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『完訳 ペロー童話集』 新倉朗子 訳 (岩波文庫)

「目がさめるときがくるまで、このまま静かに眠らせておくよう王は命じました。」
(ペロー 「眠れる森の美女」 より)


『完訳 
ペロー童話集』 
新倉朗子 訳
 
岩波文庫 赤/32-513-1 

岩波書店 
1982年7月16日 第1刷発行
1984年5月16日 第3刷発行
282p
文庫判 並装 カバー
定価400円



Charles Perrault: Contes de Perrault, 1695, 1697
挿絵図版(扉絵)11点、解説中に図版(「1697年版の口絵」)1点。


ペロー童話集 01


カバー文:

「ペロー(1628―1703)の『童話集』は、民間伝承に材を得た物語集のうちでも最も古いものといってよい。よく知られた「眠れる森の美女」「赤ずきんちゃん」「青ひげ」「長靴をはいた猫」「サンドリヨン(シンデレラ)」を始め、韻文で書かれた「ろばの皮」など全作品を収め、口承文芸研究の視点から注・解説を付した。」


目次:

韻文による物語
 序文
 グリゼリディス
  **嬢へ
  グリゼリディス
  ***氏へ 『グリゼリディス』をお送りするのにそえて
 ろばの皮
 愚かな願いごと

過ぎし昔の物語ならびに教訓
 内親王様(マドモアゼル)へ
 眠れる森の美女
 赤ずきんちゃん
 青ひげ
 ねこ先生または長靴をはいた猫
 仙女たち
 サンドリヨンまたは小さなガラスの靴
 まき毛のリケ
 親指小僧


解説



ペロー童話集 02



◆本書より◆


「グリゼリディス」より:

「大公はといえば、偶然か、運命の定めか、
脇道に入りこみ、
狩りのお供はだれひとりついてきません。
かければかけるほど一行と離れ、
とうとう道に迷って、
犬の吠え声も角笛の音も聞こえなくなりました。

このふしぎな出来事によって大公が導かれた場所は、
水の流れこそ明るいが木々の緑はうっそうと暗く、
目に見えぬ恐怖で心がしめつけられるところでした。
素朴で人の手の加わらぬ自然が
まことに美しく純粋な姿を見せていたため、
道に迷ったことを大公は何度も喜びました。

広大な森と水の流れと野原に
おのずとこころよい夢見心地に浸っていた大公は、
突然思いがけぬものを目にしてはっと心を打たれます。
この世でまだ見たこともない、
感じのいい、優しい、
好ましい相手でした。

それは若い羊飼いの娘で、
小川のほとりで糸を紡いでいました。」



「ろばの皮」より:

「そこで花嫁探しがはじまり
血統にはお構いなく、指輪の合う女性が
このような高い位につくことになるのです。
ひとりだっていやしません、
指を見せに来る仕度をしないものは、
自分の権利を譲ろうとするようなものは。
王子との結婚を望むには、ほっそりした
指の持主でなければならぬとの噂(うわさ)が流れ、
いかさま医師どもは歓心を買うために、
指を細くする秘訣を知っているといいだしました。
ひとりの娘は妙な気紛れをつきつめたあまり
まるで蕪(かぶ)のように指を掻き削り、
別の娘は指の先を切り落としてしまいます。
またある娘は押しつければ指が細くなると思い、
他の娘ときたら、指をなにかの液につけ、
細くするつもりが皮をむいてしまいました。
要するに指輪にぴったりはまる指にするため
ご婦人がたが試みなかった処法は、
一つもないという有様です。」



「眠れる森の美女」より:

「王は騒ぎをききつけてのぼってきていましたが、急に仙女の予言を思い出し、仙女がそういっていた以上、起きるべきことが起きたに違いないと考え、王女を宮殿の中のいちばん美しい部屋に運ばせ、金銀の縫いとりのあるベッドに寝かせました。王女はとても美しく、まるで天使のようでした。気を失っていても、生き生きとした肌の色はもとのまま、頬はうす紅色で、唇は珊瑚(さんご)のようです。目を閉じているだけで、静かに息をするのがきこえますから、死んだのでないことは、はっきりしています。
 目がさめるときがくるまで、このまま静かに眠らせておくよう王は命じました。」



