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ダニエル・ベルナール 『狼と人間 ― ヨーロッパ文化の深層』 高橋正男 訳

「人間に飼われているオオカミはいつも森の夢を見る」


ダニエル・ベルナール 
『狼と人間
― ヨーロッパ文化の深層』 
高橋正男 訳


平凡社
1991年9月10日 初版第1刷発行
286p 口絵4p(うちカラー2p)
A5判 丸背紙装上製本 カバー
定価3,600円(本体3,495円)



Daniel Bernard: L'homme et LE LOUP, 1981
本文中図版(モノクロ)多数。
本書はヤフオクに出品されていたのを落札しておいたのが届いたのでよんでみました。送料込1,754円でした。


ベルナール 狼と人間 01


帯文:

「人間と狼のあいだに生まれた
幻想と事象の歴史
森の住人………家畜をめぐる攻防………暗闇の番犬
力と悪と気高さの象徴……悪魔の化身……狼人間
………神話、民話、伝説………迷信と信心………」



帯背:

「幻想と事象の断片を
歴史に跡づける」



帯裏:

「民衆は半分は人間であるこれらの怪物の存在を、鉄のように固く信じていた。それらをいたるところで目撃し、そのうちの幾百かを殺した。それは強い腐植土と木の根の匂いを発する森の精霊が、村の教会の純粋さに激しい攻撃をしかけていた時代のことだった。
本書序文より」



目次:

序 (アンリ・グーゴー)

オオカミの生態
 オオカミの形態
 組織されたハンター
 オオカミはカリブーの健康を守る

オオカミの歴史
 神話とイメージ
 数世紀にわたる惨害
 ジェヴォーダンのベート
 オオカミの終わり
 狂犬病のオオカミ

オオカミを殺せ
 オオカミとヒツジ飼い
 オオカミ狩り猟師
 オオカミ退治の賞金
 狩猟と騎馬・猟犬を使う狩猟
 オオカミの狩り出し
 オオカミ狩猟隊
 罠と毒

人間の心の中に生きるオオカミ
 恐れるものを侮る
 伝説と迷信と信心
 オオカミと聖人
 オオカミ使い
 オオカミ人間
 オオカミの民話
 「オオカミの話をすると……」

あとがき (高橋正男)

書誌
図版出典一覧



ベルナール 狼と人間 02



◆本書より◆


「序文」(アンリ・グーゴー)より:

「「人間に飼われているオオカミはいつも森の夢を見る」と諺にある。」
「オオカミは生まれたそのときから呪われている。」
「彼らは、勝ち誇るキリスト教の専制に対して反乱を起こした、暗い命が蠢く、田園の、異教のディオニューソスの軍隊であった。」



「オオカミの生態」より:

「ところでオオカミはイヌの祖先なのだろうか。それを肯定することはひじょうに難しい。というのは、オオカミはたまたま馴れることがあって、ドイツシェパードの創造に貢献したとしても、家畜化されることはぜったいにありえなかったからである。」

「もともとは木に覆われていない平原に住んでいたオオカミは、人間との仮借ない闘いによってしだいに狭い地域に押しやられてしまった。現在ではさらに追いやられる危険の少ない遠隔の地域に閉じ籠もってしまった。」

「このように、数千年の間、山野で野垂れ死にした人、犯人がわからない犯罪、想像するにも恐ろしい事件があると、人間はオオカミの責任にした。(中略)しかもこのようにして作られたオオカミへの恐怖は、人々の意識の中に維持されていった。ギリシアの詭弁家のゼノビウスは二世紀にすでに「人間はオオカミを罪があろうがなかろうが弾劾する」と述べている。」



「オオカミの歴史」より:

「古代エジプトでは、オオカミはリュコポリスという町をもっていて、崇拝と信仰の対象になっていた。」

「一四〇五年から四二年にかけて編纂された『パリ一市民の日記』はオオカミの存在を示す最初の証言の一つである。」
「一四二一年の春はひじょうに寒かった。パリ市民は、すでに百年戦争を経験しており、アルマニャック軍とブールギニォン軍との戦闘で、飢えに苦しみ、たくさんの人々が死んだ。その夏の初め、オオカミどもはひじょうに飢えていたので、町でも田舎でも大急ぎで死衣に包んで埋葬された死体を掘り出して食った。夜になると、オオカミは町の中にまで侵入し街路を走り回ったり、さらに川を泳いで渡ったりした。「オオカミどもはセーヌ川をしばしば渡った」と書いてある。オオカミは死体だけでは満足せず、家の扉に吊るしたハムを掠めとり、はては人間、特に女子供を襲った。
 一四二三年の七月の終わりに、オオカミどもはパリのなかに入って来た。数頭は殺されて、街なかを逆さ吊りにされて運ばれた。」

