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C・G・ユング/R・ヴィルヘルム 『黄金の華の秘密』 湯浅泰雄・定方昭夫 訳

「無何有郷は是れ真宅なり」
「どこにもない場所こそ、真の家なのである」

(「太乙金華宗旨」 より)


C・G・ユング
R・ヴィルヘルム 
『黄金の華の秘密』 
湯浅泰雄・定方昭夫 訳



人文書院
1980年3月31日 初版第1刷発行
1986年9月10日 初版第6刷発行
336p 口絵(モノクロ)1葉
四六判 丸背紙装上製本 カバー
定価1,600円



本書「訳者解説」より:

「本書は、深層心理学者C・G・ユングと中国学者リヒアルト・ヴィルヘルムの共著として広く世に知られるに至った『黄金の華の秘密――中国の生命の書――』Das Geheimnis der goldenen Blüte, ein chinesische Lebensbuch. の邦訳である。」
「書名の「黄金の華の秘密」は「太乙金華宗旨」の訳語である。」
「この書は、道教の伝統的用語でいえば、「内丹」の書物である。道教の実践的側面を示すのはいわゆる「錬丹」(丹すなわち薬をねってつくる術)であるが、これを大別すれば外丹と内丹に分れる。外丹は外的手段による錬丹を意味するから、針灸や和漢薬を含んだ漢方医学の源流とみてよいであろう。(中略)これに対比される内丹は瞑想法のことである。」
「太乙金華宗旨および慧命経の訳は、本書が世に出た経緯を考えて、最初はドイツ語版からの現代語訳を主体とするつもりであったが、(中略)ヨーロッパ語からの重訳ではわれわれ日本人にはかえってわかりにくくなるように感じられた。それに、ヴィルヘルムの訳が全訳ではないことや、時には明らかに原文を誤読している箇所なども見出された。(中略)そこで、本文の部分は(中略)漢文をもとにして訳することにし、訓読文と現代語訳を並べ、後者についてはヴィルヘルムの訳語や訳し方をなるべくとり入れることにした。」
「訳文は最初に定方が下訳をつくり、下訳が半分以上完成した段階で、湯浅が訳文を修正するとともに未了の部分を訳出し、二人で討議して最終稿を決定した。」




ユング 黄金の華の秘密 01



目次:

第二版のための序文 (C・G・ユング)
第五版のための序文 (ザロメ・ヴィルヘルム)
リヒアルト・ヴィルヘルムを記念して (C・G・ユング)
ヨーロッパの読者のための注解 (C・G・ユング)
 序論
 基礎概念
 道の諸現象
 対象からの意識の離脱
 完成
 結論
ヨーロッパのマンダラの例 (C・G・ユング)
太乙金華宗旨の由来と内容 (リヒアルト・ヴィルヘルム)
 一 本書の由来
 二 本書の心理学的・宇宙論的前提

太乙金華宗旨
 第一章 天心
 第二章 元神・識神
 第三章 回光守中
 第四章 回光調息
 第五章 回光差謬
 第六章 回光徴験
 第七章 回光活法
 第八章 逍遙訣
 第九章 百日立基
 第十章 性光識光
 第十一章 坎離交媾
 第十二章 周天
 第十三章 勧世歌

慧命経
 一 漏尽
 二 六候
 三 任脈と督脈
 四 道胎
 五 出胎
 六 化身
 七 面壁
 八 虚空粉粋

訳者解説 (湯浅泰雄)
 1 ユングとヴィルヘルムの出会い
 2 太乙金華宗旨と呂祖師
 3 思想的内容と心理学的視点
 4 本書の内容と邦訳について




◆本書より◆


「ヨーロッパの読者のための注解」(ユング)より:

「ところでこの人びとは、みずからの解放をもたらす進歩を達成するために、何をしたのであろうか。私が見てとることのできた限りでは、彼らは何もしなかったのである(いわゆる「無為」Wu Wei)。ただ、物事が生じてくるままにしておいたのであった。(中略)物事を生じるがままにさせること、行為することなく行為する(無為にして為す)こと、つまりマイスター・エックハルトのいう自己放下は、私にとって道に至る門を開くことのできる鍵になったのである。人は心の中において物事が生ずるままにさせておくことができるにちがいない(引用者注: 「人は~」以下に傍点)。このことはわれわれにとって真の技術なのであるが、多くの人びとはそのことを知らない。彼らの場合、意識は常に助力したり、矯正したり、否定したりして、介入しようとし、どんな場合にも、魂の過程が単純に生成してくるのをそのままそっとしておくことができないからである。」


「太乙金華宗旨」より:

