ヤコブス・デ・ウォラギネ 『黄金伝説 1』 前田敬作・今村孝 訳

「生前の聖トマスにたいへんかわいがられた人があって、ある日、病気になった。彼は、きっと治してもらえると信じて聖トマスの墓にもうで、快癒を祈願した。すると、たちまち健康なからだになった。しかし、家に帰ってから考えてみると、肉体の健康は、ひょっとするとたましいの障害になるかもしれないという気がした。そこで、その人は、ふたたび墓にもうでて、自分の健康がたましいにとってなんの役にもたたないのならば、どうかまた病気にしてくださいと祈った。すると、即座にもとのように病気になった。」
(「カンタベリーの聖トマス」 より)


ヤコブス・デ・ウォラギネ 
『黄金伝説 1』 
前田敬作・今村孝 訳


人文書院 
1979年5月20日 初版第1刷発行
1980年5月20日 初版第3刷発行
549p 
口絵(カラー)1葉 図版(カラー)3葉
四六判 丸背紙装上製本 カバー
定価2,800円



本書「凡例」より:

「本書は、あらゆるキリスト教聖人伝のなかの白眉とも言うべき福者ヤコブス・デ・ウォラギネ著『黄金伝説』を全訳したものである。」


本文中図版(モノクロ)6点。


黄金伝説 01 01


帯文:

「聖人伝説の白眉
キリスト教の空想力が生みだした神話文学の一大ドラマ。」



目次:

序章
一 主の降臨と再臨
二 使徒聖アンデレ
三 聖ニコラウス
四 聖女ルキア(ルチア)
五 使徒聖トマス
 (期節の区分)
六 主のご降誕
七 聖女アナスタシア
八 聖ステパノ
九 福音史家聖ヨハネ
一〇 罪なき聖嬰児ら
一一 カンタベリーの聖トマス
一二 聖シルウェステル
一三 主のご割礼
一四 主のご公現
一五 初代隠修士聖パウロス
一六 聖レミギウス
一七 聖ヒラリウス
一八 聖マカリオス
一九 ピンキスの聖フェリクス
二〇 聖マルケルス
二一 聖アントニオス
二二 聖ファビアヌス
二三 聖セバスティアヌス
二四 聖女アグネス
二五 聖ウィンケンティウス
二六 司教聖バシレイオス
二七 慈善家聖ヨハネス
二八 聖パウロの回心
二九 聖女パウラ
三〇 聖ユリアヌス
 (期節の区分)
三一 七旬節
三二 六旬節
三三 五旬節
三四 四旬節
三五 四季の斎日
三六 聖イグナティオス
三七 聖母マリアお潔(きよ)め
三八 聖ブラシオス
三九 聖女アガタ
四〇 聖ウェダストゥス
四一 聖アマンドゥス
四二 聖ウァレンティヌス
四三 聖女ユリアナ
四四 聖ペテロの教座制定
四五 使徒聖マッテヤ
四六 聖グレゴリウス
四七 聖ロンギヌス
四八 聖ベネディクトゥス
四九 聖パトリキウス
五〇 主のお告げ(マリアお告げ)
五一 主のご受難

解説



黄金伝説 01 02



◆本書より◆


「カンタベリーの聖トマス」より:

「生前の聖トマスにたいへんかわいがられた人があって、ある日、病気になった。彼は、きっと治してもらえると信じて聖トマスの墓にもうで、快癒を祈願した。すると、たちまち健康なからだになった。しかし、家に帰ってから考えてみると、肉体の健康は、ひょっとするとたましいの障害になるかもしれないという気がした。そこで、その人は、ふたたび墓にもうでて、自分の健康がたましいにとってなんの役にもたたないのならば、どうかまた病気にしてくださいと祈った。すると、即座にもとのように病気になった。」



「聖ヒラリウス」より:

「ヒラリウスは、蛇どもがうようよはびこっているガリナリア島(ジェノヴァ湾の小島)にやってきた。彼が近よると、すべての蛇が逃げだした。そこで、彼は、一本の杭を島のまんなかに打ちこんで、今後この境界を越えてはならないと蛇たちに下知(げじ)した。それ以後、蛇たちは、まるで島のあと半分が海であって、陸ではないかのようにその境界を越えることができなくなった。」


「聖マカリオス」より:

「聖マカリオスは、あるとき、広い砂漠を歩いていた。彼は、帰り道がわからなくならないように一マイルごとに葦を突きさしておいた。九日間歩いたとき、ある場所に身体を横たえて休んだ。そうして眠っているあいだに、悪魔が葦を全部引き抜いてきて、彼の枕もとに置いておいた。おかげで、彼は、帰りつくまでにさんざん難儀をしなければならなかった。
 あるとき、ひとりの隠修士がいた。彼は、庵室にいてはなんの役にもたたない、世間に出れば、多くの人びとの役にたつことができるのに、という考えにしょっちゅう悩まされていた。それで、マカリオスに悩みを訴えると、マカリオスは、そういう考えにはこう答えるのですと教えた。「わたしは、キリストのためにひとりでこの庵室の壁を守っていたいのだ」と。
 マカリオスは、あるとき彼を刺した蚊を殺したことがあった。しかし、蚊からたくさんの血が出たのを見て、自分自身がくさい臭気をはなっていたためだとわが身を責めた。そこで、素裸になって砂漠に行き、蚊と虻(あぶ)に血を吸わせた。こうして全身を刺されて、見るもいたましい姿になって帰ってきたのだった。」



「聖アントニオス」より:

「アントニオスは、こう言ったことがあった。「ちょうど魚が陸にあがると死んでしまうように、修道士も、庵室を出て、世俗の人びととともに住むと、こころの安らぎを失ってしまいます」また、「孤独のなかに静座している者は、三つの戦いをまぬがれています。見ること、聞くこと、そして話すことにもはや惑わされることがないからです。残されているただひとつの戦いは、自分のこころとの戦いです」」


「慈善家聖ヨハネス」より:

「聖ヨハネスは、人びとに慈善のわざをすすめるのにつぎのような実話を語ってきかせた。聖セラピオンは、ある貧者に自分の外套をあたえたあとで、寒さにたいへん苦しんでいるべつの乞食に出会った。彼は、乞食に服をあたえ、素裸で福音書を手にもって道ばたに腰をおろしていた。そして、だれに身ぐるみはがされたのですかとたずねられると、福音書を指さして、「これが身ぐるみはいだのです」と言った。そのあと、またひとりの乞食を見かけると、福音書を売ってきて、その金をあたえた。すると、福音書はどうなさったのですかとたずねる人があって、彼はこう答えた。「福音書は、〈帰って、持っているものをみな売りはらって、貧しい人びとにほどこしなさい〉と命じました。わたしは、福音書のほかになにももっていなかったので、福音書の教えどおりに福音書を売ってきたのです」」








































































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ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

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