ヤコブス・デ・ウォラギネ 『黄金伝説 2』 前田敬作・山口裕 訳

「ゲオルギウスは、(中略)長い槍をぐるぐるふりまわし、(中略)えいとばかりに竜に突きたてると、竜は、どうと倒れた。それから、彼は、王女にむかって、「腰帯をほどいて、竜の首に投げかけなさい。こわがることはありません」と言った。王女は、言われたとおりにした。すると、竜は、小犬のようにおとなしく王女のあとについてきた。」
(「聖ゲオルギウス」 より)


ヤコブス・デ・ウォラギネ 
『黄金伝説 2』 
前田敬作・山口裕 訳


人文書院 
1984年1月25日 初版第1刷発行
1986年9月10日 初版第3刷発行
486p 
口絵(カラー)1葉 図版(カラー)3葉
四六判 丸背紙装上製本 カバー
定価3,296円(本体3,200円)



本書「凡例」より:

「本書は、あらゆるキリスト教聖人伝のなかの白眉とも言うべき福者ヤコブス・デ・ウォラギネ著『黄金伝説』を全訳したものである。」


本文中図版(モノクロ)5点。


黄金伝説 02


帯文:

「第一級の説話文学
主の復活から始まる本巻では、聖ゲオルギウス、洗者聖ヨハネ、聖パウロ、聖大ヤコブなどの著名な聖人たちの奇跡と信仰が語られる。」



目次:

 (期節の区分)
五二 主のご復活
五三 聖セクンドゥス
五四 エジプトの聖女マリア
五五 聖アンブロシウス
五六 聖ゲオルギウス
五七 福音史家聖マルコ
五八 教皇聖マルケリヌス
五九 聖ウィタリス
六〇 アンティオケイアの乙女
六一 殉教者聖ペトルス
六二 使徒聖ピリポ
六三 使徒聖小ヤコブ
六四 聖十字架の発見
六五 ラティナ門外の聖ヨハネ
六六 大祈願祭と小祈願祭
六七 主のご昇天
六八 聖霊降臨
六九 聖ゴルディアヌスと聖エピマクス
七〇 聖ネレウスと聖アキレウス
七一 聖パンクラティウス
 (期節の区分)
七二 聖ウルバヌス
七三 聖女ペトロネラ
七四 祓魔師(ふつまし)聖ペトルス
七五 聖プリムスと聖フェリキアヌス
七六 使徒聖バルナバ
七七 聖ウィトゥスと聖モデストゥス
七八 聖キュリアコスと母ユリタ
七九 聖女マリナ
八〇 聖ゲルウァシウスと聖プロタシウス
八一 洗者聖ヨハネの誕生
八二 聖ヨハネスと聖パウルス
八三 教皇聖レオ
八四 使徒聖ペテロ
八五 使徒聖パウロ
八六 ローマ七殉教兄弟
八七 聖女テオドラ
八八 聖女マルガレタ
八九 聖アレクシオス
九〇 聖女プラクセディス
九一 マグダラの聖女マリア
九二 聖アポリナリス
九三 聖女クリスティナ
九四 使徒聖大ヤコブ




◆本書より◆


「聖ゲオルギウス」より:

「騎士ゲオルギウスは、カッパドキアの出身である。あるときリビュアの町シレナに立ち寄った。町の近くには、海のように大きな湖があって、毒をもった竜が棲んでいた。町の住民たちは、武器をとって総出で竜を退治に出かけたが、そのたびに命からがら逃げ帰ってきた。」
「たまたまそこへ聖ゲオルギウスが馬で通りかかった。王女が泣いているのを見て、どうかなさったのですかとたずねた。王女は、「親切なお若い騎士さま、すぐ馬に乗ってお逃げなさい。わたしの巻きぞえになっては、一命にかかわることになりますよ」と答えた。」
「王女がまだ話しているうちに、はたせるかな、竜が湖面から頭をもちあげた。(中略)ゲオルギウスは、ひらりと馬にまたがると、十字を切り、こちらへ近づいてくる竜めがけて馬を走らせた。そして、長い槍をぐるぐるふりまわし、神に加護を祈って、えいとばかりに竜に突きたてると、竜は、どうと倒れた。それから、彼は、王女にむかって、「腰帯をほどいて、竜の首に投げかけなさい。こわがることはありません」と言った。王女は、言われたとおりにした。すると、竜は、小犬のようにおとなしく王女のあとについてきた。こうして王女が竜をつれて町に帰ると、住民たちは、怖れおののいて、山や洞穴にのがれ、「たいへんなことになった。もうだれも助かる見こみはない」と嘆いた。」



「殉教者聖ペトルス」より:

