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出口保夫 『ロンドン塔 ― 光と影の九百年』 (中公新書)

出口保夫 
『ロンドン塔
― 光と影の九百年』
 
中公新書 1141

中央公論社
1993年7月15日 印刷
1993年7月25日 発行
iv 182p
新書判 並装 カバー
定価680円(本体660円)



本文中図版(モノクロ)多数。


出口保夫 ロンドン塔


帯文:

「漱石の小品以来親しまれてきた「塔」の華麗にして悲惨な歴史」


カバーそで文:

「二十世紀初頭、夏目漱石の小品「倫敦塔」によって紹介されて以来、われわれにも親しみ深く、ロンドンを訪れる観光客にとっても最も印象の強い観光名所となっているロンドン塔は、現在の静謐な姿の裏に、九百年に及ぶ華麗にして悲惨な歴史を宿している。本書は、塔以前のローマ時代の砦から、ウィリアム征服王による築城、中世から近世への流血の時代を経て、次第に世俗化してゆき、今日に到るロンドンの象徴を通覧する読物である。」


目次:

プロローグ――ロンドン塔再訪
 漱石とロンドン塔
 ビーフ・イーターたち
 ホワイト・タワーを見る
 荘厳な聖(セント)ジョンズ・チャペル
 ヘンリー八世の鎧
 タワー・グリーンの処刑場跡
 聖ピーター教会
 豪華絢爛の宝物館
 城壁を歩く
 ビーチャム・タワーの烏たち
 鍵おさめの儀式

第一章 「塔」の築城
 ローマ時代の砦
 タワー・ヒルの要塞
 ロンドンを制する者は……
 ウィリアム征服王とロンドン
 征服王の初期の築城
 ガンドルフと最初の木造の「塔」
 「塔」の聖なる礼拝堂の方位と構造
 「塔」の恐ろしい外観
 ホワイト・タワーの構造
 ルーフス兄弟と「塔」
 スティーヴン王とキーツの詩
 ヘンリー二世とトマス・ア・ベケット

第二章 華麗な「塔」の完成
 信仰厚いヘンリー三世と「塔」の増築
 華麗なウェイクフィールド・タワー
 「塔」に造られた動物園
 十三世紀の「塔」の生活
 宮廷の人びと
 騎士たちの生活
 ロンドン橋の完成と中世のロンドン
 エドワード一世とビーチャム・タワー
 聖ピーター教会の献堂

第三章 中世動乱期の「塔」
 リチャード二世の華麗な戴冠式
 人頭税に立ち上がる民衆
 タイラーとジョン・ボール
 堅牢なる城塞「塔」
 マイル・エンドでのリチャード王とタイラーの死
 リチャード二世、涙の譲位
 ヘンリー四世とバース勲章の騎士たち
 王の身のまわりを世話する人びと
 「塔」のエドワード五世とヨーク公
 姿を消した王子たち
 リチャード三世とボズワースの戦い

第四章 流血の時代 Ⅰ
 チューダー時代の「塔」
 ヘンリー八世の王宮と改革
 エラスムスとヘンリー八世
 ヘンリー八世と王妃たち
 ウルジーの失脚と大法官トマス・モア
 「塔」でのフィッシャー司教
 トマス・モアの処刑
 シェイクスピア『サー・トマス・モア』
 「塔」に入るアン・ブリン
 アン王妃の最期
 キャサリン王妃の処刑

第五章 流血の時代 Ⅱ
 エドワード六世の戴冠式行列
 エドワードの夭折
 ジェーン・グレー「塔」に入る
 メアリー女王の即位
 ノーサンバランド公の処刑
 ジェーン・グレーの最期
 エリザベス女王と「塔」
 P・ヘンツナーの「塔」訪問
 兵器庫と造幣局
 エリザベス女王と廷臣たち
 エセックス伯への寵愛
 非運なエセックス伯の最期
 サウサンプトン伯と「塔」
 ローリー卿の「塔」の生活
 ローリー卿『世界史』を書く
 ローリー卿の辞世の詩

第六章 「塔」の刻字
 「塔」に留まらなかったジェームズ一世
 ガイ・フォークス事件
 残忍な拷問台
 ビーチャム・タワーの刻字
 ベイリーの人生訓
 ギフォードとアランデルの刻字
 ソールト・タワーの刻字
 クロムウェル時代の「塔」の荒廃
 チャールズ二世による「塔」の復活
 ピープスの宝探し
 大火「塔」を襲う

第七章 世俗化した近代の「塔」
 十八世紀のロンドン
 観光名所となる「塔」
 宝物館の王冠
 宝物館の盗難
 ライオン・タワーとチャールズ・ラム
 一八四一年の「塔」の大火
 ウォータールー・バラックの完成
 発掘された遺骸
 ヘスの「塔」幽閉

エピローグ――漱石と『倫敦塔』
 ロンドンに来た漱石
 「夢の織物」としての「塔」
 チャペルを見落とした漱石
 「塔」とシェイクスピア
 ドラローシュの絵
 エインズワースと漱石

あとがき




◆本書より◆


「プロローグ」より:

「いつ頃だったか記憶は定かでないが、だいぶ以前「塔」の見物に訪れた時、このビーチャム・タワーの窓のところで、不思議な光景を見たことがある。
 ちょうど三時頃だったと思う。派手な制服のヨーマンが、その塔の窓に梯子をかけ、窓辺に水飲み皿と、肉皿を置いて立ち去った。その衛士が立ち去るのを待っていたかのように、数羽の烏が窓の下に集まってきた。まず最初の烏が、トントンと梯子を渡り、窓辺の皿の水を飲み、肉片を食べると飛び去った。すると下で待っていた二番手の烏が、同じように梯子をつたって、窓の下に行き、同じように食べた。三番目も四番目も、同じ仕草で窓の食事を平らげた。
 「塔」の中には、いまも数羽の烏が飼われている。それはいつ頃はじまったか正確にはわからないが、昔から「烏がいなくなったら、塔は滅ぶ」といわれ、羽根を切った烏が飼われ、彼らは遠くに飛べないかわり、終身、毎日、好物の馬肉があたえられている。戦時中、「塔」内では食糧事情が悪化し、空地が菜園と化した時でも、烏の食事は欠かさずあたえられたという。」



「第五章」より:

「一六一〇年サー・ローリーは金鉱を求めて、南米はオリノコ河流域の探険隊に加わることを願い出た。その際彼は「もし金銀が見つからない場合は、その場で首をはねてもらいたい」との誓約書を入れた。
 一六一七年になって、その探検が行なわれたが、結果は失敗に終わる。(中略)一六一八年母国に帰るや否や、彼は「塔」のビーチャム・タワーにふたたび幽閉の身となった。」
「処刑は間もなく「塔」ではなく、ウェストミンスターのパレス・ヤードで行なわれた。死に臨んで彼は、少しも動揺しなかった。司祭の祈りの後、卿は首切役人に「その斧はよく切れるか」と訊ね、自分の手で斧の刃に触ってみて「これはよく切れるね、すべての病を直してくれる医者だ」といって微笑んだ。
 目隠しを拒み、処刑台に首を乗せるともう一度腕を伸ばした。首切役人がちょっとたじろいだのを見て、彼は「何が恐ろしいのか、やってくれ、さあ早く」と促した。斧は二度振り下ろされ、卿の首は落ちた。」











































































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
 
うまれたときからひとでなし
なぜならわたしはねこだから
 
◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

Koro-pok-Guru
Away with the Fairies

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

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