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アポリネール 『虐殺された詩人』 窪田般彌 訳 (小説のシュルレアリスム)

アポリネール 
『虐殺された詩人』 
窪田般彌 訳
 
小説のシュルレアリスム

白水社
1975年9月10日 第1刷発行
1975年10月25日 第2刷発行
277p 口絵(モノクロ)1葉
四六判 
丸背紙装上製本 機械函
定価1,300円
装幀: 野中ユリ



Guillaume Apollinaire: Le Poète Assasiné, 1916


アポリネール 虐殺された詩人 01


目次:

虐殺された詩人
月の王
ジォヴァンニ・モローニ
愛妾
影の出立
死後の婚約者
青い眼
神とみなされた不具者
聖女アドラータ
おしゃべりな回想
混成賭博クラブでのめぐり会い
現代魔術のささやかな処方箋
鷲狩り
アーサー 過ぎた日の王・未来の王
友人メリタルト
仮面の砲兵伍長奇談すなわち蘇生した詩人

解説 (巖谷國士)



アポリネール 虐殺された詩人 03



◆本書より◆


「虐殺された詩人」より:

「オルフェウスと同じく、あらゆる詩人は非業の死をとげかけていた。いたるところで出版人たちは強奪され、詩集は焼かれた。どの町でも虐殺が行なわれた。」

「「たいへんな騒ぎね」とトリストゥーズが言った。「パポナ、あなた詩人なんかじゃないわね。あなたは詩よりもはるかに価値あることをお学びになったわけね。パポナ、あなたはほんのちょっぴりだって詩人なんかじゃないんでしょ?」
 「もちろんそうさ」とパポナが答えた。「おもしろ半分に詩を作ったことはあるけれど、私は詩人じゃないね、立派な実業家さ。財産の管理にかけたら、誰だって私以上に通暁していないよ。」
 「今夜、アデレードの『声』紙にさっそく手紙を出して、そう言ってやんなさいよ。そうしておけば、あなたは難を逃れるわ。」
 「間違いなくそうしよう」とパポナは言った。「ところで、今までに見た人がいるのかね、詩人なんてものを! そいつはクロニアマンタルにふさわしいもんさ。」
 「ほんとにあの人ったら、ブルノで虐殺されちまえばいいのにねえ」とトリストゥーズが言った。」

「詩人は東の方をふり向き、興奮した声でしゃべった。
 「私はクロニアマンタル、現在の詩人のなかで最も偉大な詩人だ。しばしば私は差し向かいで神を見たのだ。私は人間としての自分の眼が和らげ鎮めた神の光輝に耐えた。私は永遠を生きた。しかし、いまや時がきたので、私はここに来て、お前の前に立っているのだ。」
 トグラットはこの最後の言葉を激しい爆笑をもって迎えた。いちばん前の数列にいた群集は、トグラットが笑うのを見て同じように笑った。そして炸裂音、旋転音、顫音のこもごもの笑いがたちまち全下層民に、パポナとトリストゥーズ・バルリネットに伝わりひろがった。みんなの開いた口が、落ち着きを失ったクロニアマンタルに面と向かいあっていた。そうした笑い声につつまれながら人々は叫んだ。
 「水にほうりこめ、詩人野郎!…… 火あぶりだぞ、クロニアマンタル!…… 犬にくれてやれ、月桂樹の情夫め!」

 最前列の太い棍棒をもった一人の男がクロニアマンタルに一撃をあびせると、彼の苦しげな顰(しか)め面はいちだんと群集の笑いを煽(あお)った。上手に投げこまれた一個の石が詩人の鼻に命中し、血がどっと流れ出た。」



「月の王」より:

「すぐにパヴァリア王ルードヴィッヒ二世だと私が気がついたこの男の言葉が高まるにつれて、私はパヴァリアの民衆たちが固く信じている考えが――つまり彼らの不幸な気違い王はスタルンベルグ湖の暗い水底に死んだのではないという考えの正しさを認めるにいたった。」


「神とみなされた不具者」より:

「彼は女に言ってのけた。
 「なれは百万の人間じゃ。あらゆる背丈にしてあまたの顔だ。幼女、生娘、人妻んいして老婆じゃ。現に生き、すでに死したる者、笑って涙し、愛して憎む者じゃ。なれは無にしてすべてなのだ。」
 ある政治家はいかなる政党に共鳴すべきかを知りたいと思った。
 「すべてに共鳴すべし」と永遠の神は答えた。「しかして、いかなる政党にも共鳴すべからず。なぜと申せば、諸政党は影と光のごときもので、何ごとをもってしても変ええず、ともに生きるべきものだからじゃ。」
 ある一人は彼にナポレオンの生涯を語ってきかせた。
 「ボナパルト野郎め!」とジュスタン・クーショは叫んだ。「奴は戦に勝ち、打ち破られ、そしてセント・ヘレナで死ぬことを今もって止めておらぬ。」

 そこで、別の一人がびっくりして死について質問すると、彼は次のように言って、小きざみに跳びはねながら行ってしまった。
 「言葉だ、言葉なんじゃ! どうして死を望まれる? 人はここにいるだけで充分なのだ。人はここに風、雨、雪、ナポレオン、アレキサンダー大王、海、樹木、町、河、山と同じように在るものなのじゃ。」
 このように彼にとっては全世界とあらゆる時代とが、彼の一本しかない手によって正確に奏でられる調律みごとな楽器だった。」



アポリネール 虐殺された詩人 02
































































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
 
うまれたときからひとでなし
なぜならわたしはねこだから
 
◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

Koro-pok-Guru
Away with the Fairies

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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