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R・A・ラファティ 『つぎの岩につづく』 伊藤典夫/浅倉久志 訳 (ハヤカワ文庫)

「「海は潜在意識とよく似ている。潜在意識そのものかもしれん」」
(R・A・ラファティ 「みにくい海」 より)


R・A・ラファティ 
『つぎの岩につづく』 
伊藤典夫/浅倉久志 訳
 
ハヤカワ文庫 SF1165/ラ-1-3

早川書房
1996年10月20日 印刷
1996年10月31日 発行
413p
文庫判 並装 カバー
定価700円(本体680円)
カバー: 横山えいじ



R. A. Lafferty: Strange Doings, 1972


ラファティ つぎの岩につづく


カバー裏文:

「時間の堆積した石灰岩の台地に、年老いた煙突岩がひとつ。そこでは奇妙な絵文字の刻まれた石がつぎつぎに発見され、学者の論議を呼んでいた。絵文字はいつも「つづく」で終わり、そのとおりまた次の石が発見される。そして最後の石が見つかった時、調査隊に何が起こったのか……? 悪夢と笑いに溢れた表題作をはじめ、16篇を収録。SF界のホラ吹きおじさんラファティが語る、底抜けにおかしくて風変わりな物語の数々。」


目次:

レインバード (Rainbird) (浅倉 訳)
クロコダイルとアリゲーターよ、クレム (Camels and Dromedaries, Clem) (伊藤 訳)
つぎの岩につづく (Continued on Next Rock) (浅倉 訳)
むかしアラネアで (Once on Aranea) (伊藤 訳)
テキサス州ソドムとゴモラ (Sodom and Gomorrah, Texas) (伊藤 訳)
金の斑(ふ)入りの目をもつ男 (The Man with the Speckled Eyes) (伊藤 訳)
問答無量 (All But the Words) (伊藤 訳)
超絶の虎 (The Transcendent Tigers) (伊藤 訳)
豊穣世界 (World Abounding) (浅倉 訳)
夢 (Dream) (伊藤 訳)
ブリキ缶に乗って (Ride a Tin Can) (伊藤 訳)
アロイス (Aloys) (伊藤 訳)
完全無欠な貴橄欖石 (Entire and Perfect Chrysolite) (伊藤 訳)
太古の殻にくるまれて (Incased in Ancient Rind) (浅倉 訳)
みにくい海 (The Ugly Sea) (伊藤 訳)
断崖が笑った (Cliffs That Laughed) (伊藤 訳)

レインバードのころ (浅倉久志)
ぼくの会ったラファティ (伊藤典夫)




◆本書より◆


「つぎの岩につづく」より:

「「考古学は例外ばかりでできあがっている」とテレンスがいった。「ただ、あるまぐれ当たりのパターンにあてはまるよう、その例外を組み替えてあるだけだ。そうする以外に体系づけようがない」
 「どの科学も、例外だらけでできあがっていて、あるパターンにあてはまるように組み替えてあるんだよ」とロバート・ダービーがいった。「ところで、絵文字の謎は解けたのかい、ハワード?」」
「「早く読んで聞かせてよ、ハワード」とエシルがいった。
 「『あなたはスカンポの原にいる野豚のように自由で、アナグマのように気高い。あなたは蛇のように輝き、ハゲワシのように高く飛ぶ。あなたは落雷で燃えるメスキートの茂みの情熱。あなたはヒキガエルの落ちつき』」
 「たしかに風変わりね」とエシルがいった。「あなたのくれたラブレターだって、これほど辛辣じゃなかったわよ、テレンス」
 「いったいそれはなんだね、スタインリーサー?」とテレンスがたずねた。「なにかのカテゴリーに属するはずだ」
 「エシルのいったとおりさ。これは恋愛詩だよ。『あなたは岩の溜め池にたまった水、その水のなかに隠れたクモ。あなたは流れになかば浸かったコヨーテの死骸、そのコヨーテの砕けた眼窩からにじみでた脳が見る、罠にかかった古い夢。あなたはその砕けた眼窩にたかるしあわせなハエ』」」



「豊穣世界」より:

