の皮肉屋はいないと考える。」

「森は異世の一つで、人間がまだ手なずけていない世界である。」
「森のもつ磁石的な魅力、および恐怖に共通する一つの要素は、古色蒼然の感じである。森は人が来る前からそこにあった。それは人間より年老いた、より賢く、はるかに強力な生きものや秘密を隠している。古代ドルイドたちは森林の聖域で神を祀(まつ)ったし、聖木や聖なる洞穴をあがめる崇拝が古いヨーロッパの伝統に縫いこまれていた。現代の心理学用語でいえば、森の不気味さは心の中の暗い深淵、すなわち無意識というこみ入ったアメーバー増殖、理性に支配されない原始的、本能的な「年のいった」「野生の」感覚を表わす。森に侵入する英雄とは、つまり自分の中のもう一つの領界に入ることの比喩である。英雄は完全な真実の自己を発見、成就するためにこれをやり遂げなければならない。しかし、彼が入りこむ領域は幸先よい報いを約束すると同時に、極めて高度な危険をも秘めている。森は理性が麻痺する所である。マロリーでは「森」ということばは「狂気」を意味し、ランスロットやイヴァイン、そして他の英雄たちは狂ったとき森へ行き、そこで野獣のように暮らした。」



「アーサーの死」より:

「「ここにかつての王にして未来の王アーサーは眠る」。アーサーはもう一度帰ってくるという信仰は、マロリー時代の後も長い間伝わっていた。ウェイルズの民間伝承では、アーサー輩下の騎士たちはスノードン山のある洞窟に眠っているが、王自身はブルーフ・イ・スネサイ峠のある石塚の下にいるという。サマセットのカドベリー城では、アーサーとその部下たちは丘の下の洞穴に眠っていて、時々夜中に、彼らが近くの教会のそばの泉にやってくるらしい馬の蹄の音がきこえる。イングランド北部では、アーサー王はノーサンバーランドのセウィングシールズ城の地下深くに、ギネヴィアと廷臣、猟犬たちにかしずかれ眠っていると伝えられる。そして傍のテーブルの上にホルンが置いてあり、これが吹き鳴らされる時、偉大なる英雄は目を醒ますという。」




こちらもご参照下さい:

リチャード・バーバー 『アーサー王 ― その歴史と伝説』 高宮利行 訳






















































































































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