「ヴァレサナのヤコブスの妻でギロルダという名前の婦人が、十四年のあいだ不浄の霊にとりつかれていた。ギロルダは、ある司祭のところへ行って、「わたしは、悪霊にとりつかれて、責めさいなまれております」と言った。司祭は、不安になって聖具室に逃げこみ、頭巾の下にストラと魔祓いの祈祷文が書いてある本とをひそかに隠した。それから、同僚の聖職者たちを大勢従えて、ギロルダのところへもどってきた。彼女は、司祭がもどってきたのを見ると、大声で、「この悪者め、どこへ行っていたんだよ。頭巾の下に隠しているのはなにさ」とわめいた。司祭は、魔祓いのお祈りをとなえたが、なんにも効き目がなかった。そこで、ギロルダは、そのころまだ存命していた聖ペトルスを訪れて、お助けくださいとたのんだ。ペトルスは、霊にみたされてこう預言した。「あなたが願っていることは、いまはかなえてあげられませんが、気落ちしてはいけません。助けてあげられる日がきっと来ますから」事実、この言葉どおりになった。というのは、ペトルスが殉教したと聞いて、ギロルダは、その墓所に詣で、悪霊の責苦からすっかり解放されたからである。」
「ベレーニョにウェロナという名の婦人がいて、六年ものあいだずっと悪霊たちに苦しめられていた。聖ペトルスの墓につれていくと、つき添ってきた男たちの力では抑えかねるほどあばれだした。男たちのなかにコンラドゥス・デ・ラドリアノという名の異端者がいた。この男は、聖人の奇跡を愚弄するようなことも平気で言ってのけるほどの異端であった。彼がほかの男たちといっしょに婦人をとり抑えていると、彼女のなかにいる悪霊たちは、彼にむかってこう言った。「おまえは、なぜわしらを抑えているのじゃ。おまえは、わしらの手下ではなかったのか。おまえは、わしらがこれこれの場所へつれていってやったからこそ、そこで殺しをしてのけることができたのではないか。また、おまえがこれこれの犯行をやってのけた場所につれていってやったのも、わしらではなかったか」悪霊たちは、こう言って、彼だけしか知るはずのない多くの悪事をつぎつぎにならべたてた。男は、びっくり仰天した。しかし、悪霊どもは、婦人の首と胸を引き裂いてとびだし、あとに残された婦人は、半死の状態で倒れていた。が、しばらくすると、彼女は、起きあがって、元気なからだになった。」



「聖アレクシオス」より:

「アレクシオスは、この町まで来ると、たずさえてきた財宝をのこらず貧しい人たちに分配し、粗末な服をまとって、神の母聖マリア教会の前庭にたむろしている乞食たちの群れにくわわった。彼は、もらいもののうちわが身をやしなうのにぎりぎり必要な分だけ残して、あとはみな貧しい人たちにあたえた。一方、父親のエウペミアヌスは、ひとり息子の家出以来怏々としてたのしまず、郎等(ろうどう)たちを世界のあらゆる土地に派遣した。彼らは、八方手をつくしてアレクシオスのゆくえをさがした。エデッサの町にも二、三人やってきたが、アレクシオスの姿を見ても、これが主家のおん曹子(ぞうし)だとはわからず、施しものをわたして、ほかの貧しい人たちとわけさせた。」
「さて、アレクシオスが上記の教会の前庭で神に仕えて十七年たったとき、この教会にある聖母像が、ある日納室係にこう告げた。「あの天国にふさわしい神の人に教会のなかに入るように言いなさい。主の御霊(みたま)が、この人にのぞんでいます。彼の祈りが燻香のように神の御前(おんまえ)に立ちのぼったからです」納室係は、聖母のお告げがだれのことを言っているのかわからなかった。すると、聖母像は、かさねてこう告げた。「門前の前庭にすわっている人がそれです」そこで、納室係は、いそいで出ていくと、アレクシオスを聖堂内に招じ入れた。まもなくこの話が評判になって、アレクシオスは、町じゅうからもてはやされるようになった。彼は、世俗の名声がうとましく、この町を去って、ラオディケイアへのがれた。ここから船に乗って、キリキアのタルソスへ行こうとした。しかし、神の思召しによって、船は、風に流されて、ローマに近い海岸に漂着した。アレクシオスは、これを知って、内心こうつぶやいた。「だれにも知られずにこっそり父の屋敷内に住めないものだろうか。もう他人の世話にはなりたくない」ちょうどそのとき、父が大勢の従者をつれて皇帝の宮殿から退出してくるのが見えた。そこで、あとを追いかけていって、こうよばわった。「神のしもべのような敬虔なお殿さま、どうぞこの巡礼めをお屋敷の片隅に住まわせて、食卓からこぼれたパン屑でやしなっていただきとうございます。そうすれば、神さまも、あなたさまの巡礼に憐れみをおかけくださいましょう」父のエウペミアヌスは、これを聞くと、わが子の功徳にもなろうかとおもって、この巡礼を家に入れてやるようにと言いつけた。そして、邸内の一室を彼の居室にあてがい、自分の食卓から食事をはこばせ、係りの召使いをひとりつけてやった。アレクシオスは、祈りの生活をつづけ、断食と不眠の苦行にはげんだ。家の召使いたちは、よくそういう彼をばかにして、汚ないゆすぎ水を頭にぶっかけるなど、いろんないたずらやいやがらせをした。しかし、彼は、どんな仕打ちをされても辛抱づよく耐えた。こうして、また十七年のあいだ、正体を見やぶられずに父の屋敷に住んでいた。」























































































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プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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