「仏教と道教の祖師たちはいずれも、弟子に対して、自分の鼻のあたまを見ることを教えている。しかしこれは、鼻の尖端に思念を固定させるという意味ではない。」
「鼻は、ここではただ、われわれの視線の目標を定めるだけのものである。瞑想を始めるに当って、(中略)眼を開きすぎるとそれをコントロールできなくなり、視線は外に向い、それによって心は散乱しやすくなる。眼を閉じすぎると、やはりそれをコントロールできなくなって、視線は内側に向い、夢みるようなまどろみの状態に沈みこんでしまう。簾を半分下げるように、瞼を半ば閉じる場合には、ちょうどよい具合に鼻の尖端を見るようになる。そのため、鼻を眼の向かう目標にするのである。」

「初歩の人が〔瞑想時に〕おちいり易い症状は二つある。それは昏沈〔内へこもって怠惰、眠気、憂鬱に沈むこと〕と散乱〔外からの刺戟にとらわれて、心がたえず動くこと〕の二つである。こういう状態におちいるのをしりぞけるにはこつがある。それは自分の呼吸にとらわれないことである。」
「われわれの思念はたえず動き廻っているものであって、一呼吸の間にも瞬間的な妄念がともなっている。(中略)われわれは毎日何万回も呼吸しており、したがって何万もの妄念をいだいているのである。」

「静けさの中で、とぎれることもなくつながった感じで、心の動きと気分が昂揚して、酔ったような、湯を浴びたような、喜びあふれる感じになることがある。これは、陽の気が〔春の大地のように〕全身をめぐって調和しているしるしである。このとき、「黄金の華はたちまち蕾(つぼみ)が芽生える」のである。」
「やがて一切の音が消えて静寂になり、白く輝く月が中天にかかり、この大地は〔すみ切った空の月とともに〕明るい光にみちみちた世界のように感じられてくる。そのときは、心の本体がはっきりと明らかになってきたしるしである。これは「黄金の華がたちまちひらく」という体験である。」
「やがて(中略)全身が力にみちあふれたようになり、冷たい風や霜にあたっても平気だというような感じになる。他の人たちなら何の興味も覚えないような事柄に出会っても、自分にはますます精神力が充実してくるのが感じられる。(中略)この世の腐り果てたようなものであっても、真の気のエネルギーをそれに吹きかけて、ただちに生き生きとよみがえらせることができる。赤い血は甘美な乳に変り、七尺の肉のかたまりである自分の身体は、ほんものの黄金の宝になってしまう。このような体験が、「黄金の華の大いなる結晶」のしるしなのである。」

「玉清は逍遙訣を留め下せり
四字は神を凝らせ、炁(き)穴に入る
六月、俄(にはか)に白雪の飛ぶを看(み)る。
三更に又、日輪の赫(かが)やくを見る
水中に吹起し、巽(そん)風を藉(か)る
天上に遊帰し、坤(こん)徳を食(くら)ふ
更に一句有り、玄中の玄
無何有郷は是れ真宅なり

玉清〔天心〕は、たましいの遊ぶ秘訣をこの世に留めおかれた
四字〔無為而為〕の教えとは、精神のはたらきを結晶させて、気の空間〔気の身体の穴〕に入ることである
暑い六月に、突然、白い雪が舞うのを見る
深夜〔午前零時〕に、また太陽の輪が明るく輝くのを見る
水中に吹く風は、初夏の微風によって起り
たましいは天上に遊び、母なる大地の力を食べる
そして、深い秘密の中でも最も深い真理を示す一句がある
どこにもない場所こそ、真の家なのである」

「全身の気をめぐらせるとき、一切の区別は消えて、極大は極小でもあることが体験される。が、ともかく、一たび小周天の瞑想をおこなえば、天地のすべての存在はそれとともに回転するのである〔大周天と小周天、大宇宙と小宇宙の一致〕。この体験は、一寸四方の場所〔両眼の間〕で生起する。したがってこの場所は、最も大いなる場所でもあるのである。」
「黄金の仙薬を育てる訓練期間の問題は、要するに、自然な心で瞑想ができるか、不自然な心におちいるかの区別にある。天地はあるがままに天地として存在し、すべての存在はあるがままにすべての存在としてある。これを無理に自己の存在と一体にしようとしても、結局のところ一体にすることはできない。」



「慧命経」より:

「生れることもなく、滅びゆくこともない。
過ぎ去ることもなく、これから来ることもない。
一つの光の輝きが精神の世界をつつむ。
人は互いに忘れる、静かに、そして純粋に。力強く、そして虚(むな)しく。」

「空は天上の心の輝きに照らし出され、
海の水はなめらかに、その面に月を映す。
雲は青空へ消え、
山々は明るく輝く。
意識は観照の中に溶け去り、
月輪はひとり安らっている。」




ユング 黄金の華の秘密 02



ユング 黄金の華の秘密 03

























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◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

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難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

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