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G・K・チェスタトン 『新ナポレオン奇譚』 高橋康也・成田久美子 訳 (ちくま文庫)

「「いい人だねえ」と彼は言った。「変りもんだが、ああいう人にかぎっていい人なんだ。まともな連中よりずっといい人なんだ」」
(G・K・チェスタトン 『新ナポレオン奇譚』 より)


G・K・チェスタトン 
『新ナポレオン奇譚』 
高橋康也・成田久美子 訳
 
ちくま文庫 ち-12-1 

筑摩書房
2010年7月10日 第1刷発行
327p 付記1p
文庫判 並装 カバー
定価800円+税
装丁・装画: 北見隆


「この作品は一九七八年十一月、春秋社より刊行された「G・K・チェスタトン著作集 10 新ナポレオン奇譚」を改題したものです。」



地図(「ノッティング・ヒル周辺図」)1葉。


チェスタトン 新ナポレオン奇譚


カバー裏文:

「1904年に発表されたチェスタトンのデビュー長編小説、初の文庫化。1984年、ロンドン。人々は民主主義を捨て、籤引きで専制君主を選ぶようになっていた――選ばれた国王は「古き中世都市の誇りを復活」させるべく、市ごとに城壁を築き、衛兵を配備。国王の思いつきに人々は嫌々ながら従う。だが、誇りを胸に故郷の土地買収に武力で抵抗する男が現れ、ロンドンは戦場と化す……幻想的なユーモアの中に人間の本質をえぐり出す傑作。」


目次:

ヒレア・ベロックに

第一の書
 一、予言術に関する序言
 二、緑色の服の男
 三、ユーモアの丘
第二の書
 一、自由市憲章
 二、市長会議
 三、狂人登場
第三の書
 一、アダム・ウェインの精神状態
 二、類いまれなるターンブル氏
 三、バック氏の実験
第四の書
 一、灯火の戦い
 二、コート・ジャーナル紙特派員
 三、強大なるサウス・ケンジントン軍
第五の書
 一、ノッティング・ヒル帝国
 二、最後の戦い
 三、ふたつの声

解題 (ピーター・ミルワード/『G・K・チェスタトン著作集 10』春秋社、1978年より再録)

訳者あとがき (成田久美子)
解説 ロンドン内戦 (佐藤亜紀)




◆本書より◆


「第一の書」より:

「この本の読者の大半が属している人類という種族は、そもそもの始まりから、子供っぽい遊戯に耽ってきたものである。なかにごく少数、子供っぽさを卒業するものがいて、その連中に言わせれば、はなはだ慨歎すべきことであるが、おそらく人類は世の終りまでそういう遊びに耽りつづけていくことであろう。」

「「僕にわかるようなやつではない」とパーカーは答えた。「しかし、あえて言うなら、色好みならぬノンセンス好みとでもいうか、つまり芸術的な冗談とか道化ぶりとかに目がない男なんだ。そのノンセンスぶりが昂じて、とうとう自分自身、頭が少々おかしくなり、正気と狂気の区別がわからなくなっちまった、というところじゃないか。いや、これはまじめな話だ。いわば彼は精神界をひと廻りして、東と西がひとつになり、痴愚の極致が分別とひとつになる地点を見つけたのさ。しかし、僕にはやつが何のためにそんなノンセンス・ゲームをやるのか、その心理の説明はできない」」

「名をオーベロン・クウィンというこの小男は、赤ん坊と梟(ふくろう)を合わせたような外見をしていた。丸い頭と丸い目は、自然がいたずら半分にコンパスで描いてみせたといったふうだった。(中略)見知らぬ人ばかりいる部屋に彼がはいって行くと、人びとは彼を子供と間違えて膝の上に抱き上げようとする。だが、彼が口を開くと、人びとは子供ならもう少し頭がいいだろうと思い直す。」

「「お話の途中ですが、セニョール」と大統領は口をはさんだ。「セニョールにお尋ねしたいことがあります。セニョールは、ごくふつうの状況のもとで、どんなふうに荒馬を捕まえられますかな?」
 「私は荒馬を捕まえたりなんかしません」とパーカーは威厳をもって答えた。
 「まさにそうでしょうな」と相手は言った。「(中略)あなたのおっしゃる国際主義とやらに対する不満もそこにあります。すべての国の国民が連帯するとおっしゃるとき、実は、その意味するところは、すべての国民が連帯して、あなたの国の国民のやり方を真似るべきだということなのです。もし、遊牧のベドウィン人(びと)が読み書きを知らなければ、イギリスの宣教師なり教師なりが読み書きを教えるために派遣されるにちがいありません。しかし誰もこうは言わないでしょう。「この教師は駱駝の乗り方を知らないから、ベドウィン人(びと)に金を払って教えてもらうべきだ」(中略)さきほど挙げた例にもう一度返りますが、ニカラグアには、野生の馬を生け捕りにするひとつの方法がありました。馬の前足を投げ縄で捕まえるのです。南アメリカひろしといえども、これにまさる方法はあるまいといわれているやり方です。もし、すべての才能を含み込むつもりでいらっしゃるなら、ひとつやってみてください。もしそうでないなら私の持論をここで申しあげることをお許しくださるでしょうか。ニカラグアが文明化されたとき、世界から何かが失われたのだと」
 「そりゃあ、何かはね」とパーカーは答えた。「しかしその何かとは、単なる未開人の器用さにすぎないでしょう。私が原始人と同じくらいうまく石を削ることができるかどうかわかりません。しかし、わかっていることは、文明はもっと便利な道具をつくり出すことができるということです。ですから私は文明を信じます」
 「あなたがそうおっしゃるのはもっともです」とニカラグア人は答えた。「あなたのように聡明なかたがたがこれまでたくさん文明を信じてきましたからね。多くのバビロニアの賢者が、多くのエジプトの賢者が、そしてローマ末期の多くの賢者が文明を信じてきました。文明の滅亡の前例をいくつも持つこの世界で、あなたの文明だけには何か特別不滅のものでもあるとおっしゃるのですか?」」
「「あなたのお国のまことに結構な行政制度について、具体的に反対するつもりはありません。私はただ、個人的には賛成しかねるというだけです。つまり私としては、あなたがたの制度に参加するつもりがあるかどうか尋ねられましたなら、お返事する前に、その代りにどぶの中のひきがえるになることを選ぶ権利があるのかどうか、お教え願いたい。まあ、そういうことです。個人の魂が何を選ぶか、こればかりは議論してもはじまりますまい」」




























































































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
 
うまれたときからひとでなし
なぜならわたしはねこだから
 
◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

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Away with the Fairies

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

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