新倉俊一 『ヨーロッパ中世人の世界』

新倉俊一 
『ヨーロッパ中世人の世界』


筑摩書房 
1983年11月30日 初版第1刷発行
345p 口絵(モノクロ)4p
四六判 角背紙装上製本 カバー
定価2,400円



本書「あとがき」より:

「要するに、自閉と突出という二極分解は――中世人もまた、別の意味で、魂の二極分解の常習者であった――、私の業(ごう)と言うべきものである。」


新倉俊一 ヨーロッパ中世人の世界 01


帯文:

「愛は十二世紀の発明である。(セニョーボス)
「トリスタンとイズー」「ローランの歌」中世の恋愛詩にあらわれた中世人たちの愛と死と夢の世界を写本研究の成果をふまえて、生き生きと描く文学エッセイ。」



帯背:

「中世文学への誘い」


目次:


中世の知識人 アベラールとその後裔たち
中世人と死
中世人と夢
中世人の法意識
中世の「近親相姦」伝承


愛、十二世紀の発明
司祭アンドレの『恋愛術』
モロワの森の恋人たち


ファブリオ、コント、ノヴェレ
ファブリオの世界
悪女伝『リシュー』
トルバドゥール芸術とアラビヤ文化


或る写本の話
海の星 Stella Maris
硯乎硯乎(けんやけんや)、與瓦礫異(がれきとことなり)

あとがき



新倉俊一 ヨーロッパ中世人の世界 02



◆本書より◆


「中世の知識人 アベラールとその後裔たち」より:

「窮乏の度合は、実学ならざる文芸の道にいそしんだ者において著しい。実学(法律学・教会法学)のほうは、王権による中央集権化が進み、一方、公教会制度の整備が進行するにつれて、むしろこれを修めた実務家の需要が増えたくらいであった。アベラールの時代には、専門家たることと学問への内的希求が調和していて、専門知識が広い意味での教養の一環として捉えられ、如何に生きるかとの命題と不可分の関係にあったわけだが、専門分化が進むにつれて、悪しき意味での技術優先、実学尊重の傾向が顕著となって来た。すでに十二世紀の中葉、アベラールの愛弟子の一人マイネリウスは、学生を前にして、「法学が文芸の学を殺す、悲しむべき日が来るだろう」と予言したと伝えられるが、実用 utilitas 重視の気風は、正にその予言どおりに蔓延していったのである。」

「就職の道をふさがれた彼らは、生産手段を持ち合わせぬ以上、都市を食いつめて放浪の旅に出るほかはなかった。」

「これらの、いわば挫折したグループのほかに、自らの意志で(というより性格的に)、一定の秩序・規律に拘束されることを嫌う連中、リベルタン libertins とでも名付けるべき連中がいたことを、指摘しなければならない。
 第一節で引用した「本性を抑えるのはいかに難きことか」を、改めて想起してみる必要がある。もとより、この種の本能は、また、その誘惑に抗し難い人間の存在は、いつの時代にもあることで、この時代の特産ではありえない。しかしながら、中世において、公教会がかなりその抑圧に成功していた世界に、突如その禁圧が及ばなくなったような、或はその禁圧に反抗するグループが出現したかの如き現象に、われわれは立ち会うのである。」
「ほとんど異教的な肉体の讃美、ウェヌスの力に対する屈服と礼賛、バッカスへの共感と陶酔、賭博と無頼の肯定――ベネディクト・ボイエルン修道院所蔵の十三世紀写本の名を高からしめたものは、まさにこれらの詩篇であった。」
「彼らリベルタンには、既成の権威・戒律に敬意や畏怖の念を抱かぬどころか、のみならず、そのようなものを愚弄することを以て快しとするようなところが見える。このような性向は、公教会の権威者ないし特権者――教皇、教皇庁の高僧、司教、修道院長や修道僧――を攻撃する詩に、ことに明瞭にあらわれる。」
「彼らは自律集団を形成するよりは、むしろ、もっと安易な方法をとった。すなわち、〈旅芸人〉 joculatores, jongleurs の一員となることである。一口に〈旅芸人(ジョングルール)〉と言っても、これには様々な種類がある。剣使い、猛獣使い、アクロバット演技者、物真似、手品師等の類いから、文学のレパートリを携えて、これを宴席で披露する、多少とも知的形成を必要とする連中までもが含まれるのである。中には、演奏家が作曲にまで手を出す場合があるように、自ら歌、詩、小話を制作して、自作自演することもありえた。放浪学僧が旅芸人の一座に加わる場合、その知的な役割を担ったことは(中略)、彼らの前歴からして当然に推定できることである。」





こちらもご参照下さい:

新倉俊一 『フランス中世断章』











































































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ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

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難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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