「赤ずきんちゃん」より:

「狼は近道を全速力でかけていきましたが、女の子は遠いほうの道を、はじばみの実を拾ったり、蝶々(ちょうちょう)を追いかけたり、小さな花をみつけて花束をつくったりして、遊びながら行きました。」


「青ひげ」より:

「はじめは窓がしまっていたので、何も見えません。が、しばらくすると、床一面が凝固した血でおおわれ、数人の死んだ女の体が壁際にくくりつけられているのが、その血の海に映って見えてきました。」


「ねこ先生」より:

「「陛下、これなる野兎は、カラバ侯爵殿(これは猫が気に入って自分の主人につけた名前です)から陛下に献上するようにと、言いつかったものでございます」」


「サンドリヨン」より:

「仕事をすませると、娘はいつも炉の片隅に身を寄せ、灰の上に坐ったので、この家では皆から灰尻っ子(キュサンドロン)と呼ばれましたが、下の姉は上の姉ほど無作法ではないので、灰っ子(サンドリヨン)と呼んでいました。」


「まき毛のリケ」より:

「むかし、ある国の王妃が男の子を生みましたが、これがあまりに醜(みにく)く、あまりに不格好だったので、果して人間の姿をしているのかしらと、長いことみんながいぶかったほどです。」
「いい忘れていましたが、この子は生まれた時から、頭にとさかのような小さなまき毛の房があったので、まき毛のリケと名付けられました。リケというのが家の苗字(みょうじ)だったからです。」

「妹は目に見えて醜くなり、そして、姉は一日ごとに愚かさをましていきました。きかれたことに全く答えられないか、あるいは馬鹿げたことを口にするのです。おまけにひどく無器用で、暖炉のへりに磁器を四つならべるときは、かならずそのうちの一つを割ってしまい、コップで水を飲むときは、かならず半分は服にこぼしてしまうほどでした。」



「親指小僧」より:

「そのうえ樵夫婦を悲しませたのは、いちばん下の子がとても体が弱くて、ひとことも口をきかないことでした。この子の心優しさのしるしを、頭の悪さと思い違いしたのです。この子はとても小さくて、生まれた時はやっと親指ぐらいの大きさしかなかったので、みんなから親指小僧と呼ばれるようになりました。
 このかわいそうな子は家じゅうのいじめられ役で、悪いことはいつもこの子のせいにされました。ところが、親指小僧は兄弟じゅうで一番賢く、一番考え深かったのですし、口はほとんどきかなくても、たくさんのことを耳に入れていたのです。」

「人食い鬼には娘が七人いましたが、まだほんの子どもでした。父親のように生肉を食べていたので、人食い娘たちはみなとてもいい顔つやをしていました。(中略)まだひどく邪悪というところまではいってませんが、先は大いに思いやられます。もうすでに小さな子どもたちに噛(か)みついて、生血を吸っていたからです。」



「解説」(新倉朗子)より:

「先に、「赤ずきんちゃん」についてドラリュの検討した結果を紹介したが、検討に先立ち、ドラリュはフランスの伝承に残る三十五話を三群に分ける。すなわち、ペローの話が再び口承に入った二話と、印刷された本から完全に独立した形で伝わる二十話と、両者の混合である残りの十三話である。そして、第二群および第三群の話が、ほとんどロワール河からアルプス北部へかけて、西から東へ引いた線を中心にかたまっていることを確認する。ペローが伝承の話を書き留めたとして、それらの話は現代になって収集される時まで常に語られ続けていたのであるから、それらの話の中からできるだけ原初的(プリミチフ)なモティーフを識別する作業をする。すると、狼がおばあさんの血と肉をそれぞれ壜(びん)や櫃(ひつ)に入れておいて赤ずきんに食べさせようとする、その時猫や鳥が口をきいて何を食べようとしているのかを教える、というモティーフが、ペローの話から独立している第二群に、細部のちがいはあっても共通して存在することがわかる。」










































































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
 
うまれたときからひとでなし
なぜならわたしはねこだから
 
◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

Koro-pok-Guru
Away with the Fairies

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

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