「一七六四年の夏の初め、ヴィヴァレー地方とジェヴォーダン地方の州境付近の、家畜の群れを守る子供たちは一頭の凶暴な人食いの「野獣(ベート)」におびえていた。この野獣は特にランゴーニュ一帯を荒らし回っていたが、まもなくジェヴォーダンのすべての山々に移ってきた。村人が話すことと言えば、「ベート」または「人食いベート」のことばかりだった。」
「ベートの描写によるとたんなるオオカミというよりは、伝説や怪奇じみた話から抜け出した、神がかった動物だった。人間の豊かな想像力によって、ジェヴォーダンのベートはやがて先祖伝来の恐怖の瞬間的な引きだし役となるだろう。(中略)ベートの事件はすべてのフランス人の関心を動員して、国家的な関心事になった最初の動物の事件であった。パリではやがて、ジェヴォーダン地方を「ベートの国」としか呼ばなくなった。」

「第二次世界大戦が勃発したとき、ドルドーニュ、アルデーシュあるいはロレーヌから最後のオオカミが退治された。この日を境に、オオカミは西ヨーロッパから姿を消した種の仲間入りをした。」



「オオカミを殺せ」より:

「ヒツジ飼いは彼らのヒツジの正確な数を明らかにしない。数を明かすとオオカミにも知られてしまうからである。「ヒツジが数えられると、オオカミはそれだけ食う」と信じられていた。そこで彼らは保護の諸聖人にしばしば助けを求めた。」


「人間の心の中に生きるオオカミ」より:

「オオカミ人間の話はヨーロッパの物語と伝説の資料の中にもっともたくさん存在する。」
「オオカミ変身妄想、肉食獣に変身するというこの妄想はいつの時代にも、またどの国にも存在していた。」
「ギリシアの歴史家ヘロドトスとローマの博物学者プリニウスはすでにオオカミ人間の話を語っている。前者は、シシリーにおいて、ネウリアン族が一年のうちの数日をオオカミに変身したことを伝えている。また後者はアントゥスという氏族の人間の中に、オオカミになった者がいつも存在していたことを語っている。」



ベルナール 狼と人間 03


「聖ブレーズ。多くの聖人がオオカミと関係があり、家畜の保護聖人としてあがめられている。
セバストの司教の聖ブレーズもそのうちの一人であった。
1.聖人はたくさんの小鳥を飼い、動物たちの傷を癒してやった(左上)。
2.聖人は子供の病気を治してやった(右上)。
3.聖人は子ブタをオオカミに食われてしまったかわいそうな女のために、
オオカミからもとのままの姿の子ブタを取り返してやった(左下)。
4.聖人は死刑執行人に鉄の櫛を何か所も刺されて殺された。
そのために、聖人は羊毛を梳く人たちの保護聖人となった(右下)。」




◆感想◆


本書は訳文がややわかりにくいです。たとえば、「赤頭巾」の異本について述べたくだりで「ペローの寓話との大きな違いは、赤頭巾はほとんどいつもオオカミと、犠牲的な食事でお祖母さんの残り物を分け合っている。」とありますが、「お祖母さんの残り物」(les restes de la grand-mère)というのは、お祖母さんが食べ残した食物のことではなくて、オオカミが食べ残したお祖母さんの死体のことであります。本書に引用されている「赤ずきんちゃん」の訳文は新倉朗子訳(岩波文庫)によるものですが、岩波文庫版『ペロー童話集』の「解説」には「狼がおばあさんの血と肉をそれぞれ壜(びん)や櫃(ひつ)に入れておいて赤ずきんに食べさせようとする、その時猫や鳥が口をきいて何を食べようとしているのかを教える、というモティーフ」についての言及があります。















































































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◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

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難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

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好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

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