「リースト・ラス・ブリンドルスビー、ヘロス・プランダ、コーラ・カーウィンの三人は、逆説的な子供たちだった。くつろいだ精神集中、とんまな賢明さ、静かなヒステリー、幸福な鬱(うつ)状態、生き生きした死の願望について語るのは愚かだろう。この子供たちは、これらすべての特質と、それに劣らず矛盾した特質を備えていた。親たちや、そこに居あわせた人たちと、つねに親密な無言のコミュニケーションをはかっているが、その一方で完全なエイリアンだった。この子供たちは謎にみちていたが、自分ではまったくそれを謎と思っていなかった。自分たちの目的や活動をつねにはっきり自覚していた。自分たちが進む方向については、円周上で円弧がいだくほどの懐疑すら持っていなかった。」


「夢」より:

「「アグネス、ひどいものだったわ。体の造りがまるで袋よ。スカンク・キャベツ(和名ザゼンソウ)がいっぱい詰まった袋なの、ほんとにもう。色が茶色っぽい緑で、髪の毛は便所のモップみたい。」」
「「ママは怪物になっていたわ。イボイノシシみたいな生き物なの。」」
「「テレサ、ただの夢だったのよ。忘れなさい」」
「「アグネス、わたしたち誰もが、ギョロッと飛びでた目玉をしているのよ! それに体が臭うの! ぶくぶくにふくれて、そのあいだもきたない緑の雨がしとしといつまでも降っていて、臭いがまたウ〇〇みたい! たまんなくてよ、あなた! イボのないところを見れば、どこもかしこも毛だらけ。おまけに、しゃがれたカラスみたいな声でしゃべっていた。体には虫がぞろぞろ這っていたわ。」」

「夢が最初に出てきた夜には、この中都市ひとつをとっても、ずいぶんたくさんの人間が見たようである。午後の新聞に小さな記事がのった。ある医師のところに、それぞれ無関係の五人の患者がかけこみ、胃袋にネズミが住み、口のなかに毛が生えている夢を見たと訴えたという。これが共有夢現象の第一報となった。」

「それは一時的流行ではなかった。一時的流行と呼んだ人びとも、自身が夢を体験するにおよんで黙りこくった。自殺率は国内でも世界でも高まった。いまやこれは国際的な現象だった。《緑の雨》という耳ざわりな流行歌がどこのジュークボックスからも流れ、《イボイノシシの歌》と並んだ。人は自分を憎悪し、他人を忌み嫌った。女たちは化けものを産むのではないかと恐れた。この現象にかこつけていままでになかった倒錯行為が現われ、胃袋ネズミをシンボルにかかげ、乱交にふける団体がいくつか生まれた。」
「このおぞましい夢を、毎夜、夜っぴて見るとなれば、笑いごとではない。要するに、問題はそれに尽きた。誰もかれもが毎夜、夜っぴてその夢を見ているのだ。」
「そんなある夜、ひとりの気の弱い女性が、猥夢のなかで声を聞いた。あの胸くそ悪いしゃがれたイボイノシシ声である。「おまえは夢を見ているのではないぞ」と声はいった。「これは現実の世界だ。だが目がさめたとき、おまえは夢のなかにはいるのだ。そちらののっぺり顔の世界は世界なんぞではない。そちらはただの夢。これが現実世界だ」彼女は吠え叫びながら目覚めた。」
「吠え叫んで目をさましたのは、彼女だけではなかった。その数は数百人から、数千、やがては数百万になった。声はすべての人びとに語りかけ、ひとつの疑問を生んだ。どちらが現実世界なのか?」
「『あり得ることだ』は、新聞の第一面をでかでかと飾った論評の題名で、筆者は先ほどのグレートハウス教授である。緑の雨がやむことなく降りしきる世界が現実だというのはあり得ることだ。そう教授は書いていた。イボイノシシが現実であり、人間が夢だというのはあり得ることだ。胃袋のなかにネズミがいるのがふつうで、ほかの消化方法が異端だというのはあり得ることだ。」



「みにくい海」より:

「「海はみにくい」と苦虫ジョンはいった。「おかしなことに、それに気づいたのはわしだけらしい。海をえがいた文章はごまんとあるが、そう書いているやつはひとりもおらん。」」
「「あれはひどい。汚水溜めよりも不潔だ。ところが汚水溜めにはつかろうとしないやつでも、海には喜んでつかる。あの臭いは、ふたのない下水の臭いだ。ところが下水を旅する者はいなくても、海にはみんな出ていく。それに、しまりがない。この世であんなにしまりのないものも、おそらくないだろう。」」
「「海は潜在意識とよく似ている。潜在意識そのものかもしれん」」






















































































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ひとでなしの猫

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うまれたときからひとでなし
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◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

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Away with the Fairies

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

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